国連事務次長が語る難民の実話 海よりも強い「希望」の物語 video poster
国連のメリッサ・フレミング事務次長が、中国語版『A Hope More Powerful than the Sea(海よりも強い希望)』を通じて、一人のシリアの若い女性難民の実話を紹介しました。500人が溺れるなかで生き延びた物語は、2025年の今も私たちに難民問題を身近なものとして問いかけます。
中国語版『海よりも強い希望』が伝えるもの
フレミング事務次長が紹介したのは、『A Hope More Powerful than the Sea(海よりも強い希望)』の中国語版です。この本は、シリア出身の若い女性、ドゥア・アル・ザメルさんの実話を中心に描いています。
ドゥアさんは、紛争から逃れるため、危険な海の旅に出ました。乗っていた船には彼女の婚約者を含む約500人の難民が乗っていましたが、その多くが海に沈み、命を落としました。その中で彼女は、生き残った数少ない一人でした。
本の中で語られるのは、単なる「ドラマチックなエピソード」ではありません。フレミング事務次長は、この物語を「フィクションではなく、今まさに形作られている歴史」として伝えています。読み手は、ニュースの見出しだけではつかみきれない、一人の難民の人生の重さに向き合うことになります。
4日4晩の漂流 命を託された2人の赤ちゃん
物語の中心となるのが、船の遭難後の4日4晩です。ドゥアさんは、海の上を漂いながら、自分の命だけでなく、見知らぬ大人から託された2人の赤ちゃんの命も守ろうとします。
- 船は危険な航海の末に遭難し、多くの人が溺れました。
- ドゥアさんの婚約者も、その中で命を落としました。
- 彼女はただ一人、浮き具につかまりながら、2人の赤ちゃんを腕に抱えました。
- 昼も夜も続く寒さや恐怖、疲労に耐えつつ、4日4晩、海を漂い続けました。
- その時間は、自分の生存だけでなく、「託された命を守る」という責任との闘いでもありました。
数字としての「難民500人」ではなく、「一人の若い女性」と「2人の赤ちゃん」の物語として描かれることで、読者は難民という存在をぐっと身近に感じることができます。
「これは歴史だ」——物語から考える難民問題
フレミング事務次長は、この本を通じて、難民の物語は作り話ではなく、「進行中の歴史」だと強調しています。歴史というと教科書の中の過去を想像しがちですが、ドゥアさんのような人々の体験は、まさに現在進行形で積み重なっている出来事です。
私たちがニュースで目にする「難民」「移動」「危険な航海」といった言葉の裏側には、それぞれの家族、夢、恐怖、選択が存在します。この本は、その一端を具体的な名前と顔を持った物語として見せてくれます。
国際ニュースを追うとき、数字や国名だけでなく、「もし自分や身近な人が同じ状況だったら」と想像してみる。その想像力を支えるのが、このような実話にもとづく物語だと言えます。
PAGE X:一冊の「一頁」から世界とつながる試み
今回の紹介の場となった「PAGE X」という企画は、多様な分野のゲストを招き、ゲストが「お気に入りの本から選んだ一つの一節」を共有する形式をとっています。
特徴は、次のような点にあります。
- 登場するゲストは、分野やバックグラウンドの異なる人々です。
- それぞれが、自分にとって意味のある本の一部を選び、その読み方や感じたことを語ります。
- 視聴者はオンラインを通じて、世界のさまざまな知的な作品に触れることができます。
- 「本を丸ごと読む」のではなく、「一頁から始める」ことで、読書のハードルを下げ、読書の魅力を再発見するきっかけを提供しています。
ドゥアさんの物語が取り上げられたことは、難民問題を「遠い国の話」ではなく、「自分がいま読んでいる一冊」として感じてもらう工夫の一つと言えます。
2025年の私たちにとっての「希望」とは
2025年の世界でも、多くの人が安全を求めて故郷を離れざるを得ない現実があります。ドゥアさんの物語は、その厳しさだけでなく、「希望」の側面にも焦点を当てています。
- 絶望的な状況の中でも、「誰かの命を守りたい」という思いが、人を生かし続けること。
- 見知らぬ人同士が、赤ちゃんを託し、託されるという形でつながること。
- その物語が本になり、別の国の言葉に翻訳され、遠く離れた読者に届くこと。
こうした連なり自体が、「海よりも強い希望」というタイトルを体現しているように見えます。
スマートフォンで国際ニュースを追う私たちにできるのは、まず「一人の物語」に耳を傾けることです。そこから、難民政策や国際協力について、自分なりの問いを持ち始めることができます。
ドゥア・アル・ザメルさんの経験を伝えるこの本と、それを紹介するフレミング事務次長、そしてPAGE Xのような企画は、「読むこと」を通じて世界とのつながりを感じさせてくれます。海よりも強い希望とは何か——その答えを、自分自身の言葉で考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








