中国と南アフリカの映画協力:第12回シルクロード映画祭が映した新たな可能性 video poster
国際ニュースとしての映画産業の動きが静かに加速しています。最近開かれた第12回シルクロード国際映画祭で、南アフリカ国立映画映像基金(NFVF)の暫定CEO、オンケ・ドゥメコ氏が、中国と南アフリカの映画協力の現状と可能性について語りました。本記事では、その発言を手がかりに、2025年現在の中国・南アフリカ間の文化交流を読み解きます。
第12回シルクロード国際映画祭で語られた「中南映画協力」のいま
ドゥメコ氏は、中国のメディアとの対談のなかで、中国と南アフリカ(以下、南ア)の映画協力について新鮮な視点を示しました。舞台となったのは第12回シルクロード国際映画祭。シルクロードの名を冠したこの映画祭は、アジアとアフリカ、そして世界をつなぐ「映像の回廊」として位置づけられています。
同氏はまず、中国の映画産業そのものへの強い印象をこう語ったとされています。
「中国の映画産業には、深い伝統と急速なイノベーションがバランスよく共存している。歴史と未来の成長が、同じ重みで大切にされているように感じる」
この一言には、中国映画産業が持つ二つの顔――長い文化的蓄積と、デジタル技術や市場拡大を背景にしたダイナミックな変化――が凝縮されています。
伝統と革新が同居する中国映画産業
中国映画に対して、ドゥメコ氏が強調したキーワードは「バランス」です。彼女の視点を少し整理すると、次のような構図が浮かび上がります。
- 長い歴史や物語文化に根ざした「深い伝統」
- 技術投資や新しいビジネスモデルに支えられた「急速なイノベーション」
歴史ドラマや文芸作品といった「物語の厚み」を感じさせるジャンルと、視覚効果(VFX)やオンライン配信など最先端の技術を活用した作品が、一つの市場の中で共存している――ドゥメコ氏は、そこに中国映画の「現在」と「未来」を見ているといえます。
彼女の評価は、単なる称賛にとどまりません。南アの映画人にとって、中国の経験は「伝統を守りながら、いかに新しい市場や技術を取り込むか」という実践的なヒントにもなりうるからです。
南アフリカにある「大きな中国コミュニティ」という強み
ドゥメコ氏が、協力の「現実的な出発点」として挙げたのが、南アに住む中国の人々の存在です。
「南アフリカには大きな中国コミュニティがあり、それが文化交流の自然な土台になっている」と同氏は指摘しました。
この視点は、文化交流や国際協力を語るうえで見落とされがちな「現場の人々」に光を当てるものです。言語、生活文化、ビジネスのネットワークなど、現地で暮らす人々のつながりが、そのまま映画や映像プロジェクトのインスピレーションや制作環境になりえます。
例えば、次のような形での連携がイメージできます。
- 中国と南ア双方の生活を描くドキュメンタリー作品
- 南アを舞台にした中国映画、または中国を舞台にした南ア映画の共同制作
- 現地コミュニティを取材・協力パートナーとした長編・短編プロジェクト
こうした取り組みは、単なる「国同士」の協力を超え、「人と人」を軸にした文化交流へとつながっていきます。
BRICSパートナーとしての「クイックウィン」に注目
ドゥメコ氏は、中国と南アが共にBRICSのパートナーであることにも触れ、「具体的なクイックウィン(短期的に成果が見えやすい取り組み)」に集中すべきだと提案しました。
ここで言うクイックウィンとは、大規模で時間もコストもかかるプロジェクトではなく、比較的短期間で形にでき、かつ次の協力につながるような「小さな成功」です。映画分野で考えると、例えば次のようなステップが想定されます。
- 短編映画の共同制作:少人数のチームで始められ、オンライン配信などで広く発信しやすい。
- 映画祭での特集・レトロスペクティブ:中国・南ア双方の映画祭で相互に作品を紹介し、観客と制作者の接点をつくる。
- 人材交流プログラム:若手監督やプロデューサーを対象とした研修・レジデンス(滞在制作)の実施。
- 共同ワークショップ:脚本開発やポストプロダクションなど特定のテーマで、オンライン/対面の講座を共催する。
ドゥメコ氏は、こうした「具体的で実現しやすいプロジェクト」を積み重ねることで、長期的な共同制作パートナーシップへと発展させていくべきだという考えを示しています。
持続的な共同製作パートナーシップに向けて
映画産業は、1本の長編作品を完成させるまでに多くの時間と予算を必要とする分野です。そのため、いきなり大型の共同制作に踏み出すのはリスクも大きくなります。
だからこそ、「クイックウィン」を意識した段階的な協力は、現実的で持続可能なアプローチといえます。
- まずは小規模プロジェクトで信頼関係と実務ノウハウを蓄積する
- そこで得た経験をもとに、より大きな作品やシリーズ企画へと広げていく
- 成功事例をBRICSなどの枠組みの中で共有し、新たな資金やパートナーを呼び込む
こうした流れが実現すれば、中国と南アの二国間協力にとどまらず、他のBRICSパートナーを巻き込んだ多国間の共同制作へと発展していく可能性も見えてきます。
日本の観客・クリエイターにとっての意味
では、日本でニュースや国際情報を追う読者にとって、中国と南アの映画協力はどのような意味を持つのでしょうか。
第一に、作品ラインナップの多様化です。中国と南アが共同制作する作品が増えれば、日本の映画祭や配給会社がそれらを紹介する機会も高まっていきます。アジアとアフリカ、異なる二つの地域が交差する物語は、日本の観客にとっても新鮮な視点をもたらすはずです。
第二に、日本のクリエイターにとっての「学びの場」としての可能性です。伝統と革新を両立させようとする中国、そして多民族社会ならではのストーリーテリングを持つ南ア。その協力のあり方は、日本の映像制作者が、自国の物語をどのように国際市場に届けるのかを考える際の参考にもなりえます。
第三に、国際協力の「現実的な一歩」のモデルです。ドゥメコ氏が語ったクイックウィンの発想は、日本と他地域の文化協力や共同制作を考えるうえでも応用できる考え方といえるでしょう。
静かに進む「物語のシルクロード」
第12回シルクロード国際映画祭の場で語られた、中国と南アの映画協力のビジョンは、派手さこそありませんが、具体的で地に足のついたものです。大きなスローガンよりも、現場で実現可能なプロジェクトを積み上げていく――その姿勢は、2025年の国際協力の一つのスタンダードになりつつあります。
深い伝統と急速なイノベーションが共存する中国映画産業。そして、多様な文化と大きな中国コミュニティを抱える南アフリカ。両者がBRICSパートナーとして「物語のシルクロード」をどのように描いていくのか。今後の具体的な共同制作や映画祭での動きに注目していきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








