南京事件を描く中国舞踊劇「Deep in Memory」、パリで上演 video poster
今週末、フランス・パリで中国のダンスドラマ「Deep in Memory」が上演されました。南京事件の生存者や目撃者の物語を描き、戦争の記憶を舞台芸術として問い直す試みです。
パリで上演された中国のダンスドラマ
中国の舞踊劇「Deep in Memory」は、第二次世界大戦中に日本軍が南京を占領した際に起きた南京事件を題材とした作品です。演出は Tong Ruirui さんが務め、現地時間の週末にフランス・パリで上演されました。
物語は、生き残った人びとや、その場に居合わせた証人たちの視点を軸に進みます。セリフではなくダンスと音楽で構成されることで、言語の壁を越えて観客に届く表現になっているといえます。
中心にいるのは作家アイリス・チャン
この中国のダンスドラマは、中国系アメリカ人作家のアイリス・チャンを中心人物に据えています。彼女は、南京事件を扱った著作『The Rape of Nanking: The Forgotten Holocaust of World War II』で知られています。
舞台上の主人公は、この本に登場する主要な歴史上の人物たちと次々に出会い、記憶の断片をつなぎ合わせていきます。物語の中で描かれる人物には、ジョン・ラーベ、ミニー・ヴォートリン、李秀英、東史郎などが含まれます。
こうした構成によって、個々の証言が一本の物語として束ねられ、観客は一つの悲劇的な出来事を、多様な立場から見つめ直すことになります。
ダンスが映し出す「記憶」のかたち
南京事件は、中国の近現代史の中でも特に大きな傷跡を残した出来事です。「Deep in Memory」は、その記憶を、言葉ではなく身体表現で描き出そうとしています。
ダンスは、感情や記憶を直接的に語らないからこそ、観客自身の想像力に訴えかける側面があります。荒々しい動きや静止した時間、群舞とソロが交錯する構成などを通じて、恐怖や喪失だけでなく、希望や連帯の感情も同時に浮かび上がらせます。
なぜ今、ヨーロッパで上演されるのか
パリは、多様な歴史や文化が交差する国際都市です。そこで南京事件を題材にした中国の舞踊劇が上演されることは、アジアの歴史を世界の観客と共有し、戦争と人道の問題をあらためて考えるきっかけになります。
暴力や戦争の記憶をどう語り継ぐのかは、多くの国と地域が抱える共通の課題です。この作品は、特定の国や民族だけの物語としてではなく、市民が戦争によってどのような被害を受けるのかという普遍的な問いを投げかけているといえるでしょう。
沈黙を破る「身体の証言」
言葉にしづらい体験やトラウマをどう共有するのかという問題に対し、「Deep in Memory」はダンスという方法で答えようとしています。舞台上の身体は、観客に直接語りかける「証言」のような役割を果たします。
観客は字幕や翻訳に頼らず、動きと音楽、照明のコントラストなどを通じて物語を読み取ります。そのプロセスそのものが、歴史を一方的に教えられるのではなく、自分の頭で考え直すきっかけになります。
若い世代へのメッセージ
デジタルネイティブ世代にとって、歴史はしばしば遠い存在になりがちです。一方で、映像やパフォーマンスを通じてなら、過去の出来事に感情移入しやすいという側面もあります。
国際都市パリでの上演は、さまざまなバックグラウンドを持つ若い観客に、南京事件というテーマをあらためて提示する場ともなります。もし今後、他の都市でも上演されていけば、歴史を共有する新しい回路が広がっていくかもしれません。
私たちに突きつけられる問い
「Deep in Memory」が描くのは、単なる過去の悲劇ではありません。作品は、現在を生きる私たちに、次のような問いを静かに投げかけているように見えます。
- 歴史の悲劇を忘れずに語り継ぐには、どのような表現が必要なのか
- 他者の苦しみや恐怖を、自分ごととして受け止めるにはどうしたらよいのか
- 芸術は、過去と現在、異なる国や地域をどのようにつないでいけるのか
戦争や対立のニュースが絶えない今だからこそ、歴史を振り返り、市民一人ひとりの視点から平和を考える作品の意義は小さくありません。
あなたなら、このような物語を、どのように次の世代へ手渡していきたいと思いますか。
Reference(s):
cgtn.com








