中国雲南の雨林キッチン ブラン族の「森から食卓へ」体験
中国雲南省の景迈山で、ブラン族の若者とともに熱帯雨林を歩きながら、その場で集めた恵みだけで夕食をつくる「森から食卓へ」の一日が、いま注目を集めています。雨林そのものを八百屋兼スーパーのように見立てるこのスタイルは、食と自然の距離を改めて考えさせてくれます。
雨林がそのまま「市場」になる
案内役は、中国のブラン族に属する一人の若い男性です。私たちはその後ろについて、雲南の景迈山に広がる雨林の中へ入っていきます。そこで彼が見ているのは、単なる木々ではなく、食材があふれる一つの大きな市場です。
道の途中で彼は立ち止まり、さっと手を伸ばしてレモングラスを刈り取ります。少し歩けば、倒木の陰からは野生のキノコが顔を出し、木の高いところにはハチの巣が隠れています。私たちが普段なら見過ごしてしまう風景も、彼の目には夕食の材料としてくっきりと映っています。
- 香り高いレモングラス
- 雨林に自生する野生のキノコ
- 木々の間にひっそりとあるハチの巣
こうして、森の中で必要な分だけを集めながら、夜の食卓が少しずつ形になっていきます。
竹虫が「カリカリのごちそう」に変わるまで
日が傾くころ、森の一角でしばらく前まで木の上ではしゃいでいた竹虫たちが、炭火の上で一変します。竹の中で育った虫を取り出し、じっくりと火を通すと、外側はカリカリ、中はほどよく柔らかい一品に仕上がります。彼らにとって、これはれっきとしたごちそうです。
バナナの葉が大きなテーブルクロスのように地面に敷かれると、その上に次々と森の料理が並びます。
- レモンの葉と一緒に蒸し上げた魚
- レモングラスの香りをまとった焼き鳥
- 野生のイノシシをプーアル茶のスープで煮込んだ一皿
- 炭火で焼いた竹虫のカリカリおつまみ
見渡せば、どの料理も雨林のどこかからやってきたものばかりです。スーパーマーケットの包装も、冷蔵庫もありません。あるのは、森と火と、手元の道具だけです。
「野性を食べる」という体験
一口頬張ると、雨林のうまみが一気に舌の上で弾けるように感じられます。香り、歯ざわり、温度、少し癖のある風味。そのすべてが、人工的に整えられた味とは違う方向から、私たちの感覚を揺さぶります。
この夜、私たちが食べているのは単なる料理ではなく、森そのものの野性です。雨林とテーブルの間にほとんど距離がないため、自分が何を、どこから、どのように口にしているのかを、普段よりも鮮明に意識させられます。
都市で暮らしていると、食材はあらかじめ選別され、洗われ、切られ、パックに詰められた状態で店頭に並びます。その便利さに慣れる一方で、私たちは食べ物の出どころや、自然とのつながりを感じにくくなっています。「森から食卓へ」という今回の体験は、そうした感覚を一度リセットしてくれるようです。
2025年の私たちへのヒント
2025年のいま、多くの人がサステナビリティや環境負荷を意識しながら食生活を選ぶようになっています。雲南の雨林でブラン族の若者が見せてくれたのは、最新技術でも高価な設備でもなく、自然とともに生きるごく素朴な知恵でした。
もちろん、都市に暮らす私たちが同じことをそのまま再現するのは現実的ではありません。それでも、次のような小さな実践なら、今日からでも取り入れられそうです。
- 食べ物がどこから来たのか、ラベルや産地表示に目を向けてみる
- 旬の食材を選び、その季節ならではの香りや味わいを意識してみる
- キャンプやハイキングなど、自然の中で火と一緒に食事をする機会をつくる
雨林のバナナの葉の上に並んだ料理を思い出すと、テーブルの上の一皿にも、少し違った意味が見えてくるかもしれません。
「シェアしたくなる」森のテーブル
スマートフォンで写真や動画を撮ることが当たり前になった今、このような「森から食卓へ」の一日は、まさにシェアしたくなる体験です。ただ見た目が映えるだけではなく、その背景にある物語や考え方まで一緒に伝えられるからです。
雲南の雨林でブラン族の若者と囲んだ夕食は、単なる旅の思い出を超えて、私たちが日々の食とどう向き合うかを静かに問いかけています。次に誰かと食事をするとき、あなたならどんな一皿とどんな物語をシェアしたいでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








