海底二万里が北京で蘇る 中仏合作ブラックライト人形劇の挑戦 video poster
2025年7月、中国・北京で、ジュール・ヴェルヌのSF古典「海底二万里」を題材にした中仏合作の舞台作品が上演されました。ブラックライト人形劇という手法を用い、観客を深海の世界へと没入させる演出が話題になりました。
SF古典「海底二万里」が現代の舞台に
今回の作品は、フランスの作家ジュール・ヴェルヌの小説「海底二万里」を、中国とフランスのクリエイターたちが共同で舞台化したものです。物語の核となるのは、謎の潜水艦ノーチラス号と、その船長ネモが導く深海への旅です。
原作が描いた「未知の海への好奇心」や「人間と自然の関係」といったテーマを、舞台は視覚表現を通じて再解釈しました。言語に頼りすぎない構成のため、国や世代を超えて楽しめる作品となっています。
ブラックライト人形劇とは?
この北京公演の特徴は、ブラックライト人形劇の手法を前面に押し出していることです。ブラックライト人形劇とは、紫外線に反応する光(ブラックライト)を使い、蛍光色の人形や小道具だけを浮かび上がらせる舞台表現です。
舞台が暗転し、人形だけが暗闇に浮かぶことで、観客は現実の舞台空間を忘れ、物語の世界に引き込まれます。とくに海中シーンでは、この技法と物語の相性の良さが際立ちます。
- 人形や魚、海藻などが光りながら動き、海中の浮遊感を再現
- 操り手は黒い衣装を着て背景に溶け込み、観客の視界から消える
- 音楽や効果音と組み合わせることで、視覚と聴覚の両方から没入感を高める
北京で実現した中仏コラボレーション
この舞台は、中国とフランスのアーティストが共同で制作した点でも注目されました。原作の国であるフランスの物語世界を、中国の舞台技術や表現と掛け合わせることで、新しい「海底二万里」の姿が形づくられました。
舞台美術や人形のデザイン、音楽などの要素に両国の感性が織り込まれ、北京の観客は深海旅行とともに国際的なクリエイションの息づかいも味わうことになりました。国際ニュースの視点から見ても、中仏の文化協力という観点で注目されます。国境を越えた文化交流が、SF古典を21世紀の観客に届けるための原動力になったと言えます。
デジタル世代にも響く「アナログな没入体験」
スマートフォンや動画配信で映像表現に慣れた世代にとっても、ブラックライト人形劇は新鮮な体験です。CGやVRではなく、あくまで物理的な人形と光だけで世界を描き出すからこそ、かえって「リアルさ」や「ライブ感」を強く感じられます。
観客は、光るクラゲや巨大なイカが目の前を横切るたびに、自分自身がノーチラス号の乗組員になったような感覚を味わいます。北京での上演では、物語を知っている人も初めて触れる人も、それぞれの視点で深海の旅を楽しんだとみられます。
なぜ今、「海底二万里」なのか
「海底二万里」は、出版から長い年月が経った今も、多くの国で読み継がれているSFの古典です。今回の中仏合作は、この作品が持つ普遍的なテーマを、環境やテクノロジーの変化が激しい現代に重ね合わせて提示しました。
人間の好奇心が新たな技術を生み出す一方で、自然環境との向き合い方が問われる今、深海を舞台にした物語はあらためて多くの示唆を与えます。ブラックライトによる幻想的な海の光景は、美しさだけでなく、海の豊かさや脆さを静かに語りかけています。
舞台芸術がひらく次の「深海」
2025年7月の北京公演はすでに幕を閉じましたが、この試みは今後の舞台芸術にとって一つのヒントになりそうです。クラシックな文学作品を、国際協働と新しい舞台技法でアップデートしていく流れは、ほかの作品にも広がる可能性があります。
物語の力とテクニックの力、その両方を生かしながら、観客をどれだけ深く物語世界に誘えるか――「海底二万里」のブラックライト人形劇は、その問いに対する一つの答えを、北京で示したと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








