スロベニアの名手マク・グルギッチ、中国ツアーで語る「民俗の根」と新しいギター音楽 video poster
2026年3月、中国・北京で行われたインタビューで、スロベニア出身のクラシックギタリスト、マク・グルギッチ(Mak Grgic)さんが、自身のアイデンティティと創作の源泉、そして文化をまたぐ対話への手応えを語りました。クラシックギターという“静かな楽器”が、いまどんなふうに新しい物語を引き受けようとしているのか——その輪郭が見えてきます。
民俗音楽は「過去」ではなく、いまの語彙になる
グルギッチさんが強調したのは、スロベニアの民俗的な伝統が、単なるルーツ紹介にとどまらず、現在の音楽言語(フレーズやリズム、響きの選び方)そのものを形づくっている、という点です。
民謡や地域の踊りのリズムは、クラシックの様式のなかに溶け込むと、聴き手に「説明しなくても伝わる身体感」を生むことがあります。伝統が“保存”ではなく“更新”として語られたところに、現代の演奏家ならではの視点がにじみます。
「弾く人」がレパートリーを増やす——新作委嘱と初演へのこだわり
インタビューでは、クラシックギターのレパートリー拡張へのコミットメントも話題になりました。グルギッチさんは新作を委嘱(作曲を依頼)し、初演することを大切にしているといいます。
- クラシックギターは名曲が多い一方で、オーケストラやピアノほど新作が定着しにくい面もあります。
- 演奏家が新作を生み出す流れに関わることで、次の世代が手に取れる作品が増えます。
- “いまの聴衆”の感覚に触れる音がレパートリーに入ると、コンサートの景色も変わります。
作品が増えることは、演奏家の選択肢が増えるだけでなく、聴衆の「クラシックギター観」を広げることにもつながります。
映画音楽の語り口を、クラシックギターでどう描くか
グルギッチさんは、作曲家マイケル・エイベルズ(Michael Abels)との協働にも触れました。エイベルズは映画「ゲット・アウト」で知られる作曲家で、映像の物語を音で支える発想に強みがあります。
クラシックギターは、音量で押し切るよりも、息づかいのようなニュアンスや、和音の“影”を作るのが得意な楽器です。そこに映画的な時間感覚(緊張と解放、間、反復の意味づけ)を掛け合わせることで、ギターの表現領域がさらに拡張されうる——そんな問題意識がうかがえました。
アジアでの演奏、中国の聴衆が見せる「好奇心」
中国ツアーの最中に行われた今回の対話で印象的だったのは、グルギッチさんが中国の聴衆に「好奇心」を感じていると述べた点です。新しい作品や異文化の響きに対して、まず耳を傾けてみようとする空気は、演奏家にとって大きな推進力になります。
また、今後は文化交流をさらに深め、中国の音楽家との協働の可能性にも前向きな姿勢を示しました。コンサートは一度きりの出来事に見えて、実は“次の共作”の種が客席に落ちる場でもあります。今回のツアーは、その種が芽吹く入口になりそうです。
今回のポイント(短く整理)
- スロベニアの民俗伝統は、グルギッチさんの現在の音楽語法を支えている
- 新作委嘱と初演で、クラシックギターのレパートリーを広げようとしている
- マイケル・エイベルズとの協働を通じ、映画的表現とギターの可能性を探っている
- 中国の聴衆の好奇心に触れ、今後の文化交流・共演にも意欲を示した
Reference(s):
Slovenian classical guitarist Mak Grgic on folk roots, new music
cgtn.com








