国際ニュース:元国連幹部が語る「若者こそ持続可能な未来の主役」 video poster
持続可能な開発や気候変動対策を前に進めるうえで、若者の役割があらためて注目されています。国連環境計画(UNEP)の元事務局長エリック・ソルヘイム氏は、中国東部の浙江省杭州市で開かれた生物多様性と持続可能性に関するフォーラムで、若者こそ世界の持続可能性を実現するカギだと強調しました。最近コロンビアで閉幕した国連生物多様性会議(COP16)については進展が十分ではなかったと指摘し、来週アゼルバイジャンで開かれる予定の国連気候変動会議(COP29)に向けて、各国に自然保護と気候行動の加速を呼びかけています。
若者が持続可能な開発の「主役」とされる理由
ソルヘイム氏は、持続可能な開発をめぐる国際議論の中で、若者の役割を中心に据えるべきだと訴えました。その背景には、次のようなポイントがあります。
- これからの数十年を生きる世代として、気候変動や生物多様性の損失の影響を最も長く受けるのは若者であること
- デジタル技術やSNSを自在に使いこなし、アイデアや行動を世界規模で素早く共有できること
- 既存の枠組みにとらわれない発想で、ビジネスや政策、ライフスタイルの変革を生み出す可能性が高いこと
こうした強みを踏まえ、ソルヘイム氏は「若者抜きに持続可能な未来はつくれない」というメッセージを杭州市のフォーラムを通じて発信したとみられます。
杭州のフォーラムで語られた「生物多様性」と「持続可能性」
ソルヘイム氏が登壇したのは、中国東部の浙江省杭州市で開かれた生物多様性と持続可能性に関するフォーラムです。ここでは、自然環境の保全と経済社会の発展をどのように両立させるかが議論されました。
生物多様性は、森や海、湿地などの生態系だけでなく、食料安全保障や健康、雇用にも関わるテーマです。ソルヘイム氏は、自然の豊かさを守ることが、持続可能な開発の土台であると強調しました。そのうえで、政策決定者だけでなく、都市、市民社会、企業、そして若者の参加が不可欠だと呼びかけました。
COP16「進展は不十分」 自然保護への行動加速を要請
フォーラムの場でソルヘイム氏は、最近コロンビアで閉幕した国連生物多様性会議(COP16)を振り返り、「十分な進展がなかった」との見方を示しました。COP16は、各国が生物多様性の損失を食い止め、自然と共生する社会をめざして行動計画を話し合う国連の枠組みです。
しかしソルヘイム氏によれば、自然保護のための取り組みは依然として足りず、各国はさらに踏み込んだ対策を取る必要があります。特に、森林の破壊や生息地の喪失を食い止めること、保護区の整備や管理を進めること、そして資金と技術を最も影響を受けやすい国や地域に届けることが重要だと指摘しました。
自然保護は、気候変動対策とも密接に結びついています。森林や湿地は二酸化炭素を吸収し、気候を安定させる役割を果たしているからです。ソルヘイム氏の発言は、生物多様性と気候変動を切り離して考えるのではなく、一体の課題としてとらえ直す必要性を示しています。
来週のCOP29へ 注目される論点
一方で、国連気候変動会議(COP29)が来週、アゼルバイジャンで開催される予定です。ソルヘイム氏は、COP16での課題を踏まえ、COP29に向けた各国の行動を加速させるべきだと呼びかけています。
こうした国連気候変動会議では、主に次のような論点が話し合われます。
- 温室効果ガス排出削減の目標をどこまで引き上げるか
- すでに起きている異常気象や海面上昇に、各国や地域がどう適応していくか
- 気候変動の影響を強く受ける国々に対し、資金や技術をどのような仕組みで支援するか
COP29は、これらの論点をめぐって各国がどこまで合意できるかが焦点となります。ソルヘイム氏の発言は、単なる数値目標の議論にとどまらず、自然保護と若者の力を組み込んだ実行力のある合意が必要だという問題意識につながっています。
先進国に求められる責任 最貧国の「適応」をどう支えるか
ソルヘイム氏は、中国の国際メディアCGTNの取材に対し、先進国は世界の最も貧しい国々を支援する責任があると述べました。特に、気候変動の影響に適応するための支援を強化すべきだとしています。
世界の最貧国や脆弱な国・地域は、自らの排出量は比較的少ないにもかかわらず、洪水や干ばつ、熱波などの影響をより強く受けています。しかし、インフラ整備や防災、農業の転換などに投じる資金や技術が不足しているのが現状です。
ソルヘイム氏が求める支援には、次のような要素が含まれます。
- 気候変動の影響を和らげるための資金提供や長期的な投資
- 再生可能エネルギーや省エネ技術などの移転・共有
- 防災や気候リスク管理に関する知識や制度づくりの支援
こうした支援は、人道的な観点だけでなく、世界全体の安定につながるという意味でも重要です。先進国がどこまで踏み込んだ約束を示せるかは、COP29の大きな焦点の一つとなりそうです。
日本を含む若い世代にとっての意味
では、日本を含む世界の若い世代にとって、この国際ニュースはどのような意味を持つのでしょうか。ソルヘイム氏のメッセージは、国際交渉の行方をただ見守るのではなく、自分たちの生活や選択を通じて持続可能な未来づくりに関わってほしいという呼びかけとも受け取れます。
個人レベルでできることは、決して小さくありません。
- 国際ニュースや環境問題の情報を、日本語ニュースや公的機関の発信などを通じて継続的に追いかけること
- 移動手段やエネルギー、食生活、消費のスタイルなど、身近な選択を環境に配慮したものへ少しずつ変えていくこと
- 学校や職場、地域コミュニティ、SNSなどで意見を交わし、関心の輪を広げていくこと
- 将来のキャリアの中で、環境や社会課題の解決につながる分野を選択肢の一つとして考えてみること
COP16やCOP29のような国際会議は、世界の方向性を決める重要な場です。しかし、その行方を左右するのは政治リーダーだけではありません。ソルヘイム氏が杭州市のフォーラムで示したように、若者の声と行動が、持続可能な開発と気候変動対策を現実のものにしていく原動力になり得ます。
来週に迫ったCOP29を前に、国際交渉の結果だけでなく、その背景にある価値観や世代間の責任についても、自分なりに考えてみるタイミングと言えそうです。
Reference(s):
Former UN official highlights youth’s role in sustainable development
cgtn.com








