ニュージーランドの野生生物に迫る絶滅リスク 気候変動で世界でも特に脆弱と研究
ニュージーランドの野生生物が、気候変動による絶滅の危機に世界でも特にさらされている――。今月上旬に国際的な科学誌Scienceに掲載された研究が、そんな厳しい現実を突きつけました。地球温暖化が進むなか、遠い島国で何が起きようとしているのかを、日本語で整理してみます。
ニュージーランドの生物多様性に「非常に深刻なリスク」
今回の研究は、過去30年にわたる世界中の研究成果を統合して分析したものです。その結果、ニュージーランドの生物は、気候変動による絶滅リスクが最も高い地域の一つだと位置づけられました。
オタゴ大学の古遺伝学研究所の所長であるニック・ローランス氏は、この研究を「印象的であり、非常に身の引き締まる内容だ」と評価し、ニュージーランドの生物多様性は、人間活動が引き起こした気候変動によって「深刻な絶滅の危険」にさらされていると警告しています。
ローランス氏は、次のように危機感を示しました。ニュージーランドは世界から名指しされており、自国が気候の照準の中にあると表現したうえで、「政府はこの現実に耳を傾ける必要がある」と訴えています。
30年分の研究が示す数字 2.7度の温暖化で「20分の1が絶滅リスク」
研究チームは、地球の平均気温が約2.7度上昇した場合を想定し、世界中の生物がどの程度の絶滅リスクに直面するかを推計しました。2.7度という数字は、現在の排出ペースが続いた際に現実味を持ち始めている水準とされています。
分析から示された主なポイントは、次の通りです。
- 地球温暖化が約2.7度進むシナリオでは、世界の種のおよそ20分の1が絶滅の危機に直面すると推定される
- 特に両生類など、一部の分類グループでリスクが集中して高くなる傾向が見られる
- ニュージーランドに生息する多くの種が、世界的に見ても最も脆弱なカテゴリーに含まれる
この数字は、単なる生態学的な統計ではありません。1種が失われるごとに、その種に依存していた生態系のつながりが切れ、連鎖的に他の種や生態サービスにも影響が及ぶ可能性があることを意味します。
なぜニュージーランドの野生生物が特に脆いのか
ニュージーランドは、世界でも特異な生物多様性を持つ地域として知られています。長いあいだ他の大陸から隔絶されてきた島国であることから、この地にしか生息しない固有種が多く存在します。
ローランス氏が「世界的に見ても独自の生物多様性」と表現する背景には、こうした固有の進化の歴史があります。しかし、今回の研究は、その独自性こそが気候変動時代には「弱さ」にもなりうることを示しています。
孤立した島国ゆえのリスク
ニュージーランドの野生生物が気候変動に対して脆弱とされる理由には、次のような構造的な要因があります。
- 島国のため、生息地を大きく移動して気候条件の良い場所へ「逃げる」ことが難しい
- 限られた範囲にしか分布しない固有種が多く、急激な環境変化に対応する余地が小さい
- 人間活動による土地利用の変化と気候変動が重なり、生息地の縮小と質の低下が同時に進行している
人為的な気候変動のスピードは、自然な気候変動に比べてはるかに速いとされています。そのスピードに、数万年かけて進化してきた島の生態系が追いつけない可能性が高い、というのが科学者たちの懸念です。
科学者から政府へのメッセージ「気候の照準の中にいる」
ローランス氏は、ニュージーランドが今回の研究で名指しされ、気候変動による絶滅リスクの「最前線」に立たされていると指摘しました。「ニュージーランドは気候の照準の中にあり、政府は耳を傾けなければならない」との強い言葉は、研究結果を政策に反映させる必要性を訴えるものです。
今回の研究結果から示唆されるのは、次のような方向性です。
- 温室効果ガス排出の削減を加速させ、温暖化の進行を抑えること
- すでに影響を受け始めている生息地や種の保全を強化し、回復を支援すること
- 気候変動の影響を、より精密にモニタリングするための長期的な観測と研究を続けること
こうした取り組みは、単にニュージーランド国内の問題にとどまりません。世界の生物多様性を守るうえで、重要なテストケースにもなり得ます。
1/20の種が消えるかもしれない未来をどう捉えるか
今回の研究は、ニュージーランドの特殊なケースに見えながら、実は世界全体の姿を映し出しています。2.7度の温暖化で20分の1の種が絶滅リスクにさらされるという見通しは、どの地域にも無関係ではありません。
このニュースから、私たちが考えてみたいポイントをまとめると、次のようになります。
- 気候変動は、野生生物の問題であると同時に、人間社会の基盤を支える生態系サービスの問題でもあること
- 遠く離れた島国の危機は、地球規模で生物多様性がどれほど脆いかを示す一つのシグナルであること
- 政府の政策だけでなく、企業や個人の選択もまた、気候変動の進行と生物多様性の行方に影響を与えていること
ニュージーランドの科学者たちが示した危機感は、特定の国だけの話ではなく、21世紀の地球全体が向き合う課題です。2.7度の世界を既定路線とするのか、それともそれ以下に抑え込む道を選ぶのか。今回の研究は、その選択が野生生物の未来だけでなく、私たち自身の未来を左右するというメッセージを投げかけています。
Reference(s):
New Zealand wildlife highly vulnerable to climate-driven extinction
cgtn.com








