戦国期の絹文書に円形の書き方 宇宙観を映す「工守占」の謎 video poster
最近、米国から返還された紫檀庫絹文書の第三巻『工守占』に、文字が時計回りに円を描くように並ぶ独特の書き方が見つかりました。研究者は、戦国時代の宇宙観を視覚的に表現したものだとみています。
返還された紫檀庫絹文書とは
今回話題になっているのは、最近米国から返還された紫檀庫絹文書の一部です。紫檀庫絹文書は、絹に書かれた古代の文書で、その中の第三巻にあたる『工守占』が新たな注目を集めています。
『工守占』を詳しく調べたところ、一見すると通常の縦書きや横書きとは異なる、文字の向きがバラバラに見える箇所があることが分かりました。当初は書写の誤りや後世の損傷とも考えられましたが、分析が進むにつれ、そこに一貫した「書き方のルール」が潜んでいることが明らかになってきました。
文字が「回転」する独特の書写法
研究によると、『工守占』の書き手は時計回りに円を描くように文字を並べていたとされています。つまり、読み進める方向に合わせて、文字そのものの向きが少しずつ変化していくのです。
同じ巻から見つかった別の断片でも、文字が同じ方向に回転していくパターンが確認されており、偶然ではなく、意図的な書写技法だったと考えられます。
この「時計回りの円形書写」は、次のような特徴を持つと説明されています。
- 文字が一定の方向ではなく、配置に応じて向きを変えている
- 全体として見ると、文字の列が時計回りに回転する軌跡を描いている
- 別の断片でも同じ書き方が見られ、統一したルールに従っているとみられる
こうした特徴から、単なる装飾や偶然の配置ではなく、明確な意図をもって考案された書き方だと受け止められています。
戦国時代の宇宙観を映す「回る文字」
では、なぜ書き手は文字をわざわざ時計回りに回転させたのでしょうか。研究者たちは、この書写法が古代の宇宙観と深く結びついている可能性を指摘しています。
ひとつの見方として、文字の回転運動は、天体の動きや宇宙の循環をなぞる試みだったと考えられています。文字が円を描きながら進んでいくことで、読む行為そのものが宇宙の運行を追体験するような、儀礼的・象徴的な意味を持っていたのかもしれません。
戦国時代は、今からおよそ二千二百年以上前の時代です。その時代の人々がどのように宇宙をイメージし、世界の秩序を理解しようとしていたのか。その一端が、絹に記された「回る文字」という形で残されているとみることができます。
文字は「情報」だけでなく「世界観」も伝える
今回の発見は、文字が単なる情報の器ではなく、世界観や宇宙観を映すメディアでもある、という視点を改めて投げかけています。
現代の私たちは、画面上のテキストを均一なフォントとレイアウトで読むことに慣れています。しかし、『工守占』のように、文字の向きや配置そのものに意味を込める書き方があったとすれば、古代の人々にとっての「読み書き」は、今よりもずっと身体的で、視覚的な体験だったとも想像できます。
円形に回転する文字を通して宇宙の動きを表現するという発想は、現代のデジタルデザインやデータビジュアライゼーションにも通じる部分があります。情報をどう「見せるか」が、どのような世界の捉え方を前提にしているのかを考えるきっかけにもなりそうです。
古代の宇宙観を、現代のまなざしで読み直す
紫檀庫絹文書『工守占』に見られる時計回りの円形書写は、戦国時代の宇宙観が、文字というかたちで視覚的に表現された貴重な例だといえます。
二千年以上前の書き手が、どのような祈りや問いを込めて、この書き方を選んだのか。現代の私たちには分からない部分も多く残されていますが、返還された絹文書の再検討によって、古代の思考や信仰の輪郭が少しずつ浮かび上がりつつあります。
デジタルネイティブ世代にとっても、「文字のデザイン」から古代の宇宙観を読み解くという視点は、歴史を単なる年表としてではなく、「知のインターフェース」の変遷として捉え直すヒントになるはずです。
スマートフォンの画面でニュースを読むいまだからこそ、絹のうえで円を描きながら回る文字に、二千年以上前の想像力を重ね合わせてみる価値がありそうです。
Reference(s):
Circular script in Zidanku Silk Manuscripts reflects ancient cosmology
cgtn.com








