景徳鎮で変わる陶芸家の視点 リ・ヤンシュンが「絵付け」を捨てた理由 video poster
中国の「磁都」として知られる景徳鎮で、22年前に下した一人の若いアーティストの決断が、2025年のいま改めて注目されています。広東省潮州出身のリ・ヤンシュン(Li Yanxun)さんは、陶器に絵を描く「絵付け」の名手から、「陶そのものの芸術」を追い求める作家へと方向転換しました。
広東省潮州から「磁都」景徳鎮へ
約22年前、リさんは初めて景徳鎮の土を踏みました。中国を代表する陶磁器の産地として知られるこの街で、彼は「景徳鎮の陶磁器はみな同じ姿をしているわけではない」と気づき、その多様さと奥行きに一瞬で心を奪われたといいます。
当時のリさんは、広東省で陶器への絵付けを学び、技術を磨き続けていました。器の上に山水画や花鳥を描くその腕前は群を抜き、やがてコレクターから「これは紙に描かれた絵なのか、それとも陶器なのか」と問われるほどの精緻さに達していました。
紙か陶か分からないほどの技が突きつけた問い
評価が高まる一方で、リさんの中には次第に違和感も芽生えます。自分の作品がどれほど巧みであっても、それはあくまで「陶器の上に描かれた絵」に過ぎず、器そのものの存在感や立体としての魅力とは切り離されているのではないか――そんな問いが離れなくなったのです。
紙に描いた絵と見分けがつかないほどの完成度は、技術としては到達点のように見えます。しかしリさんにとってそれは、「自分は土と向き合うことから目をそらしているのではないか」という気づきにつながりました。
「土に描く」から「土と描く」へ スタイルを捨てる決断
そこでリさんは、これまで築き上げてきたスタイルをあえて手放す決断をします。陶器をキャンバスの代わりに使うのではなく、造形、釉薬(ゆうやく)、焼成といったプロセスそのものを含めて「一つの作品」として考え直そうとしたのです。
それは、これまでの成功をいったん脇に置き、未知の領域に踏み出すことを意味しました。絵付けの名手として積み上げてきた評価を背にしながらも、リさんは「土と一緒に描く」ことを選び、ラディカルな創作の旅に乗り出します。
2025年の私たちへのヒント 技術と創造性のバランス
リ・ヤンシュンさんの物語は、国や分野を問わず、専門性を磨く多くの人に通じるテーマを投げかけています。
- 技術を極めることと、自分らしい表現を見つけることはどう両立できるのか。
- 評価されている現在のやり方を手放す勇気を、どこで持てるのか。
- 「正しさ」よりも「本当にやりたいこと」を選ぶタイミングはいつか。
陶芸というニッチな世界の話のように見えますが、キャリアの岐路に立つビジネスパーソンやクリエイター、学生にとっても共感できる部分は多いのではないでしょうか。
景徳鎮で22年前に始まったリさんの「やり直し」は、2025年を生きる私たちに、成功や安定を一度疑い、自分にとっての「本当の表現」を問い直すきっかけを静かに与えてくれます。
Reference(s):
Li Yanxun: From Ceramic Painting to the Art of Painting Ceramics
cgtn.com








