カナダの水力発電に異変 極端気象が揺さぶるエネルギー輸出
カナダで水力発電の生産が急減し、米国向けの電力輸出が14年ぶりの低水準に落ち込んでいます。気候変動に伴う干ばつと洪水の激しい揺れが、水力大国のエネルギー戦略を揺さぶっています。
干ばつと洪水の「ジェットコースター」がダムを直撃
カナダでは、気候変動と結びついた極端な気象が水力発電を直撃しています。干ばつと洪水が短い間隔で入れ替わるような状況が続き、発電量は落ち込み、ダムの運用そのものが難しくなっています。
干ばつで貯水量が減ると、水車を回すための水が足りず、発電量は大きく制限されます。一方、豪雨や洪水で一気に水が流れ込めば、設備の安全を優先して放流を増やさざるを得ず、こちらも安定した発電にはつながりにくくなります。
こうした急激な水位の変化は、ダムや関連インフラに設計時には想定していなかった負荷を与え、構造そのものの安全性を脅かしかねないと懸念されています。
水力大国カナダが米国から電力を輸入
カナダは世界有数の水力発電国ですが、そのカナダが電力の輸出を絞らざるを得なくなっています。カナダの統計当局によると、米国向けの電力輸出は現在、過去14年で最も低い水準に落ち込んでいます。
さらに今年に入り、カナダは3カ月連続で米国からエネルギーを輸入する事態となりました。これは8年ぶりのことであり、本来は電力を輸出する立場にあったカナダが、輸入側に回らざるを得なかったことを意味します。
再生可能エネルギーの代表格とされる水力発電であっても、気候変動による極端な気象が続けば、供給が不安定になり、エネルギー収支のバランスが崩れ得ることを、カナダのケースは示しています。
2023年は世界の水力発電にとって「厳しい年」
こうした変化はカナダだけの問題ではありません。国際エネルギー機関(IEA)は、2023年が世界の水力発電量にとって記録的な減少の年になったと指摘しています。
IEAによれば、中国やトルコ、米国など他の主要な水力発電国も打撃を受けました。その背景には、主要な水力発電地域で深刻かつ長期化した干ばつが続いたことがあります。
つまり、気候変動がもたらす極端な気象は、世界の水力発電全体に共通するリスクとして顕在化しつつあるということです。
「クリーン」でも「無敵」ではない水力発電
水力発電は、二酸化炭素排出が少ない再生可能エネルギーとして、これまでエネルギー転換の中核を担ってきました。しかし、その前提には、安定した水の循環が続くという暗黙の期待がありました。
カナダや世界で起きている水力発電量の急減は、その前提が揺らぎつつあることを示しています。気候変動が進む中で、水力発電は次のような課題に直面しています。
- 想定外の干ばつや洪水を踏まえたダム運用と安全対策の強化
- 水力に依存しすぎない、多様な再生可能エネルギーの組み合わせ
- 需給の偏りを補うための、国や地域をまたぐ電力融通の仕組みづくり
水力発電は依然として重要なクリーン電源である一方で、気候リスクに対して決して無敵ではないことが、改めて浮き彫りになっています。
日本の読者への問いかけ
豊かな水資源を持ち、水力発電で世界をリードしてきたカナダでさえ、極端気象の影響で米国から電力を輸入する局面を経験しました。これは、どの国にとっても他人事ではありません。
気候変動で異常気象が常態化しつつある中で、私たちはどのようなエネルギーミックスを目指すべきなのでしょうか。再生可能エネルギーの拡大と同時に、その脆弱性やリスクも織り込んだ議論が求められています。
今回のカナダの水力発電の動きは、エネルギーをどこから、どのような形で調達し、どの程度リスクを分散させるのかという問いを、私たち一人ひとりに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








