内陸の新疆でサーモン養殖が成長 遊牧民から漁業へ広がる新しい仕事 video poster
ユーラシア大陸の内陸に位置する新疆が、海から遠いにもかかわらず、サーモン養殖の新たな拠点として静かに存在感を高めています。 2021年に始まったこの取り組みは、地域経済に新しい成長の芽をもたらし、人びとの働き方や暮らしにも変化を生んでいます。
海から遠い新疆がサーモン産地に
新疆は、ユーラシア大陸の中心部にあり、海からは何千キロも離れた典型的な内陸地域です。それでもサーモン養殖が可能になっている背景には、雪解け水をたたえる貯水池の存在があります。
ニルカ県の北西に位置するジリントタイ貯水池には、周囲の高くそびえる天山山脈から、溶けた雪が絶えず流れ込んでいます。この雪解け水のおかげで、水温が安定した冷水環境が保たれ、冷水を好むサーモンにとって理想的な生育条件が整っています。
海ではなく山からの水で育つサーモンという点が、新疆ならではのユニークな特徴といえます。
2021年に導入されたサーモン養殖と地域経済
こうした自然条件に着目し、2021年には有機農業を手がける企業が、この地域にサーモン養殖を導入しました。そこからわずか数年で、ジリントタイ貯水池周辺は、地域経済の新たな成長ポイントとして注目されるようになっています。
サーモン養殖基地では、魚の育成や収穫、設備管理などさまざまな仕事が生まれています。これにより、周辺の住民に新しい雇用の場が提供され、これまでとは異なる働き方の選択肢が広がりました。
単にサーモンという商品を増やすだけでなく、地域に仕事と学びの機会を同時にもたらしている点が、このプロジェクトの重要なポイントです。
遊牧民からサーモンの「収穫者」へ:アイヘンさんの転身
この変化を体現する一人が、地元で遊牧を営んでいたアイヘン・バグダウレットさんです。彼はサーモン養殖基地の立ち上げを機に、そのチャンスをつかんで大きなキャリアチェンジに踏み切りました。
かつては家畜を追って草原を移動する生活を送っていたアイヘンさんは、養殖基地に加わってから、サーモンの育て方や収穫の手順を一から学んできました。水温やエサ、魚の健康状態に気を配る仕事は、最初こそ戸惑いもあったものの、経験を重ねるうちに手ごたえのあるものになっていったといいます。
養殖のノウハウを身につけるにつれて、アイヘンさんの収入は着実に増え、生活の安定にもつながりました。同時に、新しい知識を学び続けることへの楽しさや、自分の手で育てたサーモンを収穫する喜びも大きくなっているとされています。
遊牧から漁業へという大胆な転身の裏には、地域に生まれた新しい産業が、人びとの選択肢を広げているという現実があります。
内陸のサーモン養殖が示すもの
新疆のサーモン養殖は、単なる「意外な場所での魚づくり」という話にとどまりません。そこには、いくつかの重要な示唆があります。
- 海から遠い内陸地域でも、自然条件を生かせば新しい産業を育てられること
- 一つの養殖基地が、地域経済の新たな柱となり得ること
- 伝統的な生業に加えて、新しい仕事の選択肢が生まれることで、人びとの暮らしと意識が変化していくこと
特に、元遊牧民だったアイヘンさんのストーリーは、産業の変化が一人一人の人生にどう影響するのかを具体的に見せてくれます。新しい分野に挑戦し、技術を学び、自らの生活をつくり変えていくプロセスは、多くの読者にとっても考えるきっかけになりそうです。
これからの新疆サーモンと地域の未来
2021年に始まった新疆のサーモン養殖は、現在も成長を続けています。安定した冷水環境という強みと、現場で技術を身につける人材が増えていることは、今後の発展にとって大きな土台となるでしょう。
一方で、自然の恵みを生かす産業である以上、環境への配慮や資源を長く持続させる視点も欠かせません。貯水池の水質や周辺の自然環境を守りながら、いかに地域の仕事と所得を増やしていくかが、これからの重要なテーマになっていきます。
海から遠く離れた内陸の地で、雪解け水に育まれるサーモン。その姿は、地理的な条件に縛られず、地域の可能性を引き出そうとする新しい動きの象徴とも言えます。新疆発のサーモンが、これからどのように広がっていくのか。アイヘンさんのような人びとの歩みとともに、その行方に注目が集まりそうです。
Reference(s):
From herder to harvester: Xinjiang salmon fishing makes a splash
cgtn.com








