雲南・景迈山の屋根に刻まれた民族コード ブラン族とタイ族が描く茶と自然
霧の景迈山に浮かぶ「屋根の民族コード」
霧に包まれた雲南の景迈山には、ひと目で心を奪われる「屋根のアート」があります。ブラン族とタイ族の人びとが施した装飾は、単なる飾りではなく、そのまま民族のコードのように、暮らしや信仰、自然へのまなざしを伝えています。
遠く離れた日本にいても、2025年の今は、画面越しにその世界を想像することができます。屋根という日常の風景に刻まれた物語をたどることは、国や地域をこえて人の営みを感じるひとつの手がかりになります。
景迈山の屋根はなぜ「アート」なのか
景迈山では、家そのものよりも先に、屋根が語りかけてきます。霧の中から浮かび上がる急な勾配の屋根。その稜線や軒先をよく見ると、細かな装飾が連なり、色やかたちの組み合わせが、ひとつの物語を紡いでいるように見えます。
そこに刻まれているのは、「誰がこの土地で暮らしているのか」「何を大切にしているのか」といった、言葉にする前の情報です。まさに「屋根に載った民族コード」。それを読み解く鍵になるのが、ブラン族とタイ族の独特なモチーフです。
ブラン族の「一芽二葉」──茶の香りを宿す軒先
ブラン族の家の軒先には、「一芽二葉(one bud, two leaves)」と呼ばれる装飾が冠のように並びます。茶の山からの贈り物をかたどったこのモチーフは、ちいさな茶の芽がふたつの葉をまとって開いていく瞬間を思わせます。
軒を縁取るその輪郭の一つひとつには、茶の香りへの愛情が隠れています。毎日の暮らしを支える茶の木への感謝、茶畑の斜面を吹き抜ける風の記憶。それらが、屋根というもっとも目立つ場所に、静かに、しかし誇らしげに刻み込まれているのです。
タイ族の牛角──野生の力と共生のカーブ
一方、タイ族の屋根には、牛の角を思わせるオーナメントが載せられています。角のかたちをした飾りは、強さや生命力を象徴しながらも、鋭く突き立つのではなく、やわらかな弧を描いて空へと伸びています。
そのカーブには、荒々しい自然の力と共に生きる智慧がにじみます。力をねじ伏せるのではなく、曲線として受け止め、共存する。その感覚が、牛角の装飾というかたちで屋根に表れ、見る人に「自然とどう向き合うか」という問いを投げかけています。
瓦一枚と文様一つが語る民族の物語
景迈山の民家では、一枚一枚の瓦と文様のひとつひとつが、民族の物語として屋根に刻まれています。遠くから眺めればひと続きの模様に見えますが、近づいてみると、それぞれの家が少しずつ異なる表情を持っていることに気づきます。
屋根のコードから読み取れるのは、例えば次のような要素です。
- 茶の香りや山からの恵みをどれほど大切にしているか
- 野生の力を恐れるだけでなく、共に生きる感覚を持っていること
- 自分たちの暮らしや記憶を、後の世代に伝えたいという静かな意志
言葉にするより前に、屋根が語り続けてきたメッセージ。それが、ブラン族とタイ族の装飾に凝縮されています。
屋根を見上げることから始まる、遠い山との対話
景迈山の屋根に刻まれた民族コードは、私たちに「自分たちの屋根は何を語っているのか」と問いかけてもいます。高層ビルに囲まれた都市に暮らしていても、通勤や通学の途中でふと見上げると、瓦屋根やマンションのバルコニーに、その土地ならではの小さな物語が見つかるかもしれません。
屋根の上のブラン族の一芽二葉と、タイ族の牛角。そこに込められた茶と自然へのまなざしを想像することは、自分の生活圏をあらためて見直すヒントにもなります。遠い山あいの屋根を思い浮かべながら、身近な風景の中にどんなコードが隠れているのか、目を凝らしてみたくなります。
Reference(s):
cgtn.com








