新疆から重慶へ 中国エネルギー高速道路「哈密―重慶」送電プロジェクト video poster
新疆ウイグル自治区のハミから重慶まで、全長2,290キロを結ぶ±800キロボルトの超高圧直流送電プロジェクトが、2025年12月現在も建設のまっただ中にあります。砂漠、強風、岩山、塩湖という過酷な環境を越えて、中国のエネルギーを長距離で送り出す「電力の高速道路」をどうやって形にしているのでしょうか。
砂漠から都市へ、2,290キロのエネルギー高速道路
2025年に建設が進む哈密―重慶±800キロボルト超高圧直流送電プロジェクトは、新疆のハミを起点に、甘粛、陝西、四川を経て重慶へと続きます。2,290キロという距離は、日本の本州をほぼ縦断する長さに相当するスケールです。
この送電線は、強い日差しと広大な砂漠が広がるハミ周辺で生まれた電力を、数千キロ離れた都市部へと運ぶことをめざしています。いわば、資源の豊かな西部と電力需要の大きい東部をつなぐ「エネルギーの大動脈」です。
極端な環境でどうやって建設するのか
ただ、このエネルギー高速道路を通すルートは、決して穏やかな土地ばかりではありません。送電線が通るのは、強風と砂嵐が吹き荒れる高原、足場の悪い岩場の斜面、地面そのものが塩を多く含む塩原など、多くの難所です。
現場の技術者や作業員は、次のような課題に向き合っています。
- 強風と砂嵐の中での作業:ハミ周辺では、突風や砂嵐が頻発するとされます。作業の安全を確保しつつ、資材の搬入や鉄塔の組み立てを進めるために、天候の短い「すき間時間」を見極めることが欠かせません。
- 岩場の斜面に鉄塔を立てる:硬い岩盤の斜面では、土台となる基礎をつくるだけでも一苦労です。岩を削り、安定した足場を確保しながら、何十メートルもの高さの鉄塔を1基ずつ組み立てていきます。
- 塩原での基礎づくり:塩湖や塩原では、地盤がやわらかく、通常のままでは鉄塔が沈み込むおそれがあります。地盤改良を行い、長期的に安定して立ち続けられる構造を設計することが求められます。
気温もまた大きな敵です。夏場の現場はintense heat(激しい暑さ)にさらされ、作業員の健康管理と作業時間の調整が不可欠です。一方で、砂漠の朝晩は急激に冷え込むため、機材の耐久性を確かめながら工事を進める必要があります。
超高圧直流送電(UHV DC)とは何か
哈密―重慶の送電線には、±800キロボルトという超高電圧の直流送電(UHV DC)が採用されています。直流送電は、交流送電に比べて、長距離を効率よく電力を送るのに適しているとされる方式です。
電圧を極めて高くすることで、同じ電力をより細い電流で送ることができ、送電ロスを抑えやすくなります。その一方で、絶縁や制御の技術レベルは非常に高いものが求められます。特に今回のような砂や塩分を含む厳しい環境では、設備を長期にわたって安定運用するための工夫が重要になります。
エネルギーインフラの未来を映すプロジェクト
このプロジェクトは、単なる一つの送電線ではなく、遠く離れた地域どうしを結ぶインフラが持つ意味をあらためて考えさせます。
- 資源のある地域と、電力を使う都市の橋渡し
- 自然条件の厳しい地域のエネルギーを、広域で共有するしくみ
- 長距離送電を前提にした電力インフラ設計という発想
日本でも、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが、必ずしも消費地の近くにはないという課題があります。新疆から重慶まで2,290キロを結ぶ送電プロジェクトは、離れた地域をどう結び、電力をどう広く融通していくのかという問いに対して、一つのヒントを与えてくれる動きだと見ることもできるでしょう。
そして何より、この規模のインフラは、現場で働く人びとの地道な努力の積み重ねの上に成り立っています。強風や砂嵐、酷暑という自然条件と向き合いながら、一基ずつ鉄塔を建て、一本ずつ送電線を張っていく。その過程を知ることは、私たちが日々当たり前のように使っている電気の裏側を想像するきっかけにもなります。
Reference(s):
cgtn.com








