北京から2時間、内モンゴル・ウランチャブの火山草原と星空を歩く video poster
北京から高速鉄道で約2時間。内モンゴル自治区ウランチャブは、多くの都市部の旅行者にとって中国本土の草原への「最初の一歩」となる場所です。草原と都市が隣り合い、火山が育んだ大地の上で、新しい遊牧ライフスタイルが静かにかたちになりつつあります。
北京から2時間、草原の玄関口ウランチャブ
国際ニュースでは、中国本土の大都市が取り上げられることが多いですが、ウランチャブはその手前で景色が一気に切り替わる「境目」のような存在です。高層ビルが並ぶ首都圏から列車で走るうちに、窓の外には低い山並みと草原が広がり、やがて街と草原が溶け合うような風景が見えてきます。
ウランチャブの駅を一歩出ると、舗装された道路の向こう側には放牧地が続き、遠くにはなだらかな火山丘が見えます。通勤服のまま草原に向かう若者や、週末だけこの地を訪れる家族連れなど、都市と草原の距離が物理的にも心理的にも縮まっていることを感じさせます。
火山がつくる草原の「海」
ここで出会うのは、平らな大地がどこまでも続く「草原」だけではありません。ウランチャブ周辺には、古い火山活動によって生まれた丘や台地が点在し、その斜面や麓が青々とした牧草地になっています。その起伏が、波打つような地形となり、地元では一面の草が風に揺れる様子を「草原の海」と呼ぶこともあります。
季節や時間帯によって、この「海」の表情は大きく変わります。
- 日中は、強い日差しの下で草の緑がくっきりと浮かび上がり、遠くの火山丘が島のように見えることがあります。
- 夕暮れには、斜めに差し込む光が草の穂を金色に染め、風に合わせてまるで波のように揺れます。
- 時には、移動する家畜の群れが「草原の海」をゆっくりと横切り、静かな風景にリズムを与えます。
火山と草原が重なり合うこの風景は、写真や動画では伝えきれないスケール感があり、訪れる人の時間感覚をゆっくりとほどいていきます。
火山の上に広がる、満天の星空
ウランチャブがもう一つの顔を見せるのは、日が沈んだ後です。周囲に高い建物やまぶしいネオンが少ない火山草原は、星空観察に適した場所としても知られています。空気が澄んだ夜には、街の光から少し離れるだけで、頭上いっぱいに星の帯が広がります。
火山丘の斜面に腰を下ろすと、地面の冷たさと草の感触が、そのまま宇宙へとつながっているようにも感じられます。星空ファンや天体写真を趣味にする人たちが、望遠鏡やカメラを抱えて集まり、流れ星を待ちながら静かに夜を過ごす姿も見られます。
火山という大地の記憶と、頭上を流れる星々の時間。その両方を同じ場所で感じられることが、ウランチャブの夜空が多くの人を引きつける理由の一つと言えるでしょう。
都市と草原が生む「新しい遊牧」
この地域で注目されるのが、「遊牧」という言葉の意味が少しずつ変わりつつあることです。かつての遊牧は家畜とともに季節ごとに移動する生活でしたが、ウランチャブでは、都市と草原を行き来する人々のライフスタイルに、その精神が受け継がれているように見えます。
平日は都市のオフィスで働きつつ、週末には高速鉄道で草原に戻る人。オンラインで仕事をしながら、一定期間草原の近くに滞在する人。都市のサービスと草原の静けさを両方取り入れた暮らし方が、「新しい遊牧」のひとつのかたちとして試されつつあります。
こうした動きは、単なる観光ブームではなく、自分のペースで働き、生きる場所を柔らかく選び直そうとする流れの一部でもあります。火山草原を舞台にしたウランチャブの試みは、私たち自身の働き方や暮らし方を考え直すヒントにもなりそうです。
火山草原が映す、いまの中国本土
2025年のいま、高速鉄道によって大都市と地方都市の距離は急速に縮まっています。その中で、ウランチャブのような「中間の場所」は、ただ通り過ぎるだけの土地ではなく、新しい価値を生み出す舞台になりつつあります。
草原の「海」と火山の星空、そして都市と草原を結ぶ新しい遊牧ライフ。北京から約2時間のこの場所は、中国本土の変化を、静かながらも雄大なスケールで映し出しています。次にニュースで中国の都市の名前を目にしたとき、その背後にはどんな大地と空が広がっているのか――ウランチャブの風景を思い浮かべながら、少しだけ想像をふくらませてみてもよいかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








