COP29国連気候会議、1兆ドル気候資金巡り草案が二分 途上国支援はどこへ
2024年にアゼルバイジャンのバクーで開かれた国連気候変動会議(COP29)では、途上国への気候変動対策資金をどう確保するかを巡って交渉が難航し、会期終盤まで合意のめどが立たない局面が続きました。
会議の終盤、各国交渉団に提示された新たな草案は、年間1兆ドル規模の資金ニーズを認めつつも、具体的な金額の欄はXの記号が置かれたまま空白。しかも、その資金をどう集め、どう拠出するかについて性格の異なる二つの案が並列表記され、先進国と開発途上国の溝の深さを改めて浮き彫りにしました。
行き詰まる国連気候交渉 焦点は「お金」
COP29は、地球温暖化を抑えるための国際ルールを話し合う国連気候変動会議です。その中でも今回、とくに注目が集まったのが、途上国が脱炭素や気候変動の被害対策を進めるための「気候資金」をどう確保するかというテーマでした。
提示された新草案は、各国が合意すべき新たな資金枠組みについての文書です。しかし、草案が公開された段階でも、次のような根本的な論点は解決していませんでした。
- 誰がどの程度の金額を負担するのか(先進国だけか、それ以外の国も含むのか)
- 年間いくら拠出するのかという具体的な規模
- どのような形の資金をカウントするのか(たとえば無償援助か、融資なども含めるのか)
交渉は会期終了まで残り1日という段階でもこうした点で合意に至らず、「時間切れ」を懸念する声も出ていました。
草案が示した「1兆ドル」と空白のX
今回の草案で象徴的だったのが、「年間1兆ドル」という規模感です。二つの案はいずれも、世界全体としてそれに匹敵する規模の資金が必要だという認識を共有していました。
一方で、その1兆ドルを本当に目標額として明記するのか、それともあくまでニーズの目安として位置づけるのかについては、各国の立場が大きく分かれていました。そのため、肝心の金額の箇所にはXという記号だけが置かれ、交渉の行方次第で数字を書き込めるような形になっていたのです。
数字が空白のまま残された草案は、気候資金を巡る政治的な駆け引きの難しさと、各国が抱える財政・国内政治上の制約の厳しさを象徴していると言えます。
最大の争点は「誰が支払うのか」
草案を巡る最大の争点の一つが、「誰がいくら負担するのか」という問題でした。気候変動への歴史的な責任や現在の経済力をどう評価するかによって、各国の主張は大きく異なります。
交渉の場では、富裕国と途上国の間で、次のような視点がぶつかっていました。
- 歴史的排出の責任:長年多くの温室効果ガスを排出してきた国は、より大きな支援をすべきだという考え方
- 現在の支払い能力:現在の経済規模や財政余力に応じて負担すべきだという考え方
- 途上国の開発の権利:まだ貧困やインフラ不足を抱える国に、過度な負担を求めるべきではないという訴え
こうした観点が複雑にからみ合うなかで、誰がどこまで「財布」を開くのかが、最後まで大きなハードルとして残りました。
「両極端の案」しかない? Li Shuo氏の見方
この新しい草案について、中国気候ハブのディレクターで、シンクタンク「Asia Society Policy Institute」に所属するLi Shuo氏は、「新しい資金テキストは、両極端の両端を示しているが、その間があまりない」と指摘しました。
つまり、二つの案はそれぞれ、ある立場に強く寄り添った形になっている一方で、現実的な妥協点となりうる中間案が見えにくいということです。交渉が膠着する背景には、こうした「極端な選択肢」しかテーブルに載っていないという構図もありました。
会議の議長を務めたムフタル・ババエフ氏らは、最後まで各国に歩み寄りを呼びかけましたが、時間の制約もあるなかで、どこまで溝を埋められるのかが注目されました。
なぜ気候資金がそれほど重要なのか
では、なぜここまで「お金」が国連の気候交渉の焦点になるのでしょうか。その背景には、とりわけ開発途上国が直面している現実があります。
- 洪水や干ばつ、猛暑など、気候変動による被害がすでに顕在化している
- 再生可能エネルギーやインフラ整備には巨額の初期投資が必要
- 国内予算だけでは、教育や医療など他の優先課題との両立が難しい
こうした理由から、多くの途上国は「気候変動は自分たちだけでは対処できないグローバルな問題であり、国際的な連帯と支援が不可欠だ」と訴えてきました。気候資金は、その連帯を具体的な形にする試金石でもあります。
行き詰まりが突きつける問い
2024年のCOP29で露わになったのは、単なる金額の多寡だけではなく、「公正さ」をどう定義するかという難しい問いでした。
- 歴史的責任と現在の現実を、私たちはどうバランスよく考えられるのか
- 将来世代の利益と、いま目の前にいる人々の暮らしを、どう両立させるのか
- 国と国との交渉に任せるだけでなく、企業や市民、都市レベルで何ができるのか
気候資金の枠組みを巡る議論は、一見すると遠い国際会議の話に見えるかもしれません。しかし、その帰結は、再生可能エネルギーの普及スピードや、気候災害からの復旧力などを通じて、私たちの日常にもつながっていきます。
2025年を生きる私たちにとっても、COP29での行き詰まりは「世界はどのように連帯し、負担を分かち合うのか」という問いを投げかけ続けています。ニュースを追う際には、金額の大きさだけでなく、その背後にある価値観や公正さへの視点も、あわせて意識してみたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








