元美術教師が岩場へ:北京で見つけたロッククライミングと「恐怖」を超える力 video poster
かつて国際高校で美術を教えていたYan Haobaiさん、通称シャオバイさんは、約1年前に出会ったロッククライミングを通じて「自分は思っていたよりも勇敢だ」と気づいたといいます。北京の自然の岩場に挑む彼女の姿は、2025年のいま、中国で広がるアウトドアブームと、新しい一歩を踏み出す若い世代の心情を象徴しているようです。
アート教師からクライマーへ
Yanさんは、以前は中国北京市の国際高校で美術教師として働いていました。忙しい日々のなかで新しい何かを求め、約1年前にロッククライミングジムの扉を開きます。
最初の約7か月は、ひたすら室内ジムでのトレーニング。ホールドと呼ばれる突起を握り、何度も落ちては登り直す地道な時間が続きました。それでも登るほどに、自分の身体の動きや呼吸、心の揺れに向き合える感覚が楽しくなっていったといいます。
やがてロッククライミングは「趣味」から「生活の一部」へ。仕事や日常のストレスから離れ、自分自身だけに集中できる時間として、欠かせない存在になりました。
北京・Miyun地区Jingling Valleyで味わう高度の世界
次のステップとしてYanさんが向かったのが、北京市のMiyun地区にある景勝地、Jingling Valleyです。切り立った岩壁が連なるこの谷で、彼女はロープを結び、慎重に一手一手を進めていきます。
足場はわずかな突起、風の音だけが響く高度感のある世界。そこでYanさんは、ただ腕力に頼るのではなく、体重移動やバランス、呼吸を意識しながら、静かに岩と対話するように登っていきます。
その集中した動きとしなやかなフォームは、中国で広がりつつあるアウトドア愛好者の「冒険心」を体現しているようです。都市での忙しい暮らしを離れ、自然の中で身体と心をリセットしたいという思いが、ロッククライミングという選択につながっています。
「思っていたより、私は勇敢だった」
クライミングを続けるなかで、Yanさんが気づいたのは、自分の中にあった「勇気」でした。岩壁の途中で手が震えたり、「もう無理かもしれない」と感じたりする瞬間は何度も訪れます。それでも一呼吸おいて次の一手を出したとき、少しずつ恐怖よりも達成感が勝つようになっていったといいます。
彼女はこう語ります。「ロープにぶら下がりながら、ふと気づいたんです。思っていたより、私はずっと勇敢なんだって」。恐怖が消えるわけではありませんが、それと共存しながら、少しずつ自分の限界線を広げていく感覚が、ロッククライミングの魅力になりました。
一歩を踏み出したい人へ──「まずは試してみて」
Yanさんのメッセージは、とてもシンプルです。「最初の一歩を踏み出して、自分を信じてみてほしい。そうすれば、登るという旅そのものを好きになるかもしれません」。
その言葉には、特別な装備や経験がなくても、誰でも「はじめての壁」に挑戦できるという思いが込められています。岩壁でなくても、仕事、学び、転職、引っ越しなど、私たちの日常にはたくさんの「登るべき壁」があります。
例えばこんな小さな一歩から始められます。
- 近所のクライミングジムを見学してみる
- アウトドアやロッククライミングを楽しむコミュニティをオンラインで探してみる
- 「本当はやってみたいこと」をノートに書き出してみる
重要なのは、一度で完璧に登りきることではなく、怖さや不安を抱えたままでも「試してみる」ことだとYanさんは教えてくれます。
「上へ向かう旅」を自分のペースで
北京の谷で岩に向き合う元美術教師の姿は、肩書きや年齢にとらわれず、新しい世界に飛び込む人の一つのモデルケースといえるかもしれません。
誰にとっても、人生には思いがけない「崖」のような局面が訪れます。しかし、それを前に立ちすくむだけでなく、足もとを確かめながら一歩ずつ進んでいくとき、自分の中に眠っていた勇気やしなやかさに気づくことがあります。
Yanさんが愛する「上へ向かう旅」は、ロッククライミングだけの特別な物語ではありません。私たち一人ひとりが、それぞれの場所で続けている日々の挑戦そのものでもあります。今日、あなたが踏み出す小さな一歩が、いつか振り返ったとき、「思っていたよりずっと勇敢だった自分」に気づくきっかけになるかもしれません。
Reference(s):
Climbing beyond fear: Former art teacher's journey on the rocks
cgtn.com








