731部隊の残虐行為を描く映画「Evil Unbound」、ハルビンで世界初公開
リード
第二次世界大戦中、日本軍の細菌戦部隊として知られる731部隊の実態を告発する中国映画「Evil Unbound」が、中国東北部・黒竜江省ハルビンで世界初公開されました。かつて部隊が拠点を置いた街での上映は、戦争犯罪の記憶を現在にどう伝えるかという重い問いを投げかけています。
ハルビンでのワールドプレミア
映画は、中国東北部の都市ハルビンで行われたワールドプレミアで初めて一般に披露されました。ハルビンは、第二次世界大戦期に日本軍の731部隊が本部を置いた場所でもあります。今回の上映は、加害の現場となった土地から歴史を見つめ直そうとする試みとも言えます。
物語の中心人物・王永章と「特別収容所」
「Evil Unbound」は、ハルビン近郊で暮らす行商人・王永章(ワン・ヨンジャン)と、彼と共に拘束された人びとを主人公にしています。彼らは731部隊が設けた「特別収容所」に収容され、あたかも「健康診断」や「防疫研究」への協力と引き換えに自由が与えられるかのように装われます。
しかし実際には、彼らは非人道的な人体実験の対象とされます。作品の中で描かれる主な実験は次のようなものです。
- 極寒の中で身体を凍傷させる「凍傷実験」
- 有毒ガスを吸わせ、反応を観察する「ガス暴露実験」
- 麻酔なしで身体を切開する「生体解剖」
映画は、こうした場面を通じて、戦争が市井の人びとの生活をどう破壊していったのかを、個人の物語として描き出そうとしています。
「映画では描ききれない残酷さ」 展示館館長の言葉
ハルビンで行われたプレミアには、日本軍第731部隊の犯罪を伝える「日本軍第731部隊罪証展示館」の金成民(Jin Chengmin)館長も登壇しました。
金館長は、上映後のあいさつで次のように語りました。
「映画が描けるのは真実のごく一部にすぎません。実際の歴史は、スクリーンで表現できるものよりもはるかに残酷でした。」
さらに金館長は、731部隊の犯罪は人類史の中でも最も暗い章の一つであり、戦後には当時の日本当局によって周到に隠蔽されたと指摘しました。そのうえで、この映画が731部隊とその歴史についての理解と研究を深めるきっかけになってほしいと強調しました。
731部隊とは何か
731部隊は、第二次世界大戦中にハルビン市平房区に設置された、日本軍の極秘の生物・化学兵器研究施設でした。ここは、中国や東南アジアで行われた日本軍の細菌戦を統括する司令部の役割も担っていました。
映画「Evil Unbound」は、この施設で行われた実験の一端を、個人の体験を通じて視覚化しています。観客は、歴史書の一行ではなく、名前を持つ一人ひとりの苦しみや恐怖として、731部隊の実態に向き合うことになります。
2025年の今、この映画が持つ意味
2025年の今、戦争を直接体験した世代は少なくなりつつあります。一方で、歴史をめぐる議論や記憶の風化は、多くの国と地域で共通の課題になっています。
そうした中で、ハルビンで世界初公開された「Evil Unbound」のような作品には、いくつかの重要な役割があると言えます。
- 加害と被害の歴史を、具体的な物語として次世代に伝える
- 資料館や研究者が積み上げてきた証言・証拠への関心を高める
- 異なる国や地域の人びとが、歴史を共有し対話するきっかけをつくる
映画はフィクションの枠組みを持ちながらも、史実に基づいて731部隊の実態に光を当てようとしています。観客一人ひとりが、物語を通じて歴史と向き合い、自分なりの問いを持ち帰ることが期待されています。
見終わった後に考えたいこと
「Evil Unbound」は、決して軽い気持ちで観られる作品ではありません。しかし、だからこそ、今を生きる私たちに問いを突きつけます。
- 国家や軍隊の名の下で、人間の尊厳が踏みにじられたとき、何が起きるのか
- 戦後になってもなお、事実が隠され、声がかき消されてしまうのはなぜか
- 過去の加害と被害の歴史を、現在と未来の社会にどう活かすことができるのか
ハルビンでの世界初公開をきっかけに、この作品がアジアや世界各地で上映され、歴史をめぐる穏やかな対話が広がっていくかどうか。今後の動きにも注目が集まりそうです。
Reference(s):
Film exposing Japan's WWII atrocities premieres in NE China's Harbin
cgtn.com








