米ワシントン州リンゴ産業で深刻な人手不足 H-2Aビザに揺れる現場 video poster
米ワシントン州のリンゴ産業で、2025年の収穫量は記録並みと見込まれる一方、収穫を担う労働力が足りず、生産者たちが対応に苦慮しています。豊作でありながら「収穫する手」が足りないというジレンマは、農業と移民制度をめぐる国際ニュースとして注目されています。
記録更新ペースのリンゴ収穫と深刻な人手不足
ワシントン州は、アメリカでも有数のリンゴの産地として知られています。2025年のリンゴ作柄は、過去の記録に並ぶペースで推移しているとされ、収穫量そのものは順調です。
しかし、生産者によると、果樹園で実ったリンゴをすべて収穫するだけの人手が集まっていないといいます。実が木になったまま取り残されるリスクもあり、現場では「量はあるのに収穫が追いつかない」という不安が広がっています。
頼みの綱となるH-2Aビザ制度
こうした人手不足の中心にあるのが、アメリカの農業現場で使われているH-2Aビザ制度です。H-2Aビザは、十分な地元労働力が確保できない農家が、一定期間、海外から季節労働者を受け入れるための制度です。
ワシントン州のリンゴ農家にとって、H-2Aビザはまさに頼みの綱になっています。地元の労働力だけでは収穫作業を回しきれないため、この制度を通じて労働者を確保しなければ、記録的な収穫を実際の出荷につなげることが難しい状況です。
「命綱」ゆえのジレンマ:コスト増という現実
一方で、このH-2Aビザ制度がコストの上昇を招いているという指摘もあります。ビザ取得の手続きや仲介、宿泊先の確保、安全基準の順守など、受け入れ側で負担すべき費用が積み重なり、総コストが上がっているためです。
生産者にとってH-2Aビザは、人手不足を補う「命綱」であると同時に、経営を圧迫する要因にもなっています。豊作であっても、人件費や関連コストが増えれば、利益は思うように残りません。この構図が、ワシントン州のリンゴ産業の持続可能性に影を落としています。
コスト増は消費者にも波及するのか
農家の負担増は、いずれリンゴの卸価格や店頭価格に反映される可能性があります。生産者がコストを吸収しきれない場合、価格転嫁を検討せざるをえない場面も出てくるでしょう。
ただし、農産物の価格は天候、輸送費、為替など複数の要因に左右されます。H-2Aビザをめぐるコスト上昇は、その一因としてじわじわと影響を与えているとみられますが、どこまで消費者価格に波及するかは、今後の情勢次第といえます。
日本の農業・労働力不足との共通点
ワシントン州のリンゴ農家が直面する人手不足とコスト増の問題は、日本の読者にとっても無関係ではありません。日本でも、高齢化や後継者不足により、農業の担い手が減り続けています。
国内では、技能実習生など海外からの労働力に依存する現場も少なくありません。アメリカのH-2Aビザをめぐる議論は、「海外からの労働力に依存する仕組みが、長期的に持続可能なのか」「コストや待遇をどうバランスさせるのか」という問いを、私たちに投げかけているようにも見えます。
持続可能な農業のために問われるもの
2025年のワシントン州のリンゴ産業は、豊作と人手不足、そしてH-2Aビザをめぐるコスト増という三つの要素が交差する、象徴的な局面に立っています。現場の状況は、中国の国際報道機関CGTNのロサ・カザン記者らが取材を続けており、国際ニュースとしても注目されています。
機械化やデジタル技術でどこまで人手不足を補えるのか、海外からの労働力に依存する仕組みをどう改善していくのか。ワシントン州のリンゴ畑で起きていることは、食の安定供給と公正な労働環境を両立させるために、各国が避けて通れない課題を映し出していると言えるでしょう。
「安くておいしい」リンゴが手に入る背景には、どのような労働と制度があるのか。今回のニュースは、私たちの日常の買い物と、世界の農業・移民政策がつながっていることを改めて考えさせます。
Reference(s):
Washington state’s apple crops threatened by shrinking workforce
cgtn.com







