中国の科学者が寄生植物ストライガに強いソルガムの鍵遺伝子を特定
中国本土の研究チームが、穀物ソルガムを寄生植物ストライガから守る鍵となる2つの遺伝子を特定しました。AIを用いてストリゴラクトン輸送体の重要なアミノ酸部位を予測したこの研究は、今後さまざまな作物で寄生植物への抵抗性を高める新しいアプローチとして注目されています。
ソルガムがストライガに強い理由となる2つの遺伝子
今回明らかになったのは、ソルガムという穀物が寄生植物ストライガに対して強い抵抗性を示す際に、中心的な役割を果たしている2つの遺伝子です。研究チームは、この2つの遺伝子がストライガの寄生に関わる仕組みを左右していると示しました。
ストライガは他の植物の根に寄生して養分を奪うことで、大きな収量減を引き起こすことで知られています。ソルガムは一部の品種でストライガに対する強い抵抗性を示しますが、その遺伝的な仕組みの全体像は十分わかっていませんでした。
ストリゴラクトン輸送体とAI解析が示した手がかり
研究の重要なポイントは、ストリゴラクトンと呼ばれる物質を運ぶたんぱく質、いわゆるストリゴラクトン輸送体に注目したことです。ストリゴラクトンは植物の成長や根の分枝などに関わるシグナル分子であり、寄生植物との相互作用にも深く関与しているとされています。
今回の研究では、AIを活用してストリゴラクトン輸送体に含まれるアミノ酸の中から、機能にとって特に重要となる部位を予測しました。その結果、ソルガムのストライガ抵抗性と強く結びついたアミノ酸の位置が特定され、2つの鍵となる遺伝子の働きと関連づけることに成功したとされています。
AIによる予測と実験データを組み合わせることで、従来よりも効率的に候補遺伝子や重要部位を絞り込めることを示した点も、この研究の大きな成果といえます。
寄生植物ストライガとは何か
ストライガは、農業生産に大きな影響を与える寄生植物の一種です。農地に広がると、トウモロコシやソルガムなどの根に寄生して養分を吸い取り、農家に深刻な損失をもたらします。
寄生植物対策は、除草剤や輪作といった農業慣行だけでは限界があり、長期的には作物側の抵抗性を高める遺伝子レベルの対策が重要とされています。今回のソルガムに関する発見は、こうした遺伝子を利用した対策の一歩となる可能性があります。
他の作物への応用と食料安全保障への意味
研究チームは、今回の成果がソルガムにとどまらず、他の作物の寄生植物抵抗性を高めるうえでも応用可能だとしています。ストリゴラクトン輸送体における重要なアミノ酸部位が分かれば、
- 抵抗性の高い品種を効率よく選抜する
- 品種改良の標的として、同様の遺伝子やたんぱく質を探す
- 寄生植物が寄生しにくい作物設計の指針を得る
といったアプローチが現実味を帯びてきます。
寄生植物による収量減を抑えられれば、同じ面積でも安定して穀物を生産できるようになります。食料需要が増え続ける中で、こうした研究は世界の食料安全保障を支える基盤技術の一つになり得ます。
Cellに掲載、中国科学院を中心とする共同研究
この研究成果は、国際的な生命科学誌である Cell に掲載されました。研究を主導したのは、中国科学院の Institute of Genetics and Developmental Biology(遺伝学・発育生物学研究所)に所属する Xie Qi 教授のチームです。
同研究は、この研究所に加えて、さらに5つの研究機関との共同で進められました。複数の機関が連携し、遺伝学、分子生物学、AI解析といった異なる分野を組み合わせることで、寄生植物という複雑な問題に多角的に挑んだかたちです。
AIと農業研究のこれから
今回の成果は、AIが単にデータを整理する道具ではなく、遺伝子やたんぱく質の重要な部位を予測し、新しい仮説を生み出すツールとして機能し始めていることを示しています。
今後、同様の手法が他の作物や病害・環境ストレスの研究にも広がれば、
- 新しい抵抗性品種の開発スピードの加速
- 従来見逃されてきた遺伝子やたんぱく質の発見
- 地域ごとの環境条件に合わせたきめ細かな品種設計
といった可能性が期待されます。
寄生植物ストライガに対するソルガムの抵抗性をめぐる今回の発見は、農業とAIが交わる最前線の一例として、今後の国際的な農業研究の方向性を考える上でも重要なニュースといえます。
Reference(s):
cgtn.com








