古代竹簡が動かす新しい文化観光 中国・雲夢県博物館の現在 video poster
古代竹簡が「観光資源」に 湖北省雲夢県で広がる動き
中国中部・湖北省の孝感市にある雲夢県では、古代の竹簡(竹の札に文字を書いた資料)が地域の新しい文化観光をけん引しつつあります。2025年前半だけで雲夢県博物館には55万人以上が訪れ、かつて地中に眠っていた竹簡文化が、いまや動きのある文化遺産として注目を集めています。
戦国・秦・漢の竹簡が語る「統一」への歩み
雲夢県では、1970年代以来、戦国時代から秦・漢代にかけての竹簡や木簡が何度もまとまって出土してきました。とくに有名なのが、秦代の家族書簡が見つかった睡虎地秦墓や、長文が刻まれた鄭家湖の木簡です。
これらの出土資料は、楚から秦・漢へと移り変わる文化の姿を具体的に伝えています。国家の統一がどのように進んだのか、当時の法制度や書き言葉がどのように整えられていったのかを示し、既存の文献では分からなかった空白を埋める手がかりとなっています。
雲夢県博物館の収蔵品と展示の工夫
5,000点超の資料と竹簡を中心とした「目玉」展示
こうした発掘成果を受け止める場が、雲夢県博物館です。同館には、25のカテゴリーに分かれた5,000点以上の文物が収蔵されており、そのうち350点余りは貴重な文化財、49点は国家一級文物に指定されています。
なかでも、戦国・秦・漢の竹簡はコレクションの中核となる存在です。古代の人びとが実際に手にし、文字を書き記した竹簡が、ガラス越しにずらりと並ぶ光景は、タイムスリップしたかのような印象を与えます。
発掘現場を再現するハン代竹簡ギャラリー
展示の中心のひとつが、「漢代竹簡ギャラリー」です。ここでは、睡虎地77号漢墓から出土した2,000枚以上の竹簡が、発掘時の状況をイメージできるよう工夫して展示されています。
発掘現場の平面図や考古学調査の写真も併せて示されており、来館者は「どこから何が見つかったのか」を視覚的に追うことができます。博物館の展示室でありながら、まるで考古学の「現場」をのぞき込んでいるような体験ができる構成です。
テクノロジーで「触れる歴史」に
雲夢県博物館は近年、最新のデジタル技術も積極的に取り入れています。来館者は、竹簡の制作工程を体験するコンテンツを通じて、竹を割り、加工し、文字を書くまでの流れを学ぶことができます。
また、秦代の法律を分かりやすく紹介する展示や、漢字の形がどのように変化してきたのかをたどるコンテンツも用意されています。スクリーンやインタラクティブな仕掛けを活用することで、難しそうに見える古代史や法制史を、遊び感覚で理解できるようになっています。
歴史とテクノロジーを組み合わせることで、「見るだけ」の展示から一歩進んだ、参加型の学びの場が生まれていると言えます。
2025年前半だけで55万人超 文化観光の新たな柱に
雲夢県博物館は、2025年前半だけで55万人以上の来館者を迎えました。発掘当時は地中深くに眠っていた竹簡文化が、いまでは地域を代表する文化遺産として、多くの人びとを引きつけています。
竹簡が観光の「ドライバー」になっている点は、文化遺産と地域振興をどう結びつけるかを考えるうえでも注目されます。歴史資料としての価値を大切にしながら、一般の人が楽しみながら学べる形に翻訳することで、新たな人の流れを生み出しているからです。
日本の読者にとってのヒントは
日本でも各地に歴史資料館や考古博物館がありますが、雲夢県博物館の事例は、次のようなポイントを示しているように見えます。
- 「発掘のプロセス」をストーリーとして見せることで、専門的な資料にも親しみを持ってもらえる
- 古代の文字や法律といった一見難しいテーマも、デジタル技術を使えば体験型コンテンツとして伝えられる
- 地域固有の歴史資源を丁寧に掘り起こすことで、新しいタイプの文化観光を育てることができる
「地中から地上へ」 動き始めた竹簡文化
雲夢県で出土した竹簡は、長らく地中に眠っていた過去の遺物でした。しかしいま、それらは博物館の展示やデジタルコンテンツを通じて、多くの人が触れ、学び、語り合う対象になっています。
竹簡文化は、静かに保管されるだけの「遺産」から、人々の移動と出会いを生み出す「現在進行形の文化」へと姿を変えつつあります。国際ニュースとして眺めるとき、そこには、歴史をどう伝え、どう次の世代につなぐかという、共通の問いが見えてきます。
Reference(s):
Heritage of bamboo slips drives new cultural tourism in Yunmeng
cgtn.com








