唐代建築が日本にもたらしたもの 大阪・関西万博バーチャル展と専門家の視点
2025年7月5日、大阪で開かれた国際博覧会 Expo 2025(大阪・関西万博)の会場で、唐代建築をテーマにしたCGTN日本語版のバーチャル展が公開されました。これにあわせて日本の建築と文化遺産の専門家2人が、唐代建築の美学と日本への影響について語っています。
大阪で公開された唐代建築バーチャル展
公開されたのは、CGTNが制作したマルチメディアで没入型、かつインタラクティブなバーチャル展 Tang Architecture: Building Timeless Glory の日本語版です。唐代(618〜907年)の建築を軸に、その構造と意匠をわかりやすく伝える内容となっています。
展示は次の三つのセクションで構成されています。
- Building Design(建築デザイン)
- Palace Complex(宮殿コンプレックス)
- Urban Planning(都市計画)
有名な Great East Hall at Foguang Temple、Daming Palace、Chang'an City の都市計画をインタラクティブなバーチャルツアーでたどることで、利用者が唐代建築の特徴を立体的に学べるよう設計されています。
登場した二人の専門家
この日本語版の公開を記念して、CGTNは東京で日本の専門家二人による対談を行いました。
一人目は、日本建築家協会のフェローであり、Architects Regional Council of Asia の元会長として国際的に活動してきた George Kunihiro 教授です。建築実務と教育の両面で長く経験を積んできた立場から、唐代建築を語りました。
もう一人は、天津大学に設置された International Research Center for Chinese Cultural Heritage の所長であり、同大学のシンクタンクを率いる Nobuo Aoki 教授です。中国政府友誼賞の受賞者でもあり、建築遺産の保存と継承を長年研究してきました。
唐代建築の美学とは何か
Kunihiro 教授は、唐代建築の特徴として、次のような点を挙げました。
- 柱や梁などの木構造をあえて見せる、力強い木組み
- 鮮やかな彩色が生み出す豊かな色彩
- 梁と柱のあいだに保たれた、精密で均整のとれたプロポーション
こうした要素が組み合わさることで、唐代建築は、一つの完結した視覚システムとして強い印象を与えるといいます。この美学は、日本の歴史的建築にもはっきりと残っています。Kunihiro 教授は、奈良の法隆寺(Horyuji Temple)などに、唐代の影響が刻まれていると指摘しました。
Aoki 教授は、唐代そのものが経済と文化が大きく花開いた時代であり、その繁栄が建築にも表れていると説明しました。皇帝の宮殿や儀式用の大広間から、仏教寺院に至るまで、大規模で気品のある建物が多様な形式で建てられたことが、唐代建築のスケール感と優雅さを特徴づけています。
遣唐使が開いた建築交流の歴史
Aoki 教授は、唐代建築が日本にもたらした影響について、遣唐使の存在に注目しました。日本から唐代の中国へ派遣された使節団は、単なる外交だけを目的としていたわけではなく、当時最先端だった唐の社会を総合的に学ぶ使命を担っていたといいます。
文化、政治、経済、そして建築まで、唐の先進的な仕組みや技術を学ぶことが真の目的でした。使節団は、Chang'an や Luoyang などの都市を訪れ、最先端の文化と建築技術を吸収し、それを日本へ持ち帰りました。
さらに、唐代の建築技術をより深く身につけるために、日本側は中国の職人を日本へ招き、直接指導を受けることもありました。こうした取り組みが、日本各地の寺院や建築の発展を直接後押ししたとされています。
日本の風土に合わせた工夫と発展
Kunihiro 教授は、唐代から伝わった建築技術が、日本のなかで時代を超えて受け継がれ、特に鎌倉時代や室町時代にかけて発展していったと述べました。唐代の技法は、日本の建築文化の中に組み込まれ、独自に進化していきます。
一方で、日本の気候は湿度が高く、唐代の中国とは環境条件が異なります。そのため、日本の建築家や職人たちは、唐代の技術をそのまま移すのではなく、地域の気候や環境に合わせて工夫を重ねました。たとえば、木造建築を高い石の基壇の上に載せることは、湿気への対策として取り入れられた方法の一つだと指摘されています。
高度な構造システムと洗練された美学を備えた唐代建築は、日本の古典的な寺院建築の土台となり、そこから日本ならではの建築様式が形づくられていきました。
デジタル技術がつなぐ過去と現在
今回のバーチャル展 Tang Architecture: Building Timeless Glory は、Building Design、Palace Complex、Urban Planning という三つの視点から唐代建築を読み解き、Great East Hall at Foguang Temple、Daming Palace、Chang'an City の都市計画を通じて、その奥行きを体感できる構成になっています。
東京で行われた Kunihiro 教授と Aoki 教授の対談は、こうしたデジタル展示をきっかけに、唐代建築の美しさだけでなく、その背後にある日中の長い交流の歴史にも目を向ける機会となりました。私たちが日常の風景として見ている日本の寺院や町並みの中には、唐代から受け継がれた技術と思想が静かに息づいていることがわかります。
建築は、単なる空間づくりを超え、文化と文化をつなぐ媒介でもあります。唐代建築のレガシーを振り返ることは、歴史的な建築遺産をどのように守り、次の世代に伝えていくのかを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







