習近平主席、故宮博物院を「中国文明の窓口」に 創立100年で方針示す
創立100周年を迎えた北京の故宮博物院について、中国の習近平国家主席が、愛国心を育てる教育拠点であると同時に、世界が中国文明と中国の人びとを理解するための重要な窓口として位置づける方針を示しました。中国ニュースと国際ニュースを追う読者にとって、中国が自国の歴史と文化をどう発信しようとしているのかを知るうえで注目すべき動きです。
創立100周年の特別展を視察
習近平主席は、北京の故宮博物院で開かれている創立100周年記念の特別展を視察しました。この展覧会は、英語タイトルで『A Century of Stewardship: From the Forbidden City to the Palace Museum』と題され、紫禁城時代から現在の故宮博物院までの歩みをたどる内容になっています。
会場には、約200点(組)の文化財や文書が展示されており、代表的な内容としては次のようなものが含まれます。
- 歴代王朝の名筆による書や絵画の傑作
- 古代の青銅器
- 細工が施された玉(ぎょく)製品
習近平主席は、説明に耳を傾けながら展示品を一つ一つ時間をかけて見て回り、文化財の背景や保存状況などについて担当者に詳細を尋ねたとされています。視察には、中国共産党中央政治局常務委員であり党中央書記処のメンバーでもある蔡奇氏も同行しました。
「中国文明の象徴」としての故宮博物院
習近平主席は故宮博物院を、中国文明を象徴する存在だと評価しました。そのうえで、同館が長年培ってきた優れた伝統を受け継ぐことの重要性を強調しています。
特に、次のような点が強調されました。
- 文化財は人びとのものであり、人びとのために役立てられるべきだという考え方
- 文化財の保護・修復を一層進めること
- 文化財を適切に活用し、その価値をより広く社会に伝えていくこと
ここでいう「活用」とは、単に展示するだけではなく、教育プログラムや研究、国内外の交流などを通じて文化財が持つ歴史的・芸術的な意味を社会に還元していくことを指すと考えられます。
愛国心教育の拠点、世界への「窓」として
習近平主席は、故宮博物院を「愛国心を育てるための主要な教育基地」として位置づけるよう求めました。中国ニュースとして見たとき、これは国内での歴史教育・文化教育をさらに重視する方向性を示すものと言えます。
多くの国で、主要な博物館は自国の歴史を学ぶ場所であり、ナショナル・アイデンティティ(自国への帰属意識)の形成に大きな役割を果たしています。中国においても、故宮博物院が学校教育や市民向けの学習プログラムなどを通じて、歴史認識や文化への誇りを育てる場として期待されていることがうかがえます。
同時に、習近平主席は故宮博物院を「世界が中国文明と中国の人びとをよりよく理解するための重要な窓」とするよう呼びかけました。これは、国際社会に向けて中国文明の魅力や多様性を発信し、相互理解を深める「文化による対話」の拠点としての役割を意識した発言と見ることができます。
整理すると、故宮博物院に期待されている役割は大きく二つの軸に分けられます。
- 国内向け:歴史・文化を通じた愛国心と一体感の醸成
- 国際向け:中国文明を紹介し、世界との相互理解を深める窓口
文化財の「保護」と「活用」をどう両立させるか
習近平主席が強調した「保護」「修復」「活用」という三つのキーワードは、現代の博物館が共通して直面する課題でもあります。貴重な文化財を未来に残すには厳格な保存が欠かせませんが、それだけでは多くの人がその価値に触れる機会が限られてしまいます。
故宮博物院のような大規模な博物館では、例えば次のような取り組みが想定されます。
- 展示替えや特別展を通じた、多様な切り口での歴史紹介
- 講座やワークショップなどの教育プログラム
- デジタル技術を活用したオンライン展示やバーチャル見学
こうした試みは、中国国内の来館者だけでなく、海外から中国文明に関心を持つ人びとがアクセスしやすい環境づくりにもつながります。国際ニュースとしても、文化財のデジタル公開やオンライン発信は、今後注目される分野になりそうです。
100年の歴史が示すもの
故宮博物院の創立は1925年10月10日にさかのぼります。かつて皇帝の居城だった紫禁城が一般公開され、内部に収蔵されていた皇室ゆかりの美術品や工芸品が「博物館のコレクション」として人びとの前に姿を現したことが、博物院の出発点でした。
王朝の権威の象徴だった空間が、公共の文化施設へと姿を変えたことは、中国の近代化や社会の変化とも重なります。創立100年の特別展は、その歩みを振り返るとともに、次の100年に向けて故宮博物院の役割を再定義する場にもなっていると言えるでしょう。
読者への視点:博物館は何を映す鏡か
日本を含む多くの国で、国立博物館や歴史博物館は、自国の歴史と文化をどのように語るかという「ストーリー設計」の場でもあります。今回の習近平主席の発言は、中国が自らの歴史と文明をどう見つめ直し、どう世界と共有しようとしているのかを考える手がかりになります。
ニュースとしてフォローする際には、次のような点に注目してみると、理解が深まりやすくなります。
- どの時代・どの地域の文化が、どのような文脈で紹介されているか
- 国内向けのメッセージと、海外向けの発信がどう両立されているか
- デジタル化や国際共同展示など、新しい試みがどの程度進んでいるか
創立100年という節目に、故宮博物院は「中国文明の象徴」としての存在感を改めて示しつつあります。読者のみなさんにとっても、中国ニュースや国際ニュースを読み解くうえで、博物館という窓から中国を見ることは、一つの有効な視点になりそうです。
身近な人との会話やSNSでこの記事を共有しながら、「自分にとっての文化財」や「博物館の役割」について考えてみるきっかけとしても、今回の動きを捉えてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Xi urges turning Palace Museum into window for Chinese civilization
cgtn.com








