中国雲南・大理の白族女性が描く「土と糸のアート」
土から生まれた絵の具で、読み書きのできない高齢の白(ペー)族女性たちが自分たちの物語を描いています。中国雲南省・大理の古い町で始まっているこのフォークアートは、農村のくらしと民族文化、そして女性たちの創造性を静かに映し出しています。
鍬と筆を持ち替える、白族女性たちの日常
雲南省の大理の古い町では、白族の高齢女性たちが、畑では鍬、家に戻れば筆を手に取ります。農作業で鍛えられた指先が、そのままキャンバスの上で躍り、日々の暮らしが絵となっていきます。
彼女たちは、いわゆる美術教育を受けたことのない「独学のアーティスト」です。けれども、筆を通して、家族や集落、季節の移ろいといった身近な世界を、鮮やかな色と素朴な構図で描き出しています。
色とりどりの大地から生まれる絵の具
特徴的なのは、工場でつくられた絵の具ではなく、大理の土地そのものから色を取り出していることです。地域の色彩豊かで肥えた土を集め、砕き、すりつぶし、水と混ぜて顔料にしていきます。
こうして作られた土の絵の具は、キャンバスに載せると、どこか土の香りを残したまま、やわらかな風合いを放ちます。彼女たちの作品には、まさに大地と暮らしがそのまま封じ込められていると言えます。
刺繍の技がそのまま筆づかいに
白族の女性たちが長年受け継いできたのは、刺繍の細やかな技です。その手仕事の感覚が、今度は絵画の筆づかいに変わりました。一筆一筆が糸を刺すように重ねられ、画面には刺繍にも似たリズムと密度が生まれます。
布の上に模様を縫い込んできた経験が、今は紙やキャンバスの上で生かされているのです。伝統的な刺繍と新しい絵画表現が静かにつながり、独自のフォークアートとして形をととのえています。
文字は読めなくても、色で語る「自画像」
彼女たちは文字を読むことはできませんが、色を組み合わせる力で多くを語ります。自分の名前も、ペンではなく筆で絵の一部として書き込んでいきます。
作品には、自分たちの人生の記憶だけでなく、白族の人びとが抱いてきた美意識や、洱海(エルハイ)湖のそばで営まれてきたゆったりとした時間の感覚がにじみ出ています。それは、観光パンフレットには収まりきらない、生活者の視点から見た大理のロマンスです。
ローカルな物語を、どう受け止めるか
遠く離れた日本からこのニュースを読む私たちは、こうした白族女性たちの絵を、どのように受け止めればよいのでしょうか。そこには、次のような問いかけがあります。
- 高齢になっても、暮らしの中から創造性を育てられるのではないか
- 読み書きの能力とは別のかたちで、人は豊かに自己表現できるのではないか
- 民族文化を見るとき、派手なショーではなく生活の現場に目を向けられるか
大理の白族女性たちが描く絵は、単なる素朴な土産物でも観光コンテンツでもなく、土と糸と色に支えられた生活の記録です。国や地域を超えてローカルな物語に耳を傾けることは、自分たちの日常を見つめ直すきっかけにもなります。
洱海のほとりで生まれたこれらの絵画は、いまも静かに描き続けられています。土の色と刺繍の感覚から生まれた白族の描かれた夢は、スクリーン越しの私たちにも、暮らしをもう一度丁寧に見直してみないかと語りかけているようです。
Reference(s):
cgtn.com








