新疆トルファンの彩陶を守る職人 Dong Yuanfu さんの物語 video poster
中国・新疆ウイグル自治区トルファンで、三千年の歴史を持つとされる彩色土器「彩陶(さいとう)」を守る一人の職人がいます。彩陶の継承者である Dong Yuanfu さんは、30年以上にわたり火と土に向き合い、この地域の文化遺産を静かに支え続けています。
新疆トルファンで彩陶と生きる
彩陶は、素焼きの器に文様や色を施した土器で、生活の道具であると同時に、地域の記憶を映す「キャンバス」のような存在です。Dong さんは幼い頃、粘土でおもちゃを作ることに夢中になったことをきっかけに、彩陶づくりの道に入りました。
子どもの遊びだった粘土細工は、やがて一生をかけて向き合う仕事になりました。山で採った土をこね、ろくろを回し、柄を描き込む。Dong さんにとって、それは三千年前の人々と対話する行為でもあります。
山に登り土を集め、三千年の文明と向き合う
彩陶づくりの始まりは、工房ではなく山の斜面です。Dong さんは今も自ら山に登り、器づくりに適した土を探して掘り出します。土の感触や色、混ざる砂の粒の細かさをたしかめながら、作品ごとに最適な素材を選び取ります。
彼の一日は、次のようなシンプルでいて骨の折れる作業の積み重ねです。
- 山に登り、器づくりに適した土を見つけて採取する
- 土をこねて形をつくり、ろくろの上で器を整える
- 表面に文様を描き、彩りを加える
- 窯で焼き上げ、作品として仕上げる
ろくろの前に座り、三千年前の人々も見ていたかもしれない文様を描くとき、Dong さんは古代の文明と対話しているように感じています。静かな工房の中で、土と炎だけが語り相手です。
工業化の波と、技を守るための教室
しかし、急速な工業化の中で、手仕事による彩陶づくりは大きな変化に直面してきました。安価で大量生産された器が広がる一方で、時間も手間もかかる伝統の技は「いつか途絶えてしまうかもしれない」という危機感と隣り合わせです。
その現実を前にして、Dong さんが選んだのはあきらめることではなく、仲間を増やすことでした。村人を対象にした彩陶の研修クラスを開き、自らの知識と技術を少しずつ伝え始めたのです。
土の選び方から文様の描き方、窯の扱いまで、彼が何十年もかけて身につけてきた感覚を、言葉と手の動きで共有していく作業は簡単ではありません。それでも「一人の名人」ではなく「多くの担い手」が生まれることこそが、彩陶という文化遺産を未来につなぐ道だと考えています。
火と土がつなぐ文化遺産と私たち
彩陶づくりは、単なる工芸の技術ではありません。山の土を運び、火で焼き締め、日々の暮らしの中で使われてきた器の一つひとつに、地域の歴史や人々の祈りが刻まれています。その記憶を守る「番人」のような役割を、Dong さんは自ら引き受けていると言えるでしょう。
デジタル技術が生活の中心になりつつある2025年の今、離れた土地のニュースや物語を日本語で読める私たちは、こうした工房の営みを通して「何を残し、どう受け継ぐのか」をあらためて考えることができます。土と火から生まれる一つの器は、小さな国際ニュースであり、人類共通の文化遺産の断片でもあります。
山に登って土を集め、ろくろを回し、窯の炎を見つめる。その繰り返しの中で、Dong Yuanfu さんは今日も彩陶をつくり続けています。彼が守る土の色と文様は、遠くに暮らす私たちにとっても、世界の多様な文化を静かに思い出させてくれる鏡なのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








