トイデザイナーXu Wen、「サボテンを一鉢どうぞ」で描く若者の生き方
「あまり手をかけなくても、ちゃんと生きている。」そんなサボテンのイメージを、トイデザインの世界に持ち込んだシリーズが、いま静かに注目を集めています。トイデザイナーのXu Wenさんによる最新作「Present You With a Pot of Cactus」は、レジリエンス(しなやかな回復力)と自立した生命力を、ユーモラスなキャラクターとして立ち上げたプロジェクトです。
トイデザイナーXu Wenの新シリーズ「Present You With a Pot of Cactus」
Xu Wenさんは、新シリーズ「Present You With a Pot of Cactus」で、とげのあるサボテンをモチーフにしながらも、鮮やかな色づかいやコミカルな表情を組み合わせています。横目づかいの視線や、少しへの字に曲がった口元など、ささやかな感情の揺れを感じさせる表情が特徴です。
シリーズ全体には、It doesn't need much care to thrive.(あまり世話をしなくても育つ)というコンセプトが通底しています。放っておいても自分のペースで生きていくサボテンの姿に、Xu Wenさんは「自分で立つ生命力」と「必要以上に他者に依存しない強さ」を重ねています。
サボテンで表現する「レジリエンス」と「自立した生命力」
サボテンは過酷な環境でも水分を蓄えながら生きる植物として知られています。そのイメージを借りながら、Xu Wenさんの作品は、次のような現代的なレジリエンス像を描いています。
- とげの存在が示すのは、他者を拒絶する攻撃性ではなく、自分の境界線を守るための穏やかな防御
- カラフルな色彩は、「つらさ」だけでなく、日常のユーモアやささやかな喜びも同時に抱えて生きる姿
- 植木鉢におさまる小さなサイズ感は、部屋の片隅でも静かに居場所をつくる、控えめな存在感
かわいらしさと少し気怠そうな表情が同居するキャラクターは、「完璧ではないけれど、それでも自分らしく生きている」というメッセージを柔らかく伝えています。
若い世代のライフスタイルとなぜ響き合うのか
このサボテンシリーズは、特に若い世代のライフスタイルや価値観と共鳴しているといわれます。背景には、仕事や学び、人間関係の負荷が高まりやすいなかで、「がんばりすぎずに、自分のペースで生きたい」という静かな願いがあります。
「がんばりすぎない」自己肯定感
レジリエンスというと「打たれ強さ」や「タフさ」が強調されがちですが、Xu Wenさんのサボテンは、別のイメージを示しているように見えます。
- 完璧を目指すのではなく、多少の傷やとげを抱えたままでも生きていてよいという感覚
- 常に前向きでなくても、口角が少し下がっている日があっても、それをそのまま認める余白
- 「無理に水やりをしなくても、必要なときに少しだけケアすればいい」という距離感
こうしたニュアンスは、「常にポジティブでいるべきだ」というメッセージに違和感を持つ人たちにとって、ほっとできる観点でもあります。
自立しながら、さりげなく支え合う関係性
「あまり世話をしなくても育つ」サボテンは、他者に手間をかけさせない存在として描かれています。しかし、それは孤立ではなく、互いに自立したうえでそばにいる、新しい距離感の象徴とも受け取れます。
忙しい日々のなかで、常に相手に構うことはできなくても、同じ空間にいるだけで少し安心する。Xu Wenさんのキャラクターは、そんなさりげないつながりの形を、ユーモアを交えて提示しているようです。
「サボテンを一鉢どうぞ」というささやかなエール
英語タイトルにある「Present You With a Pot of Cactus(サボテンを一鉢どうぞ)」というフレーズには、「大げさな励ましではなく、小さな支えを贈る」というニュアンスが込められているように聞こえます。
2025年のいま、多くの人が将来の不確実性や日々のプレッシャーを抱えながら暮らしています。そんな時代に、「たくさん世話をしなくても、あなたはちゃんと生きている」というメッセージを宿したサボテンのキャラクターは、静かなエールとして機能しているのかもしれません。
手のひらサイズのトイから読み解けるのは、「もっとがんばる」ではなく「もう少し、自分にやさしく」という別の選択肢です。サボテンの横目づかいに自分の気持ちを重ねながら、日々のペースを少しだけ整えてみる――そんなきっかけを与えてくれるデザインと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








