馮小剛が語る映画産業とテクノロジー 2025年重慶映画祭 video poster
2025年7月に中国南西部の重慶市で開かれた上海協力機構映画祭で、人気監督・馮小剛氏がテクノロジーと映画産業の関係について語りました。本記事では、そのインタビューをきっかけに、映画づくりとテクノロジーの現在地を整理します。
今年7月、重慶で開かれた国際映画祭
2025年7月3日から7日まで、中国南西部の重慶市で2025年上海協力機構映画祭(Shanghai Cooperation Organization Film Festival)が開催されました。期間中、中国の国際ニュースチャンネルであるCGTNは、人気中国人監督の馮小剛氏にインタビューを行い、テクノロジーの発展が映画産業に与える影響について話を聞きました。
上海協力機構映画祭は、加盟国や地域の作品やクリエイターが集まり、映画を通じた交流を深める場です。重慶という内陸の大都市で開かれた今回の映画祭では、映画が持つ「国境を越える力」と、テクノロジーがもたらす新しい表現やビジネスの可能性が改めて注目されました。
馮小剛監督が見つめるテクノロジーと映画のこれから
インタビューの中で馮小剛監督は、テクノロジーの発展が映画の作り方、届け方、観客の体験まで、産業全体を大きく変えつつある点に焦点を当てました。ここでは、その議論を手がかりに、映画産業におけるテクノロジーの主なインパクトを三つの視点から整理してみます。
1. 制作現場を変えるデジタル技術
まず、撮影や編集など制作現場は、デジタル化と高度な映像技術によって大きく変化しています。
- デジタルカメラや編集ソフトの進化により、撮り直しや編集の自由度が高まった
- コンピューターグラフィックス(CG)や視覚効果(VFX)で、これまで表現が難しかった世界観を映像化しやすくなった
- バーチャルプロダクションと呼ばれる、LEDスクリーンや仮想空間を使った撮影手法が広がりつつある
こうした技術は、大規模なブロックバスター作品だけでなく、中規模の作品や若手クリエイターの作品にも徐々に広がっています。一方で、技術への投資や人材育成が追いつかないと、現場に格差が生まれるおそれもあります。馮監督のような経験豊富な監督にとっても、新しい技術をどう物語に生かすかは重要なテーマになっています。
2. 配信プラットフォームと観客の習慣の変化
テクノロジーは、映画の「届け方」も変えています。オンライン配信プラットフォームの拡大によって、観客は劇場だけでなく、自宅やスマートフォンで映画を見ることが当たり前になりました。
- 公開から間を置かずに配信される作品が増え、公開戦略が多様化している
- 視聴データを基にした企画やマーケティングが行われるようになっている
- 国や地域をまたいだ同時配信が可能になり、海外の観客にも作品が届きやすくなった
これは、中国本土を含むアジアの映画にとって、世界の観客とつながる大きなチャンスでもあります。一方で、「劇場で見ること」の価値をどう位置づけるか、監督や配給側に新たな戦略が求められています。
3. 観客体験とストーリーテリングの変化
さらに、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)など、新しい体験型のコンテンツも登場しています。映画とゲーム、インタラクティブな物語の境界は、少しずつ曖昧になりつつあります。
こうした環境の中で、監督にとって重要なのは、テクノロジーそのものではなく、「どのような物語を、どのような体験として届けるのか」という視点です。馮小剛監督の議論も、最終的には観客の心に届くストーリーテリングのあり方に関心が向けられていると言えます。
日本の観客・クリエイターにとってのヒント
重慶でのインタビューは、中国本土の映画産業がテクノロジーの波をどう受け止めているのかを知る手がかりとなります。同時に、アジアの一員である日本にとっても、いくつかの示唆があります。
- アジア各地で進む技術活用の動きに目を向けることで、自国の映画づくりを客観視できる
- オンライン配信の普及により、日本と中国本土、さらに他の国や地域の作品が相互に届きやすくなっている
- テクノロジーに振り回されるのではなく、物語と体験の質をどう高めるかという視点が共通して重要になっている
スマートフォン一つで世界中の映画にアクセスできる今、日本の観客にとっても、重慶から発信されたこうした議論は「遠い国の話」ではありません。アジアの映画がどのようにテクノロジーと付き合い、どんな物語を紡いでいくのかを見守ることは、私たち自身の「ものの見方」をアップデートするきっかけにもなります。
おわりに:テクノロジーは映画をどう変えるのか
2025年の上海協力機構映画祭で交わされた馮小剛監督の議論は、映画産業に携わる人だけでなく、映画を愛するすべての人に向けられた問いでもあります。テクノロジーが進むほど、「なぜ映画を撮るのか」「なぜ映画館で見るのか」といった根本的な問いは、むしろ鮮明になっていきます。
映画産業とテクノロジーの関係は、これからも加速して変化していきます。こうした国際ニュースや現場の声に耳を傾けながら、自分自身の映画の見方や楽しみ方も、少しずつアップデートしていきたいところです。
Reference(s):
Feng Xiaogang discusses the impact of technology on the film industry
cgtn.com








