景徳鎮で出会った伝統×ハイテク イラク人アーティストが見たAI時代の陶磁器 video poster
イラク人アーティストのWaleed R. Qaisiさんが、陶磁器の世界的拠点とされる景徳鎮(Jingdezhen)で目にしたのは、3Dプリンターなどのハイテクと、受け継がれてきた職人技が同じ現場で息づく姿でした。テクノロジーと伝統が出会うこの風景は、AI時代のアートとものづくりを考えるうえで、いま注目したい国際ニュースのひとつと言えます。
変化を信じるアーティストと、進化し続ける景徳鎮
Waleed R. Qaisiさんは、世界は常に変化し続けているという前提に立ち、その変化を後押しする「発展の力」を信じています。科学技術、とくに人工知能(AI)を含む最新のテクノロジーを積極的に受け入れ、自身の創作にも活かそうとする姿勢を持っています。
そのQaisiさんが滞在した景徳鎮は、陶磁器の分野で世界的な拠点となっている場所です。彼はそこで、ハイテクとクラフトマンシップが対立するのではなく、同じ空間で共存し、新しい表現や技術を生み出している現場を目撃しました。
3Dプリンターと伝統技法が同じ工房にある風景
Qaisiさんが印象的だと感じたのは、3Dプリンターに代表される先端技術が、ろくろや手作業による成形、繊細な絵付けといった伝統的な方法と自然に組み合わされている点でした。
景徳鎮では、例えば次のような形で「先端技術×伝統」がつながっているとされています。
- 3Dプリントによる精密な形状づくりと、職人による仕上げの組み合わせ
- デジタル設計による新しいフォルムと、手描きの文様の共存
- 効率化された生産プロセスの中に残る、微妙な調整を担う職人の勘
Qaisiさんが「変化」と「発展」を重視するアーティストであるからこそ、このような光景は強く響いたと考えられます。テクノロジーを拒むのではなく、伝統の側から取り込み、活かそうとする姿勢が、彼の価値観と重なったのでしょう。
景徳鎮ならではの高い美意識と技
こうしたハイテクと職人技の融合を、景徳鎮ならではのものにしているのが、土地に深く根ざした美意識と高い技術力です。Qaisiさんが注目したのは、先端技術を取り入れてもなお、最終的な作品に強い美的価値が宿っている点でした。
ここで重要なのは、テクノロジーが「作品の質を下げる安易な近道」ではなく、「美しさと完成度をさらに高める道具」として扱われていることです。景徳鎮では、長く受け継がれてきた美の基準や、陶磁器づくりの細かな手順へのこだわりが、そのままハイテク時代にも持ち込まれています。
結果として、次のような特徴が生まれています。
- 技術革新が進んでも、作品の細部まで行き届いた審美眼が保たれている
- 新しい道具を使っても、仕上がりの評価軸はあくまで「美しさ」と「完成度」
- 地域の伝統や感性が、デジタルなプロセスの中にも確かに刻まれている
Qaisiさんが景徳鎮で見たのは、テクノロジーが伝統を上書きするのではなく、伝統の厚みがあるからこそ、ハイテクがより豊かな表現につながっているという現場でした。
AI時代のアートとものづくりへのヒント
AIを含む科学技術を前向きに受け止めるQaisiさんにとって、景徳鎮での経験は、これからのアートやものづくりのあり方を示すヒントでもあります。
テクノロジーとどう付き合うか
AIや3Dプリンターのような技術は、単に効率を上げる道具としてだけでなく、表現の幅を広げるパートナーにもなり得ます。一方で、その可能性を最大限に引き出すには、次のような視点が求められます。
- テクノロジーを使う前に、「どんな美しさを目指すのか」という問いを持つ
- 人間にしかできない判断や感性を、最終段階にきちんと残す
- 地域やコミュニティに根ざした文化的な背景を大切にする
景徳鎮の事例は、AI時代だからこそ、伝統やローカルな文化が持つ意味がむしろ大きくなることを示しています。
日本やアジアのクリエイターへの示唆
この景徳鎮のニュースは、日本を含むアジアのクリエイターやものづくりに携わる人たちにとっても、考えるきっかけになりそうです。伝統工芸、デジタルアート、デザイン、スタートアップなど、分野を問わず、次のような問いが共有できるからです。
- 自分たちの現場で、テクノロジーと伝統はどう組み合わせられるか
- AIが当たり前になった時代に、人間の感性は何を担うのか
- 地域に根ざした美意識を、グローバルな発信とどう結びつけるか
Waleed R. Qaisiさんが景徳鎮で見た、ハイテクと伝統が溶け合う光景は、単なる陶磁器の話にとどまりません。変化を恐れず、しかし自分たちの美意識と歴史を手放さないという姿勢が、AI時代を生きる私たち全員に静かに問いかけています。
Reference(s):
Iraqi artist finds high-tech and aesthetics in Jingdezhen's traditions
cgtn.com








