中国・雲南の古茶樹とブラン族の「焙煎茶」文化とは video poster
中国南西部の雲南にある景迈山(Jingmai Mountain)は、高度1,400メートルの原生林におよそ300万本もの古茶樹が広がる、世界でも珍しい「森の茶畑」です。約2,000年にわたって森と村が共に育ってきたこの土地では、ブランの人びとが古茶樹を守りながら、独自の「焙煎茶」文化を育んできました。
森と村がともに育つ、景迈山の古茶樹
景迈山の特徴は、整然と区画された茶畑ではなく、原生林の中に茶樹が息づいていることです。茶樹は森の木々と混ざり合い、村はその合間に溶け込むように広がっています。
- 標高およそ1,400メートルの涼しい山地
- 原生林の中に点在する村と茶畑
- 約300万本におよぶ古茶樹が自生
森を切り開いて茶畑を作るのではなく、森と共存しながら茶を育てる——この発想が、約2,000年という時間スケールで続いてきた点に、景迈山の茶文化の奥深さがあります。
ブランの人びとが受け継ぐ「焙煎茶」
この古茶樹の森を守ってきたのが、ブランの人びとです。彼らの日常には、古茶樹の葉を使った「焙煎茶」という独自の飲み方が深く根づいています。
焙煎茶の特徴は、機械ではなく人の手と火を使うことです。森の暮らしと結びついた、きわめて身体的で、五感を使うお茶の淹れ方だと言えます。
火と手仕事でつくる一杯
焙煎茶は、おおまかに次のような流れでつくられます。
- 古茶樹から摘んだ茶葉を用意する
- 家や集会の場にある囲炉裏やかまどに火を起こす
- 茶葉を直接、あるいは器を介して火で手焙りする
- 焙煎した茶葉を湯に浸し、香りと味わいを引き出す
- 原生林の影や家の中で、ゆっくりと味わいながら飲む
「焙煎茶」は、単なる飲み物というより、日々の暮らしのリズムをつくる行為です。火を囲み、茶葉の香りが立ちのぼる時間そのものが、人びとのつながりを育てます。
儀式としての茶——森の「精神」を守る
ブランの人びとにとって、焙煎茶は単なる調理法ではありません。古茶樹の森の「精神」を守るための、静かな儀式でもあります。
火で茶葉を焙り、湯を注ぎ、一口ずつ味わう。その一連の動作を通して、彼らは古茶樹の存在を日々の生活の中で確かめています。森の恵みを「当たり前」として消費するのではなく、感謝と敬意を込めていただく。その姿勢が、結果として森と古茶樹を守る力になっていると見ることもできます。
この意味で、焙煎茶は「文化を動かす装置」です。一杯のお茶が、世代を超えて受け継がれる価値観や生活様式を支え、村全体のあり方を形づくっています。
2025年の私たちが学べること
デジタル機器に囲まれた私たちの生活から見ると、景迈山の古茶樹と焙煎茶の文化は、とても遠くの世界の話に思えるかもしれません。しかし、そこから学べるヒントも少なくありません。
- スローダウンする時間:火を起こし、茶葉を焙り、一杯を味わうまでのプロセスには、あえて時間をかける豊かさがあります。
- 自然と暮らしの一体感:森を守ることと、おいしいお茶を楽しむことが同じ方向を向いている点は、環境と経済の両立を考えるうえで示唆的です。
- 「儀式」が生むつながり:日常の中に小さな儀式を持つことで、人と人、人と自然の関係が丁寧に保たれていきます。
2025年の今、世界のニュースや国際情勢に目を向ける日本の読者にとっても、景迈山の茶文化は「持続可能な暮らし」や「ローカルな知恵」を考える手がかりになります。スクロールし続ける画面から一度顔を上げて、自分なりの「一杯の儀式」をどこに持てるのかを問い直してみる——そんなきっかけを、中国の古茶樹の森が静かに投げかけているようにも感じられます。
Reference(s):
cgtn.com








