南大洋の「世界一きれいな空気」を調査 豪研究船が人間活動の影響を解析
2025年4月末から5月中旬にかけて、オーストラリアの国立科学機関CSIROの研究チームが南大洋へ向かい、世界で最もきれいな空気に人間活動がどのような影響を与えているのかを調べました。本記事では、この国際ニュースのポイントを、日本語で分かりやすく整理します。
南大洋へ「世界一きれいな空気」を追う航海
研究航海は、CSIROが運航する研究船インベスティゲーター号で行われました。船は2025年4月29日にタスマニア州の州都ホバートを出港し、5月18日に帰港するまでの約3週間、南大洋を航行しました。
航海の目的は、タスマニア北西沖およそ1500キロにわたって大気を観測し、1976年から運用されているタスマニアのケナヌーク/ケープ・グリム基準大気汚染観測所のデータと比較することです。この観測所は、陸地の影響をほとんど受けないベースラインの空気、つまり世界でも屈指のきれいな空気を測定する拠点として知られています。
なぜ南大洋とタスマニアなのか
CSIROの大気科学者ルヒ・ハンフリーズ氏は、南大洋の重要性を次のように説明しています。南大洋は、世界の二酸化炭素と熱の多くを吸収しており、そこで起きる変化は、私たちの天気や気候に大きな影響を与えます。
特に南半球は、大規模な工業地帯が広がる北半球と比べると人間活動の直接的な影響が小さいと考えられてきました。そのため、タスマニア沖のような場所でほぼ自然のままの空気を丁寧に測ることで、人間活動による変化をよりはっきりととらえられると期待されています。
何をどう測定したのか
今回の研究チームは、次のような項目を高度な観測機器で測定しました。
- 微量ガス:二酸化炭素など、ごくわずかな濃度で存在する気体
- エアロゾル:大気中を浮遊する微小な粒子。煙や海塩、砂ぼこりなどが含まれる
- 雲の微物理:雲をつくる小さな水滴や氷の粒の性質や変化
- 太陽放射:太陽から地球に届くエネルギー
ハンフリーズ氏によれば、とくに注目しているのは、人間活動が生み出す影響です。具体的には、森林火災(ブッシュファイア)の煙や温室効果ガスの排出が、エアロゾルや雲の形成にどう関わり、それが南半球の気候パターンにどう影響しているのかを詳しく調べることを目指しました。
北半球中心の気候科学に南半球の視点を
今回の航海には、メルボルン大学のロビン・スコフィールド准教授も参加しました。スコフィールド氏は、現在の気候研究の多くが北半球の条件に偏っている点を指摘し、南半球のデータを充実させることの重要性を強調しています。
南半球は海が多く、大気や雲の振る舞いも北半球とは異なります。そのため、南大洋で得られた詳細なデータは、南半球の天気予報や季節予報、長期的な気候予測の精度を高めるうえで重要な役割を果たすと期待されています。
世界的な大気監視ネットワークの一部として
研究船インベスティゲーター号とケナヌーク/ケープ・グリム観測所は、世界気象機関(WMO)が運営する地球大気監視ネットワークの一部として位置づけられています。世界各地の観測点で集められたデータは、地球規模での大気の変化を追跡するために使われています。
そのなかでも、南大洋とタスマニア周辺のデータは、汚染の少ない空気を基準として、他の地域の変化を読み解くための重要なものさしとなります。
私たちにとっての意味は何か
今回の南大洋での観測は、次の点で私たちの暮らしともつながっています。
- 気候変動の仕組みをより正確に理解することで、将来の気温や降水パターンの見通しが立てやすくなる
- 森林火災の煙など、人間活動が大気に与える影響を定量的に把握できる
- 南半球のデータが充実することで、世界全体を視野に入れたバランスのよい気候モデルづくりにつながる
2025年現在、極端な気象現象や気候変動への関心が高まるなか、南半球のきれいな空気をていねいに調べる今回のような研究は、地球規模での気候対策を考えるための重要な一歩と言えます。
Reference(s):
Scientists launch voyage to study human impact on cleanest air
cgtn.com








