自然とビジネスがチームに 中国・安吉のトレイルラン革命 video poster
自然と走ることが、地方を動かし始めた
国際ニュースとしても注目される地方創生の動きが、中国・安吉の山あいで進んでいます。チェン・ジェンユー(Chen Zhenyu)氏は、故郷に戻るだけでなく、新しい産業そのものを持ち帰りました。キーワードは「トレイルランニング」と「持続可能な農村モデル」です。
帰郷とともに持ち込んだ「トレイルラン産業」
ジェンユー氏が選んだのは、今人気が高まりつつあるアウトドアスポーツ、トレイルランニングです。ただ大会を開いて人を集めるのではなく、スポーツを軸に複数の要素を束ねています。
- 環境保護
- 地域ビジネス
- 若者文化
彼の構想では、自然は単なる背景ではなく「チームメイト」です。スポーツも単なる娯楽ではなく、農村を再生させるエンジンとして位置づけられています。
古い狩猟道がトレイルとしてよみがえる
安吉の丘陵地には、かつて狩猟に使われていた古い道が残っていました。ジェンユー氏は、この忘れられた道をトレイルランニングのコースとして再生しています。
既存の道を活かすことで、自然への負荷を増やさずに、森や山を感じられるルートを整えることができます。山を削って新しく道路をつくるのではなく、そこにすでにある道の価値を掘り起こす発想です。
廃墟がクリエイティブな拠点に変わる
安吉には、使われなくなった建物も少なくありません。ジェンユー氏は、それらの廃墟を壊すのではなく、トレイルラン文化の「ハブ」として生まれ変わらせています。
古い建物は、ランナーやボランティア、地元の人が集まるスペースになり、創造的な活動が生まれる場にもなっています。ここで企画会議が開かれたり、イベントの準備が行われたりと、地域に新しいリズムが生まれます。
村人・訪問者・ボランティアが物語の共演者に
このプロジェクトの特徴は、村人、訪問者、ボランティアの誰もが「物語の一部」として組み込まれている点です。
村の人びとは、トレイルや拠点づくりに関わることで、自分たちの土地の新しい表情を発見します。訪れるランナーは、単なる観光客ではなく、地域の歴史や自然に触れる「参加者」となります。ボランティアは、イベント運営を手伝いながら、世代や地域をこえたつながりをつくっていきます。
こうして、誰か一人の成功物語ではなく、村全体が主人公のようなストーリーがゆっくりと編まれています。
「遊び」がエンジンの農村イノベーション
トレイルランニングは、一般的には週末の趣味や気分転換として語られがちなスポーツです。しかし安吉では、それが真剣な地方イノベーションのエンジンになっています。
ここで起きているのは、現実からの逃避ではありません。むしろ、自然の中で体を動かす「遊び」の力を使って、農村の現実を更新していく挑戦だといえます。
「自然はコスト」から「自然はパートナー」へ
ジェンユー氏のモデルが示しているのは、自然を守ることと、地域で稼ぐことと、若者がワクワクできる文化をつくることは、本来対立しないという視点です。
自然を守るからこそ魅力的なトレイルが維持され、魅力的なトレイルがあるからこそ人が集まり、人が集まるからこそビジネスや新しい文化が生まれる——そうした好循環のイメージが、安吉の山道から立ち上がっています。
日本の地方にも通じるヒント
地域の将来をどう描くかは、日本を含む多くの国と地域に共通する問いです。安吉で進む取り組みは、「外から大企業を誘致する」でも「大規模な開発を行う」でもない、もう一つの地方創生の姿を見せてくれます。
- すでにある自然や歴史を、別の角度から見直す
- スポーツやカルチャーを、地域の共通言語として育てる
- 戻ってきた若い世代が、新しい産業を持ち込む
こうした視点は、国や地域を問わず応用できる要素です。中国・安吉の山道で始まった小さな変化は、アジア各地、そして日本の地方にも静かなヒントを投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








