熱帯湿地のメタン急増 気候変動目標に新たなリスク
世界の熱帯湿地から放出されるメタンがこれまで以上に増えているとする研究結果が示されました。国際的な気候目標の達成が一段と難しくなる可能性があり、各国の気候変動対策を見直す必要性が高まっています。
熱帯湿地からのメタンがかつてない水準に
研究によると、地球温暖化により世界の熱帯湿地が温まり、そこから放出されるメタンの量が過去最大規模に達しているとされています。これは、気候システムにとって新たな警告サインといえます。
メタンは二酸化炭素と並ぶ代表的な温室効果ガスで、短期間で強い温暖化効果を持つとされています。そのメタンが自然由来の熱帯湿地から急増していることは、今後の気温上昇を一段と加速させかねない要因です。
「計画にもモデルにも入っていない」排出
今回の研究が特に警戒を促しているのは、この熱帯湿地からのメタン急増分が、多くの国の排出計画に含まれていないという点です。各国が国際社会に提出している排出削減計画は、主に人間活動による排出を対象としており、自然の湿地からのメタン増加は十分に織り込まれていないとされています。
さらに、気候変動を予測するための科学的なモデルにおいても、湿地由来のメタン排出が過小評価されている可能性が指摘されています。つまり、私たちがこれまで「この程度なら抑え込める」と考えてきた気候シナリオよりも、実際の温暖化リスクは大きいかもしれないということです。
なぜ気候目標を一層むずかしくするのか
熱帯湿地からのメタンの多くは、直接的に人間がスイッチを切るように止められる種類の排出ではありません。そのため、自然由来の排出が想定以上に増えるほど、人間活動からの排出削減をいっそう深く行わなければ、同じ気候目標には届かなくなってしまいます。
研究者たちは、この「想定外の増加」により、温室効果ガス全体の排出量をより大きく削減する必要が出てくると見ています。特に、化石燃料と農業分野からの排出削減がこれまで以上に重要になると指摘しています。
化石燃料と農業にかかるプレッシャー
研究によれば、熱帯湿地からのメタン急増は、各国政府に対して以下のような追加的な対応を迫る可能性があります。
- 石炭・石油・天然ガスなど化石燃料の使用削減を、これまでの計画より深い水準まで進めること
- 発電・産業・輸送といったエネルギー多消費分野での脱炭素化を加速すること
- 家畜や稲作など、メタン排出と関わりの深い農業分野での対策を強化すること
自然の湿地からの排出がコントロールしにくいからこそ、人間が直接コントロールできる化石燃料と農業由来の排出を、より大きく減らさざるをえない、という構図です。
国際気候交渉へのインパクト
世界各国は現在も、長期的な気候目標のもとで自国の排出削減計画を更新し続けています。そのなかで、熱帯湿地からのメタン急増という新たなリスクは、次のような論点を国際交渉に投げかけます。
- これまでの排出見通しや気候シナリオが、どこまで現実を反映しているのか
- 自然由来の排出増加を見込んだうえで、どの程度まで人為的排出を追加削減すべきか
- 熱帯湿地が多い地域への支援や協力をどのように位置づけるか
こうした問いは、今後の国際的な気候変動枠組みや各国の国内政策に、静かですが確かな圧力として作用していくと考えられます。
私たちが押さえておきたい3つのポイント
今回の研究から読み取れる、重要なポイントを整理します。
- 熱帯湿地からのメタン排出が急増し、これまで想定されていた以上の温暖化要因になっている可能性があること
- その増加分は、多くの国の排出計画でカウントされておらず、気候モデルでも過小評価されているとみられること
- その結果、化石燃料と農業からの排出削減をより深く行う必要性が高まっていること
気候変動のリスクは、必ずしも人間活動だけから生まれるわけではありません。しかし、人間活動の側でどこまで排出を抑えられるかは、私たちの選択次第です。熱帯湿地からのメタン急増というニュースは、気候目標をめぐる議論を更新し、自分たちの生活や産業のあり方を見直すきっかけになりそうです。
Reference(s):
Methane from tropical wetlands is surging, threatening climate plans
cgtn.com








