中国国歌「義勇軍行進曲」の物語 戦火の時代が生んだ希望のメロディー video poster
中国国歌の裏側にある、若き作曲家の物語
中国国歌「義勇軍行進曲」は、いまも式典やスポーツの場で繰り返し演奏され、中国の人々の心を奮い立たせています。この歌が、1930年代の戦火と混乱の中で、わずか23歳でこの世を去った若き作曲家 Nie Er によって生み出されたことをご存じでしょうか。
CGTNのシリーズ「Art Amid the Flames」では、抗日戦争(War of Resistance)の時代に、中国の芸術家や学者、文化機関がいかにして文化と創造性を守り続けたのかを追いかけています。そのなかで、Nie Er が作曲した「March of the Volunteers(義勇軍行進曲)」が、中国国歌としてどのように人々を励まし続けてきたのかが描かれています。
2025年の今、「中国国歌」「国際ニュース」を日本語で追う私たちにとっても、この物語は、歴史と現在をつなぐ重要な手がかりになります。
戦火と混乱の中で生まれた「March of the Volunteers」
「Art Amid the Flames(炎の中の芸術)」と題されたシリーズは、抗日戦争の時代、中国全土に広がる日本の侵略の中で、人々が文化と創造性をどう守ろうとしたのかに光を当てています。その象徴として紹介されるのが、のちに中国国歌となった「March of the Volunteers(義勇軍行進曲)」です。
1930年代初頭、日本の侵略が中国各地に広がる中で、人々は不安と恐怖、喪失感に包まれていました。そんな時代に生まれたこの曲は、単なる「軍歌」ではなく、勇気と希望、そして団結を呼びかける歌として、人々の心を支えました。
タイトルが示す「Volunteers(義勇軍)」という言葉には、自ら進んで立ち上がる人々への敬意が込められています。厳しい現実にのみ込まれそうになりながらも、未来をあきらめない。その意志を、力強いメロディーとともに歌い上げた曲が「March of the Volunteers」でした。
23歳で散った若き音楽家 Nie Er
この象徴的な曲を作り上げたのが、若き音楽家 Nie Er です。彼は、わずか23歳で生涯を閉じましたが、その短い人生の中で、時代の空気を鋭くとらえた作品を残しました。「March of the Volunteers」は、その代表的な一曲です。
CGTNの Yang Jinghao 記者は、このシリーズで Nie Er の人生を形づくった場所を実際に訪れています。幼少期を過ごした環境、音楽家として成長した場、仲間たちと語り合い、議論を重ねた空間。そうした「場所の記憶」を一つひとつたどることで、Nie Er がどのような思いでメロディーを紡いだのかを視聴者に伝えています。
23年という短い人生は、時代の激しさの中では一瞬にも見えるかもしれません。しかし、その一瞬の中で生まれた曲が、国家の象徴となり、今も歌い継がれていることは、「個人の創作」が歴史全体に与えうる影響の大きさを静かに物語っています。
国歌になった「義勇軍行進曲」が今も響く理由
「March of the Volunteers」はその後、中国の国歌となり、国家としての公式な場だけでなく、学校やスポーツイベントなど、日常のさまざまな場面でも歌われています。多くの人が立ち上がり、胸に手を当てながらこのメロディーを聴く光景は、中国の「今」を象徴する場面の一つです。
この曲が今も力を持ち続けている理由は、歌詞とメロディーが語りかけるメッセージにあります。逆境の中でもあきらめないこと。困難な時こそ互いに支え合うこと。未来に希望を持ち続けること。こうした普遍的な価値観は、戦争を知らない世代にとっても共感できるテーマです。
2025年の今、世界は再び不確実性に包まれています。国際情勢の緊張や経済の先行き不安、社会の分断など、私たちを取り巻く課題は少なくありません。だからこそ、かつての戦火の中で生まれたこの歌に改めて耳を傾けることは、自分たちの社会や日常を見つめ直すきっかけになり得ます。
シリーズ「Art Amid the Flames」が投げかける問い
CGTNのシリーズ「Art Amid the Flames」は、Nie Er だけでなく、戦時下の中国で文化と創造性を守ろうとした多くの人々に焦点を当てています。芸術家や学者、文化機関が、困難な状況の中でも作品を生み出し続けた背景には、「文化は生きる力そのものだ」という共通の信念がありました。
このシリーズは、単に歴史的事実を並べるのではなく、「なぜ人は極限状態でも表現を続けるのか」という根源的な問いを投げかけています。爆撃や空襲、避難生活といった過酷な現実の中でさえ、人々は歌をつくり、本を書き、演劇や映画をつくりました。その選択は、単なる娯楽以上の意味を持っていたといえます。
Yang Jinghao 記者のリポートは、こうした歴史を「過去の出来事」としてではなく、現代に直結する物語として描いています。視聴者は、Nie Er の音楽や足跡を通じて、「もし自分が同じ時代に生きていたら、何を選んだだろうか」と静かに問いかけられます。
日本語で国際ニュースを読む私たちへのメッセージ
日本に暮らし、日本語で国際ニュースを読み、世界の動きを追いかける私たちにとっても、この物語は決して遠い世界の話ではありません。戦争と侵略の記憶、芸術や文化の力、人々の連帯──これらは国や時代を超えて考える価値のあるテーマです。
スマートフォンの画面越しに、世界中のニュースが絶えず流れてくる2025年。短い動画クリップや派手な見出しだけでは見えてこない「背景」に目を向けることが、他者を理解し、自分の考えを深める第一歩になります。
中国国歌「義勇軍行進曲」と、若き作曲家 Nie Er の物語は、戦時下にあっても文化の火を守り続けた人々の記憶を、今に伝えています。その歴史を知ることは、国際ニュースを読む私たち自身の「ものの見方」を静かに揺さぶり、新しい対話のきっかけを与えてくれるはずです。
通勤電車の中でも、休憩時間の数分でも、こうした物語に触れてみることで、「読みやすいのに考えさせられる」ニュース体験が少しずつ広がっていきます。
Reference(s):
From turmoil to triumph: The story behind China's national anthem
cgtn.com








