モザンビーク北部のサイクロン「チド」死者120人に
2024年12月にモザンビーク北部を襲った強い熱帯サイクロン「チド」による死者が120人に達し、負傷者868人、影響を受けた人は68万人以上に上っていたことが、モザンビーク国家防災機関の発表で明らかになりました。教育や医療インフラへの打撃が大きく、気候変動時代の「社会インフラの脆弱さ」があらためて浮き彫りになっています。
サイクロン「チド」が直撃した地域と被害の全体像
サイクロン「チド」は、12月5日にインド洋南西部で発生した強い熱帯サイクロンで、その後フランスの海外領土マヨット島を襲い、15日にモザンビーク北部に上陸しました。モザンビーク国家防災リスク管理・削減機構(INGD)によると、特にカーボ・デルガード州、ナンプラ州、ニアサ州など北部の州が、豪雨や暴風、洪水による深刻な被害を受けました。
最新の集計によれば、被害の規模は次のように伝えられています。
- 死者:120人
- 負傷者:868人
- 影響を受けた人:68万人以上
数字だけを見ても被害の大きさが分かりますが、これはあくまで人命に関わる部分に限ったものであり、生活基盤や社会インフラへのダメージはさらに広範囲に及んでいます。
住まい・学校・病院…壊れた「日常」
INGDのまとめによると、サイクロン「チド」によって多くの建物やインフラが破壊されました。
- 住居:15万戸以上が全壊または一部損壊
- 学校:250校が被害を受け、約11万人の生徒に影響
- 公共施設:89棟の公共建物が損壊
- 医療施設:52施設が被害
家を失った人々だけでなく、学校に通えなくなった子どもたち、医療サービスにアクセスしづらくなった人々など、「日常生活」そのものが大きく揺らぎました。教育や医療といった基礎的なサービスが止まることは、短期的な不便にとどまらず、地域社会の将来に長く影を落とす可能性があります。
避難生活と緊急対応:足りない「安全な場所」
モザンビーク政府は、家を失うなどして行き場を失った人々に対応するため、緊急避難シェルターを2か所設置しました。そこには1,349人が身を寄せているとされています。
一方で、被災者は68万人以上に上り、そのうちどれだけの人が公的な避難施設に入れているのかを考えると、安全な場所や支援の手が十分に行き届いているとは言い難い現実も見えてきます。避難生活が長期化すれば、衛生状態やメンタルヘルス(心の健康)への影響も懸念されます。
教育・医療インフラへの打撃と「気候変動時代」の課題
INGDは、SNSへの投稿でサイクロン「チド」が教育と医療に大きな影響を与えたことを強調しました。その中で同機構は、サイクロンが「社会インフラが気候変動に対していかに脆弱か、そして将来の影響を和らげるための強靱な計画がいかに必要かを、あらためて浮き彫りにした」と指摘しています。
学校や病院、公共建物が被害を受けると、復旧には時間もお金もかかります。特に、
- 授業の再開までにどれだけ時間がかかるのか
- 妊婦や慢性疾患を抱える人が医療を受けられるのか
- 被災地の行政サービスがどこまで機能を維持できるのか
といった点は、その後の地域社会の回復力(レジリエンス)を左右します。こうした視点から見ても、今回のサイクロン被害は、単なる「自然災害」ではなく、社会システム全体の弱点を映し出す出来事だと言えます。
インド洋のサイクロンと気候変動をどう捉えるか
INGDが言及したように、サイクロン「チド」の被害は、気候変動と社会インフラの脆弱さをめぐる議論とも深く結びついています。極端な気象現象が頻発しやすくなると指摘される中で、沿岸部の国や地域は、より強い風雨や海面上昇のリスクにさらされています。
その中で問われているのは、
- 学校や病院、住宅をどのような基準で建てるのか
- 被害を想定した避難計画や早期警戒システムをどう整えるのか
- 限られた財政資源の中で、どこから優先的に投資するのか
といった「事前の備え」をめぐる選択です。これはモザンビークだけでなく、多くの国と地域に共通する課題でもあります。
私たちにとっての「遠くて近い」ニュース
日本から見ると、モザンビーク北部やマヨット島は地理的には遠い場所です。しかし、気候変動のリスクが高まるなかで、
- 災害で最初に打撃を受けるのは、教育や医療など、生活の基盤そのもの
- 一度壊れたインフラの復旧には、長い時間と継続的な支援が必要
- 「弱いところ」から影響が顕在化するという意味で、どの国も例外ではない
という点は、日本社会にとっても他人事ではありません。モザンビークで起きたことは、気候危機の時代に、私たちがどのような社会インフラをつくり、守っていくのかを考えるヒントにもなります。
サイクロン「チド」で犠牲になった人々と、その後も続く生活再建の過程を想像しながら、ニュースの向こう側にある生活と未来について、少し立ち止まって考えてみたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








