オーストラリア研究が警鐘 世界で「年老いた野生動物」が減少
人間の活動が原因で、世界中の野生動物の「お年寄り」が静かに姿を消しつつある――オーストラリアの大学による最新の研究が、そんな現実に警鐘を鳴らしています。2025年の今、野生動物の高齢個体の減少は、国際ニュースとしても見過ごせない環境問題になりつつあります。
オーストラリアの研究が示した「静かな危機」
オーストラリア北部準州のチャールズ・ダーウィン大学(Charles Darwin University、CDU)が金曜日に公表した研究は、陸と海を問わず、野生動物の高齢個体が世界的に減少していると指摘しました。研究によると、その主な背景には人間の活動があり、生息地の喪失や病気、異常気象などの極端な気候イベントの影響をさらに悪化させているといいます。
この国際ニュースは、単なる動物保護の話題にとどまりません。生態系の中で重要な役割を担う「年老いた動物」の減少は、自然環境の安定性や、長期的には私たち人間の暮らしにもつながる問題として受け止める必要があります。
陸上で進む「年老いた動物」の減少
研究チームは、陸上ではとくに、密猟やトロフィーハンティング、捕食者の駆除、娯楽としての狩猟などが、高齢個体の減少に大きく関わっていると分析しました。ライオンやゾウをはじめ、多様な種で高齢の個体が過剰に利用されているケースが報告されています。
研究が指摘する人間の活動は、次のようなものです。
- 密猟:法律で守られている野生動物を、利益や私的な目的で違法に捕獲する行為。
- トロフィーハンティング:狩猟の成果を記念品として残すことを目的に、大型の個体などをねらう狩猟。
- 捕食者の駆除:家畜や農作物を守る目的などで、肉食動物などの捕食者を選んで狩ること。
- レクリエーションとしての狩猟:食料確保だけでなく、娯楽や伝統行事として行われる狩猟。
こうした活動では、多くの場合、体が大きく目立つ高齢の個体が標的になりやすくなります。その結果、群れの中で経験を積んだ個体から先にいなくなってしまうおそれがあります。
海の生態系にも広がる影響
研究は、危機が陸上だけにとどまらないことも示しています。野生の動物は海でも同じように高齢個体が減少しており、その要因として、人間の活動が生息地の喪失や病気、極端な気候イベントの影響を強めていると指摘しました。
ここで言われる「極端な気候イベント」とは、これまでにない規模の異常気象などを指します。短期間に環境条件が大きく変化すると、野生動物のすみかや餌となる生物が一度に失われ、高齢の個体の生存がさらに難しくなる可能性があります。
高齢の野生動物が担う役割
そもそも、なぜ「年老いた動物」の減少が問題なのでしょうか。多くの野生動物の社会では、高齢の個体は、群れを導いたり、食べ物や水場の場所を知っていたりする「知恵袋」のような存在と考えられています。
そうした個体が失われると、若い個体だけの群れが増え、危険を避ける能力や、環境の変化に対応する力が弱まりかねません。長い時間をかけて築かれてきた行動パターンや知識が、世代をまたいで引き継がれにくくなるおそれもあります。
こうした変化は、野生動物の世界だけでなく、人間社会にも間接的な影響を与えます。生態系が不安定になれば、農業や漁業、水資源、観光などにも連鎖的なリスクが広がる可能性があるためです。
私たちに突きつけられた問い
今回の研究は、密猟やトロフィーハンティング、レクリエーションとしての狩猟のあり方を、世界全体で見直す必要があることを示唆しています。同時に、生息地の保全や病気対策、気候変動への対応を一体的に進める重要性も浮かび上がります。
私たち一人ひとりにできる行動は、小さく見えるかもしれません。それでも、野生動物や環境問題について情報を知ること、信頼できる保全活動を支えること、自然環境への負荷を減らす暮らし方を選ぶことなどは、長い目で見れば大きな違いにつながり得ます。
国際ニュースを日本語で読み解くことは、遠く離れた場所で起きている生態系の変化を、自分ごととして考えるきっかけにもなります。世界のどこかで「年老いた野生動物」が減っているという事実を、私たちはどう受け止め、何を選び取っていくのか――その問いが静かに突きつけられています。
Reference(s):
cgtn.com








