中国を旅する国際ニュース:武漢ハイテク谷と景徳鎮、交差する伝統と創造 video poster
番組『Meet China』第51回は、テクノロジー、伝統文化、アートの現場を通じて、変化を続ける中国の今を立体的に映し出しています。武漢のハイテクゾーンOptics Valleyから、千年の陶磁器の都・景徳鎮、現代都市に古典庭園をよみがえらせるデザイナー、そして北京・上海で活躍する欧州出身アーティストまで。国際ニュースとしても、中国社会の現在地を知るうえで示唆に富む内容です。
武漢・Optics Valley:ハイテクゾーンがつくる「次の中国経済」
武漢のOptics Valleyは、中国にある178の国家級ハイテクゾーンの一つです。30年以上前にスタートしたこれらのイノベーションクラスターは、研究開発とビジネスを近い距離で結びつけ、中国経済の将来像を形づくる存在になりつつあります。番組では、記者の陳夢菲がOptics Valleyを訪れ、最先端の研究施設とスタートアップ企業がどのように連携し、次の世代のグローバル企業を育てようとしているのかを追いました。
Optics Valleyの特徴として、例えば次のような点が紹介されています。
- 大学や研究機関が集積し、光学や通信などの先端分野で共同研究が進むこと
- 研究成果を事業化するための資金や支援プログラムが整備されていること
- 国内市場だけでなく、早い段階から海外展開を視野に入れた企業が多いこと
日本の読者にとっては、「技術×都市×起業家精神」を一体で育てる発想が、今後のアジアの競争力を考えるうえで重要なヒントになりそうです。
景徳鎮:千年の陶磁器の都、カルチャー拠点へ
次に番組が向かったのは、1000年以上にわたり陶磁器づくりで知られてきた景徳鎮です。かつて皇室に器を納めてきたこの街は、いま「文化ルネサンス」ともいえる変化のただ中にあります。記者のアーロン・リウは、伝統的な窯元だけでなく、若い世代が手がける新しい空間やイベントを取材しました。
印象的なのは、陶磁器という古い技術が、没入型の体験施設やクリエイターが集うマーケット、現代的なデザインと結びつき、訪れる人が「見て買う」だけでなく、「触れ、学び、対話する」場として再構成されている点です。番組は、こうした動きが、中国で広がる新しい文化消費のあり方を象徴していると伝えています。
「深さ」と「つながり」を求める消費へ
景徳鎮の事例から見えてくるのは、単なる観光土産ではなく、時間と手間のかかったものづくりに価値を見いだし、作り手や土地のストーリーに共感してお金を使う人が増えているという変化です。日本各地の工芸産地が直面している課題とも重なるテーマであり、中国の動きを知ることは、ローカルとグローバルをどう結びつけるかを考える手がかりにもなります。
華学寒:古典庭園の知恵を現代都市へ
番組はさらに、20年にわたり中国古典庭園の再生と創作に取り組んできたデザイナー、華学寒にも焦点を当てます。これまで手がけた作品は70を超え、水と岩を中心に据えた庭園の世界観を、現代の都市空間に取り入れてきました。
華は、古典庭園がもつ「借景」や「余白」といった考え方を活かしながら、密度の高い都市生活の中に静けさと自然とのつながりを取り戻そうとしています。オフィス街や住宅地、公共スペースに庭の要素を組み込むことで、人々が立ち止まり、思考を切り替えるための小さな「間」をつくる試みともいえます。
華の仕事からは、次のようなメッセージが読み取れます。
- 急速に発展する都市だからこそ、伝統的な景観デザインの知恵が生かされること
- ハードとしてのインフラ整備だけでなく、心の余裕を生む空間づくりが重要であること
- 「昔の美」をそのまま再現するのではなく、現代の生活様式に合わせて翻訳し直す姿勢
北京と上海で夢を追う欧州アーティスト
最後に番組は、中国で創作活動を続ける2人の欧州出身アーティストを追います。一人は、北京に暮らすフランス人アーティストのギボグです。彼は、捨てられた電子機器を集め、音を発する彫刻作品へと生まれ変わらせています。その作品には、古代中国の哲学や宇宙観に通じるモチーフが織り込まれており、「テクノロジーの廃棄物」と「古い知恵」が出会う不思議な世界を形づくっています。
もう一人は、上海を拠点に活動するオランダ出身の音楽家、アナスタシア・フリードマンです。彼女は、中国の伝統楽器である二胡とクラシック音楽のバイオリンを組み合わせ、「東洋と西洋」の音を行き来する独自のスタイルを追求しています。その音楽は、特定のジャンルや国境にとらわれず、都市としての上海が持つ開放性や多様性を象徴しているようにも感じられます。
二人の活動から浮かび上がるのは、中国が世界各地のクリエイターにとって、単なる市場ではなく、共に作品をつくり、新しい表現を試す場となりつつある姿です。
日本の読者への問いかけ:4つの視点
武漢のハイテクゾーン、景徳鎮の文化ルネサンス、華学寒の庭園デザイン、欧州アーティストの創作拠点としての北京と上海。番組が描くこれらの物語は、2020年代の中国を理解するうえで、そして日本社会を振り返るうえでも、多くの示唆を与えてくれます。
記事として整理すると、次の4つの視点が見えてきます。
- イノベーションと都市づくり:研究開発から起業までを一体で支えるハイテクゾーンの発想は、日本の地方都市やサイエンスパークにも通じる課題です。
- 伝統産地のアップデート:景徳鎮のように、歴史ある産地を体験型・交流型の場として再構成する流れは、工芸や観光の新しいモデルになり得ます。
- 暮らしの中の景観デザイン:華学寒が示すように、都市のハード整備と同時に、「心を休める余白」をどう組み込むかは、日本の都市計画でも重要なテーマです。
- 国境を超える創造:北京や上海で活躍するアーティストの姿は、アジアの都市が文化的なハブとして機能し始めていることを示しています。
国際ニュースというと政治や経済指標に目が向きがちですが、番組『Meet China』第51回が伝えるような現場のストーリーからは、数字だけでは見えにくい社会の変化や人々の価値観の揺れが浮かび上がります。日々のニュースに追われる中でこそ、こうした「読みやすいのに考えさせられる」物語を、自分の暮らしや仕事と重ねながら受け止めてみたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








