シルクロードの失われた都を歩く:唐詩人になれる新疆ベイティン遺跡の旅 video poster
シルクロードの失われた都ベイティン。その古代遺跡で、唐代の詩人の目を通して歴史をたどる新しい体験型ツアーが注目を集めています。2025年現在、新疆ウイグル自治区の昌吉回族自治州ジムサル県にあるベイティン市遺跡国家考古遺跡公園では、ツアーガイドのLiu Xiaoさんが伝説的な詩人Cen Shenになりきり、かつての城塞都市の興亡を物語として来訪者に届けています。
失われた都ベイティンが語りかけるもの
ベイティンは、唐代の時期にシルクロード沿いの重要な拠点として栄え、権力や文化、そして衝突の歴史が交差した城塞都市とされています。現在は城壁や建物跡が残るのみですが、その沈黙の石々は、かつてのにぎわいや緊張を今も静かに伝えています。
発掘された遺構や地形からは、軍事拠点としての役割だけでなく、交易や文化交流の舞台でもあったことがにじみ出ています。途絶えた街路や崩れかけた門は、シルクロードを行き交った人々の足音を、かすかな響きとして私たちに想像させてくれます。
Liu XiaoさんがCen Shenに「変身」するツアー
このベイティン市遺跡で特徴的なのが、ツアーガイドのLiu Xiaoさんが唐代の詩人Cen Shenになりきる演出です。Cen Shenは715年から770年ごろに生きたとされる詩人で、辺境の風景や兵士たちの感情をうたった作品で知られています。
Liuさんは衣装や話し方を工夫しながら、自らをCen Shenとして来訪者に語りかけます。荒野にそびえる城壁を前に、唐代の兵士や商人たちの姿、遠い都を見つめる人びとの不安と誇りを、詩人の視点から描き出していきます。参加者は単なるガイド解説を聞くのではなく、一人の詩人の人生と目線を通して、ベイティンの過去に入り込んでいくのです。
詩人の目で見るシルクロードの歴史
年号や出来事を時系列で追う歴史観光とは異なり、このツアーの軸にあるのは「物語」と「感情」です。Cen ShenになりきったLiuさんの語りは、次のような問いを私たちに投げかけます。
- この城塞都市の運命は、周囲の帝国の盛衰とどのように結びついていたのか。
- この地を守った人びとは、日々どのような恐れや希望を抱いていたのか。
- シルクロードの交易と文化交流は、城の内側の暮らしをどう変えていったのか。
こうした視点に導かれることで、ベイティンは単なる「遺跡」から、人びとの選択や葛藤が折り重なった「物語の舞台」へと姿を変えます。砂や風に覆われた城壁の一つ一つが、遠い時代の誰かの息づかいにつながっているように感じられるのです。
2025年の私たちにとってのベイティン体験の意味
スマートフォンで短い動画や記事を日々消費する私たちにとって、歴史はしばしば「テストに出る知識」か「観光地の背景説明」として扱われがちです。そんな中で、ベイティン市遺跡のように、唐代の詩人の視点に入り込みながらシルクロードの歴史を体感する試みは、歴史との距離を縮める一つのヒントになっています。
国際ニュースとして見ると、新疆という場所やシルクロードという言葉は、政治や経済の文脈で語られることが少なくありません。しかし、このツアーが焦点を当てているのは、あくまで歴史の現場にいた人びとの生活や感情です。そこには、国や地域を問わず共感できる普遍的なテーマが見えてきます。
- 見知らぬ土地を守るために派遣された人びとの不安と責任感
- 遠く離れた家族や故郷を思う気持ち
- 異なる文化と出会うことで生まれる戸惑いと好奇心
こうした要素が、唐代の詩と現代の私たちの心を静かにつないでいきます。
城壁の下に眠る「まだ語られていない物語」
ベイティンの古い城壁や土塁の下には、まだ発見されていない構造物や、人びとの日常の痕跡が眠っているかもしれません。ユーラシア大陸の東西を結ぶ中継点として、この地が帝国の命運にどう影響したのか。その答えの一部は、今も砂の下に隠れています。
同時に、完全な答えが見つからないからこそ、私たちは想像力を働かせることができます。Cen Shenになりきるツアーのスタイルは、参加者それぞれが自分なりの「ベイティンの物語」を描き直すことを促しているとも言えるでしょう。
考えてみたい三つのポイント
ベイティン市遺跡での体験を入り口に、次のような問いを自分自身に投げかけてみると、ニュースの読み方も少し変わってくるかもしれません。
- もし自分がCen Shenのように辺境に赴いたとしたら、何を詩に書き留めたいと思うか。
- シルクロードの都市の興亡は、今日の都市や地域の盛衰とどこが似ていて、どこが違うのか。
- 歴史を学ぶとき、年号や出来事だけでなく、人びとの感情や物語を一緒に思い描くにはどうすればよいか。
シルクロードの砂の下には、まだ知られていない物語が幾層にも重なっているはずです。ベイティン市遺跡での「唐詩人の旅」は、その一片をそっとすくい上げる試みだと言えるでしょう。2025年の今を生きる私たちが遠い過去に耳を澄ませるとき、ニュースで見る世界の姿も、少し違って見えてくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








