ゴビ砂漠を走る750kV送電リング 新疆タリム盆地を照らす新インフラ video poster
中国北西部・新疆ウイグル自治区の広大なゴビ砂漠で、地域のエネルギー地図を塗り替えかねない巨大インフラ計画が進んでいます。タリム盆地の縁をぐるりと一周する形で整備される「タリム盆地縁辺部750kV送電網」です。現在、最終区間の工事が本格化しており、南新疆の電力供給と今後の発展に大きな影響を与えるプロジェクトとして注目されています。
タリム盆地を囲む「750kV送電リング」とは
この計画では、新疆南部のタリム盆地の縁を沿うように、超高圧の送電網が整備されています。送電網は、ホータン(Hetian)から民豊(Minfeng)、且末(Qiemo)、若羌(Ruoqiang)へとつながり、最終的には約108万平方キロメートルをカバーする「閉ループ(リング状)」の電力ネットワークになります。
リング状のネットワークが完成すると、南新疆の各地が相互につながり、どこか一部でトラブルが起きても、別ルートから電力を融通しやすくなります。これにより、地域全体の電力供給がより強靭で安定したものになると期待されています。
クンルン山脈と砂漠を貫く難工事
現在、特に注目されているのが、プロジェクトの「最後の一歩」となる区間です。ホータンから民豊、且末、若羌へと続くこの区間は、クンルン山脈の山あい、起伏の激しい砂漠の丘陵地帯、そして砂漠の縁を通過します。自然条件が厳しく、プロジェクト全体の中でも最も難易度が高い区間の一つとされています。
現地では、頻発する砂嵐、うねるように続く砂丘や岩場などが、建設の大きな障害となります。そのなかで、建設チームは山を越え、砂漠を進みながら、鉄塔の建設や送電線の敷設を進めています。過酷な環境と向き合いながらも、工事は「急ピッチ」で続けられています。
「自然」と「インフラ」がぶつかる現場
送電網の工事現場は、まさに自然の厳しさと人間の技術が正面から対峙する場所でもあります。砂嵐は視界を奪い、機材の運搬や作業の安全を脅かします。起伏の激しい地形は、重機の移動を難しくし、鉄塔の基礎工事にも工夫を求めます。
それでも、こうしたインフラ整備を通じて、これまで交通やエネルギーの面で不利だった地域がネットワークの中に組み込まれていくことになります。プロジェクトは、単なる電力工事にとどまらず、「辺境」とされてきた地域を結び直す取り組みとしても位置づけられます。
南新疆にもたらされる「安定電力」という土台
タリム盆地縁辺部750kV送電網が完成すると、南新疆一帯の電力供給は大きく変わると見込まれています。高圧かつ広域の送電網により、電力の安定供給が可能になり、停電リスクの低減や電圧の安定といったメリットが期待されます。
安定した電力は、産業やサービスの基盤です。工場の稼働、物流や観光、さらにはデータセンターや通信インフラの運営に至るまで、現代の経済活動は電力なしには成り立ちません。今回の送電網は、そうした活動を支える「見えないインフラ」として、南新疆の発展を下支えすることになります。
エネルギー転換と「高品質な発展」への一歩
プロジェクトの説明では、この送電網が地域の「エネルギー転換」と「高品質な発展」に貢献するとされています。エネルギー転換とは、おおまかに言えば、エネルギーの使い方・作り方を見直し、より効率的で持続可能な形へと切り替えていく動きのことです。
広域で安定した送電網が整えば、将来的にさまざまな電源を効率的に結び付けやすくなります。これにより、地域全体での電力の融通や負荷の平準化が進み、エネルギーを無駄なく使う体制づくりを後押しすると期待されています。
また、「高品質な発展」とは、単に経済規模を拡大するだけでなく、インフラ、環境、生活の質などを総合的に高めていくことを指す表現として使われています。安定した電力は、その土台となる要素の一つです。
なぜいま「送電網」が国際ニュースになるのか
一見すると、送電線や鉄塔の工事は地味なニュースに見えるかもしれません。しかし、国や地域のエネルギー政策、経済の持続可能性、安全保障などを考えるうえで、電力インフラは欠かせないテーマです。
とくに、広大で人口も多様な中国のような国・地域では、どのように遠隔地を含めて電力を安定供給するかが、長期的な課題となってきました。新疆のタリム盆地縁辺部を一周する750kV送電リングは、その課題に応える一つの具体的な取り組みといえます。
日本の読者が読み取れる視点
日本では、送電網の老朽化対策や再生可能エネルギーの導入拡大、災害時のレジリエンス(復元力)強化などが課題となっています。遠く離れたゴビ砂漠で進む送電網整備は、一見日本とは関係が薄いようにも思えますが、「エネルギーの安定供給をどう確保するか」という点では共通するテーマを含んでいます。
広大な砂漠地帯でのインフラ建設というスケールの大きさだけでなく、「電力をどのように運び、どのように使うのか」という視点でニュースを眺めてみると、エネルギーやインフラについて自分たちの足元を考えるきっかけにもなります。
タリム盆地をぐるりと囲む750kV送電リングは、南新疆の発展を支える基盤であると同時に、私たちに「インフラの先にどんな未来を描くのか」という問いを投げかけているともいえます。
Reference(s):
cgtn.com








