第3回国連海洋会議が採択したナイス・オーシャン行動計画とは
フランス・ニースで第3回国連海洋会議が閉幕
今年6月9日から13日にかけて、フランス南東部の都市ニースで第3回国連海洋会議(UN Ocean Conference、UNOC)が開かれました。フランスとコスタリカが共催したこの会議の締めくくりとして、新たな「ナイス・オーシャン行動計画」が発表され、海洋保護に向けた各国の政治的なコミットメントが改めて示されました。
「ナイス・オーシャン行動計画」の中身
ナイス・オーシャン行動計画は、政治宣言と各国・関係機関による自主的な取り組み(ボランタリー・コミットメント)から構成されています。政治宣言のタイトルは、英語で Our Ocean, Our Future: United for Urgent Action(「私たちの海、私たちの未来:緊急行動のために団結して」の意)です。
宣言は、次のような具体的な方向性を打ち出しています。
- 海洋保護区を拡大し、生物多様性の損失を食い止めること
- 海運(海上輸送)の脱炭素を進め、温室効果ガス排出を大幅に減らすこと
- プラスチックごみなどの海洋汚染と闘い、汚染源対策を強化すること
- 気候変動や海面上昇の影響を受けやすい沿岸・島しょの国や地域への資金支援を拡大すること
海洋保護区の拡大
生物多様性を守るうえで、海洋保護区の拡大は重要なテーマです。保護区を増やし、漁業や資源開発の圧力をコントロールすることで、生態系の回復力(レジリエンス)を高める狙いがあります。
海運の脱炭素
世界の貿易の多くは船で運ばれており、海運が排出する温室効果ガスも無視できません。船舶燃料の転換や省エネ技術の導入などを通じ、海運の脱炭素化を加速することが行動計画の柱の一つになっています。
海洋汚染との闘い
プラスチックごみや化学物質、排水などによる海洋汚染は、海の生き物だけでなく、人間の健康にも影響します。宣言は、汚染の発生源対策や廃棄物管理の改善などを通じて、海洋汚染を減らすための取り組みを強化する必要性を指摘しています。
脆弱な沿岸・島しょ国への支援
海面上昇や大型台風、高潮などのリスクが高い沿岸や島しょの国や地域は、気候変動の最前線に立たされています。ナイス・オーシャン行動計画は、こうした国や地域に対する資金支援を動員し、インフラ整備や防災、適応策を後押しすることを重視しています。
公海の生物多様性を守るBBNJ協定が前進
今回の国連海洋会議で中心的なテーマとなったのが、2023年に採択された「国家管轄権外区域における海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する協定」、いわゆるBBNJ協定です。
BBNJ協定は、各国の排他的経済水域の外側に広がる「公海」の生物多様性をどう守り、どう利用していくかを定める新しいルール作りを目指したものです。海はつながっているため、公海で何が起きるかは、各国の海域や沿岸の暮らしにも直結します。
ニースでの会議期間中に、新たに19カ国がBBNJ協定を批准しました。協定が効力を発生させるには、あと10カ国の批准が必要とされており、発効に向けた動きが一段と現実味を帯びてきた形です。
なぜ今、「海」が国際ニュースになるのか
気候変動、生物多様性の危機、エネルギー・食料安全保障——こうした地球規模の課題の多くに、海が深く関わっています。今回の国連海洋会議は、海を守ることが単なる環境保護ではなく、経済や安全保障、人々の暮らし全体とつながっていることを改めて示しました。
海洋問題が国際ニュースとして重みを増している背景には、次のような要素があります。
- 海洋資源や航路をめぐる利害が複雑化していること
- 極端な気象や海面上昇など、気候変動の影響が沿岸地域で顕在化していること
- プラスチックごみなど、私たちの日常生活とも直結する課題が多いこと
日本やアジアにとっても、海は貿易、エネルギー供給、食文化のいずれにおいても不可欠な存在です。国際的な海洋ルール作りや資金支援の議論は、遠い世界の話ではなく、身近な生活や将来のリスクにもつながっています。
次回は2028年、韓国とチリが共催へ
第3回国連海洋会議は、各国首脳や政策決定者、研究者、市民社会、企業の代表など、多様なステークホルダーが一堂に会し、海洋ガバナンスと持続可能な開発について議論を深める場となりました。
次回の国連海洋会議は、2028年に韓国とチリが共催する予定です。それまでの3年間で、今回のナイス・オーシャン行動計画やBBNJ協定の内容がどこまで具体的な行動に落とし込まれるかが、大きな焦点になります。
今後、注目したいポイントとしては、例えば次のようなものが挙げられます。
- BBNJ協定の批准国が増え、協定が実際に発効するかどうか
- 各国の海洋保護区がどこまで拡大し、運用がどのように改善されるか
- 海運の脱炭素に向けて、どの程度の具体的な対策や投資が進むか
- 沿岸・島しょ国への資金支援が、どのような形で現場の防災や適応策につながるか
海は、地図の端にある青いスペースではなく、私たちの暮らしと未来を支えるインフラです。ニースで合意された行動計画が、どこまで実行されるのか。2028年の次回会議に向けて、その進捗を継続的にフォローしていくことが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








