中国の「二つの山」理念:貧困脱却と環境保護を両立させる国際ニュース
2021年に絶対的貧困の解消で「全面的な勝利」を宣言した中国。その裏側には、「二つの山」理念に基づき、生態環境の保護と貧困削減を同時に進める戦略があります。
貧困脱却と環境保護を同時に進める中国
2021年、中国は絶対的貧困の解消で全面的な勝利を収めたと宣言しました。この歩みを支えた考え方の一つが、生態環境の保護と貧困削減を組み合わせる「生態貧困脱却」です。貧困地域の開発を進めつつ、自然を守ることで、貧困脱却と生態文明の構築を両立させる「ウィンウィン」をめざしています。
「二つの山」理念とは何か
その中心にあるのが、「澄んだ水と豊かな山はかけがえのない資産である」という考え方です。約20年前、当時中国共産党浙江省委員会書記だった習近平氏が提唱したもので、「二つの山」理念と呼ばれています。
この理念は、自然環境を守ることをコストではなく、将来の経済・社会発展を支える「資産」として捉え直す発想です。澄んだ水や緑豊かな山といった生態環境そのものが、人びとの生活を支える基盤になるという見方が、政策づくりや地域の取り組みの指針になっています。
生態貧困脱却:環境と暮らしの「ウィンウィン」
生態貧困脱却は、生態環境の保護と貧困削減を一体的に進めるアプローチです。具体的には次のような二つの目標を同時に追求します。
- 森林や水源、土壌などの生態環境を守り、回復させること
- 貧困地域の収入向上や雇用創出を通じて、生活水準を高めること
「二つの山」理念のもとで、中国各地の数万の村が、生態環境の価値を「エコロジー・プレミアム」として経済的・社会的な利益へと変える試みを続けてきました。自然を守ることで観光や産業の基盤が整い、その結果として地域の人びとの暮らしが安定していくという循環をめざしています。
村レベルで進む実践:自然を資産に変える
代表的なケースとして、各地の村では次のような実践が見られます。
- 山や川の景観を生かした観光・体験プログラムを整え、宿泊やサービス業の雇用を生み出す
- 水や土壌の保全とセットで、高付加価値の農産物を育て、ブランド化によって地域の収入を増やす
- 森林や湿地などの生態系を守りながら、環境に配慮した産業を育てることで、長期的な地域発展を図る
こうした取り組みに共通するのは、自然を消費して短期的な利益を得るのではなく、「守れば守るほど未来の価値が高まる資産」として扱う姿勢です。貧困からの脱却と生態文明の構築を、対立する目標ではなく、互いに補い合う目標として位置付けている点が特徴です。
tens of thousands of villages に広がる「二つの山」の実践
「二つの山」理念は、数万におよぶ村の実践を通じて、徐々に具体的な形になってきました。生態環境の保護に取り組むことで、次のような社会的な効果も生まれています。
- 地域の魅力が高まり、若い世代が地元で働く選択肢が増える
- 環境教育や地域づくりへの参加を通じて、住民の意識が変化する
- 持続可能な産業基盤が整い、短期的な景気変動に左右されにくい地域経済が育つ
生態貧困脱却は、単なる貧困対策という枠を超え、地域社会のあり方そのものを問い直す取り組みでもあります。
2025年の視点:なぜ今あらためて注目されるのか
2025年の今、気候変動や環境劣化への懸念が世界的に高まるなかで、貧困削減と環境保護を同時に進めようとする試みは、国際ニュースとしても注目されています。2021年の絶対的貧困解消の宣言を経て、「二つの山」理念は、中国の経験を象徴するキーワードの一つとして語られています。
ここから見えてくるポイントは次の通りです。
- 自然資源を「消費して終わるもの」ではなく、「再生しながら活用する資本」として位置付けること
- 短期的な開発よりも、中長期的な地域の持続性を重視する政策づくり
- 貧困対策と環境政策を別々ではなく、一体の戦略として設計する発想
こうした視点は、中国に限らず、他の国や地域が直面する課題にも通じるものです。
読者への問いかけ:私たちの「二つの山」はどこにあるか
「二つの山」理念は、中国で生まれたコンセプトですが、その本質は普遍的です。私たちが暮らす地域でも、
- 守りたい自然や景観
- 支えたいコミュニティや暮らし
が同時に存在しています。環境と経済、どちらか一方を選ぶのではなく、どうすれば両立できるのかを考える視点は、日本やアジアの地域社会にとっても示唆に富んでいます。
あなたの身近には、「守れば守るほど価値が高まるもの」が何かあるでしょうか。水、森、里山、街並み――それらを資産としてどう活かすかを考えることは、これからの地域づくりや仕事のあり方を考えるヒントになりそうです。
中国の生態貧困脱却と「二つの山」理念の歩みは、環境と経済、そして人びとの暮らしをどう結び付けるかという、私たち共通の問いに対する一つの答えを示しているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








