RCEP世界遺産都市連盟、黄山で総会開幕 観光と保全の新たなモデル探る
RCEP世界遺産都市連盟、黄山で総会開幕 観光と保全の新たなモデル探る
2025年も終わりに近づく中、アジア太平洋の世界遺産都市が新しい連携を加速させています。地域包括的経済連携協定に参加する国々の世界遺産都市が集まるRCEP世界遺産都市連盟の2025年総会が、金曜日に中国安徽省黄山市で開幕しました。観光と保全をどう両立させるかという課題に、国境を超えた新しい協力モデルで挑もうとしています。
RCEP世界遺産都市連盟とは何か
今回の会合を主催するRCEP世界遺産都市連盟は、英語名をRegional Comprehensive Economic Partnership World Heritage Cities Allianceとし、略称はRCEP–WHCAです。2025年6月、同じく黄山市で、中国、カンボジア、インドネシア、日本、マレーシア、ベトナムという6つのRCEP加盟国の世界遺産関係者によって立ち上げられました。
ねらいは、RCEP加盟国に点在する世界遺産都市や世界遺産地域をネットワーク化し、次のようなテーマで協力を深めることです。
- 文化遺産・自然遺産の保護と継承
- 持続可能な観光のあり方の研究と実践
- 専門人材の育成と知識・技術の共有
- 地域コミュニティの参加とガバナンスの強化
太平洋アジア観光協会のピーター・セモーン会長は、RCEP–WHCAについて、国境や分野、産業の垣根を越えて知識を交換し、能力を高め、保全と持続可能な観光のための革新的なモデルをつくるための重要なプラットフォームだと強調しました。アジア太平洋の文化的・自然的な遺産が、今後も何世紀にもわたって人々を啓発し、支え続けるための土台にしたいという考えです。
178件の世界遺産が生むチャンスと責任
RCEP加盟国には、合計178件の世界遺産があります。その内訳は、文化遺産が117件、自然遺産が51件、文化と自然の両方の価値を持つ複合遺産が10件です。これらは、世界の中でも文化的・自然的に極めて豊かな地域であることを示す数字だと言えます。
同時に、これらの世界遺産は、単なる観光資源にとどまらず、次のような役割を期待されています。
- 地域の文明交流の拠点として、歴史や文化を共有する場
- 持続可能な観光や関連ビジネスを通じた経済的なエンパワーメントの源泉
- 気候変動や環境保全の取り組みを進める実験場
今回の総会は、6月に発表された黄山イニシアチブをさらに前進させることを目的としています。世界遺産の保護・継承・活用に関して、分野横断型で国際協力を進める枠組みを整え、RCEP地域から新しいモデルを発信しようとしています。
総会では何が議論されたのか
黄山市で開かれている総会では、ユネスコや国連世界観光機関などの国際機関の代表が基調講演を行い、世界遺産保全と観光のグローバルな潮流について共有しました。
さらに、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、中国などの世界遺産管理機関10団体が、それぞれの現場での取り組みを紹介しました。テーマは多岐にわたり、主に次のような分野に焦点が当てられました。
- 遺産の保全・修復と長期的なモニタリング
- 観光客数の管理と環境負荷の軽減
- 地域住民が意思決定に参加するガバナンスの仕組み
- 研究機関や大学との連携による調査・教育活動
こうした事例共有は、各国の都市や遺産管理機関が互いの経験から学び、失敗や成功のパターンを早く把握するための重要な機会となっています。
都市間協定で具体的な連携を加速
今回の総会では、都市・地域同士の具体的な協力協定もいくつか結ばれました。中国安徽省の黄山と、ベトナムのハロン湾、中国四川省の黄龍風景名勝区の間で協力合意が交わされたほか、黄山市の屯渓老街とマレーシアのマラッカ歴史都市の間でも協定が結ばれました。
これらの協定は、次のような分野での連携を意図しています。
- 保全技術や観光マネジメントに関する人材交流と研修
- 世界遺産ブランドを生かした国際的な情報発信と共同プロモーション
- デジタル技術などを活用した来訪者体験の向上と混雑緩和
また、総会全体を通じて、RCEP地域の世界遺産間で技術、資本、人材の流れを活性化させることも重視されました。観光や文化事業を支える企業やサービス機関も参加し、官民連携の可能性が探られています。
国際機関とのパートナーシップも強化
RCEP–WHCAは、国際的な観光・サステナビリティ関連組織とも連携を深めています。今回の総会では、太平洋アジア観光協会やグローバル持続可能な観光協議会との間で、協力覚書が締結されました。
これにより、持続可能な観光の国際基準や評価手法をRCEP地域の世界遺産に取り入れやすくなることが期待されます。観光客の増加が遺産の価値を損なうのではなく、保全の財政基盤を強化し、地域社会の利益にもつながるように設計していくことが大きなテーマです。
開催地・黄山とRCEP加盟国の顔ぶれ
開幕式には、中国共産党黄山市委員会の丁純書記が出席し、黄山市副書記で市長の何毅氏が歓迎のあいさつを行いました。開催地の黄山は、RCEP地域各地の代表を迎え、世界遺産を軸にした国際協力の拠点としての役割を担っています。
総会には、世界遺産管理機関、研究・モニタリング機関、文化・観光サービス企業、国際機関など、多様な組織から約180人の代表が参加しました。参加国は、オーストラリア、ニュージーランド、日本、大韓民国、シンガポールなどを含む15のRCEP加盟国に広がっています。
日本を含むアジアの読者にとっての意味
今回のRCEP–WHCA総会は、日本を含むアジアの読者にとっても、いくつかの重要な問いを投げかけています。
- 世界遺産を訪れるとき、私たちはどこまで地域の歴史や環境への影響を意識しているか
- 観光を地域の短期的な収入源ではなく、長期的な文化・自然の継承につながる仕組みにできるか
- 自治体や企業は、国際的な基準やネットワークをどう活用し、地域独自の価値を発信していくか
RCEP世界遺産都市連盟の動きは、アジア太平洋発のルールづくりと協力の試みとして、今後も注目が集まりそうです。世界遺産を消費するだけの観光から、次の世代に引き継ぐための観光へ。その転換がどこまで実現できるかを見守ることが、日々ニュースを追う私たちにとっての新しい視点になりそうです。
Reference(s):
New alliance to keep world heritage cities pulsing with new exchanges
cgtn.com








