APECが進める気候変動対策とは 再エネとBCG経済モデルのいま
アジア太平洋経済協力会議(APEC)のメンバーが、気候変動という喫緊の課題に対し、再生可能エネルギーやグリーン投資を軸に連携を強めています。環境負荷を減らしつつ持続可能で包摂的な成長をめざす動きは、世界経済の先行きを考えるうえでも重要な流れです。
なぜ今、APECの気候変動対策が注目されるのか
APECのメンバーは、気候変動の深刻化に加え、インフレや格差拡大といった経済課題にも同時に直面しています。こうした中で、環境と経済を両立させる「グリーンで強靱なインフラ」への投資が、地域全体の共通テーマになりつつあります。
APECビジネス諮問委員会(ABAC)の議長ジュリア・トレブランカ氏は、木曜日の発言で次のように強調しました。世界経済は一定の底堅さを保っているものの、APECの経済には「根強いインフレ」「経済格差」「気候に強いインフラへの投資不足」といった課題が残っており、気候変動対策と成長戦略を一体で進める必要があるという指摘です。
APECの気候関連の取り組みは、主に次のような分野に広がっています。
- 再生可能エネルギーの拡大
- 自然災害への強靱性(レジリエンス)向上
- グリーン投資やグリーンボンドを通じた資金動員
データで見るAPECメンバーの前進
過去10年以上、APECメンバーは気候変動対策で一定の成果を積み上げてきました。2021年11月に公表された「APEC地域動向分析(APEC Regional Trends Analysis)」は、その一端を数字で示しています。
森林面積の回復とグリーンボンドの拡大
同分析によると、2008年から2020年にかけて、アジア太平洋地域の森林面積は合計で2,270万ヘクタール増加しました。森林は二酸化炭素を吸収し生物多様性を支える重要なインフラであり、その拡大は温室効果ガス削減に直接つながります。
また、持続可能なプロジェクトを資金面から支えるグリーンボンド(環境関連事業に使途を限定した債券)の発行額は、2020年だけで923億ドルに達しました。市場を通じて気候変動対策に資金を呼び込む仕組みが、APEC地域でも着実に広がっていることを示しています。
2030年までに再エネ比率を倍増へ
APECメンバーは、エネルギーミックス(電源構成)に占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに2倍にするという目標に向けて動いています。これは、化石燃料への依存を減らし、炭素排出量を削減するための中核的な目標です。
具体的な取り組みとしては、風力・太陽光をはじめとする再エネ設備の導入拡大だけでなく、送電網の整備や蓄電技術の導入など、インフラ面の投資も不可欠です。エネルギー安全保障と脱炭素を両立させるうえで、こうした取り組みは企業の投資判断や各国の産業政策にも大きな影響を与えます。
「バイオ・サーキュラー・グリーン(BCG)」経済モデルとは
APECが最近力を入れているキーワードが「バイオ・サーキュラー・グリーン(Bio-Circular-Green:BCG)経済モデル」です。このモデルは、2022年にバンコクで開催されたAPEC Economic Leaders’ Meeting(APEC経済リーダーズ会合)で支持され、地域協力の重要な柱の一つとなりました。
BCG経済モデルは、おおまかに次の3つの要素を組み合わせた考え方です。
- バイオ(Bio):農業やバイオマスなど、生物資源を持続可能な形で活用する
- サーキュラー(Circular):リサイクルやリユースを通じて、資源を循環させ、廃棄物を最小限に抑える
- グリーン(Green):再生可能エネルギーや省エネ技術で環境負荷を下げる
これらに加え、技術とイノベーションを組み合わせることで、「廃棄物を出さない設計」や「資源を最大限に活かすビジネスモデル」を広げていくことが目指されています。BCGモデルは、気候変動対策と経済成長を対立させるのではなく、両立させるための枠組みとして位置づけられています。
持続可能で包摂的な成長に向けた今後の焦点
APECメンバーが進める気候変動対策とグリーン投資は、環境政策であると同時に、成長戦略でもあります。インフレや格差といった課題を抱える中で、「誰も取り残さない形」でエネルギー転換と経済構造の転換を進められるかが、今後の大きなテーマです。
ポイントとなるのは次のような点です。
- 再生可能エネルギーとインフラ投資をどう組み合わせるか
- グリーンボンドなどを通じて、どのように民間資金を呼び込むか
- BCG経済モデルを各メンバーの産業政策にどう反映させるか
気候変動の影響が強まるなか、APEC地域での取り組みは、アジア太平洋だけでなく世界の持続可能な成長の行方にも影響を与えます。私たち一人ひとりにとっても、「どのような経済成長を望むのか」「どんなライフスタイルが持続可能なのか」を考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








