食品廃棄物から生分解性プラスチック オーストラリア発の新包装材
オーストラリアの研究チームが、食品廃棄物に含まれる糖から生分解性の天然プラスチックフィルムを作り出しました。石油由来の使い捨てプラスチックに代わる新しい包装材として、国際ニュースでも注目されています。
食品廃棄物が「天然プラスチック」に変わる
今回の研究を主導したのは、オーストラリアのモナシュ大学のチームです。研究者たちは、食品廃棄物から取り出した糖を原料に、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と呼ばれる生分解性プラスチックを作り、その薄いフィルム化に成功しました。
このPHAフィルムは、使用後に堆肥化(コンポスト化)できることから、食品包装や農業用途など、日常生活で使われる包装材の代替として期待されています。
土壌細菌がつくる超薄型フィルム
研究チームは、土壌に生息する二つの細菌 Cupriavidus necator と Pseudomonas putida に、糖と塩類、栄養素、微量元素をバランスよく含む「エサ」を与えました。細菌は細胞内にプラスチック成分を蓄え、その内部にPHAがつくられます。
その後、細胞からプラスチックを取り出し、厚さ約20マイクロメートルの超薄型フィルムとして成形。伸びやすさ、強度、溶ける温度などを詳しく検証したところ、従来の石油由来プラスチックに近い性質を持たせられることが分かりました。
細菌やブレンドを変えて「性質を調整」
今回の研究のポイントは、使う細菌の種類や、そのプラスチックをどう組み合わせるかで、フィルムの性質をかなり細かく調整できる点です。
- 柔らかくよく伸びるフィルム
- 破れにくく強いフィルム
- 特定の温度で溶けやすいフィルム
こうした違いを、細菌の選択やポリマーのブレンドによって作り分けられるため、用途ごとに最適なバイオプラスチックを設計する枠組みが示されたといえます。
年間4億トン超のプラスチックとどう向き合うか
世界のプラスチック生産量は、現在、年間4億トンを超え、その多くが一度きりの使い捨てです。ストローやレジ袋だけでなく、食品トレーやラップ、宅配の緩衝材など、包装関連のプラスチックが大きな割合を占めます。
今回の研究は、こうした使い捨てプラスチック問題に対し、食品廃棄物という「すでに捨てられている資源」を活用しながら、新たな生分解性素材を生み出すアプローチを提示した点で意義があります。
期待される用途は包装材から医療まで
研究チームは、今回のPHAフィルムが、温度に敏感な包装や医療用途にも応用できるとみています。
- 食品包装用の薄いフィルム
- 農業用のマルチフィルムやカバー
- 医療用のフィルムやコーティング材
特に、食品や農業で使ったあとのフィルムを、そのまま食品残さや農業廃棄物と一緒に堆肥化できれば、廃棄の手間と環境負荷を同時に減らすことができます。
産業界との連携とこれからの課題
研究者たちは現在、産業界のパートナーと連携し、実際の包装材や医療関連製品としての商業化を目指しています。実用化に向けては、コストや大量生産の体制、既存のリサイクルや廃棄システムとの整合性など、検討すべき課題も少なくありません。
それでも、食品廃棄物を出発点に、細菌の力で生分解性プラスチックを設計するという発想は、資源循環と環境負荷の低減を同時に追求する取り組みとして、今後の議論の土台となりそうです。
日々の買い物で手にする包装材の裏側には、どのような素材が使われているのか。こうした研究をきっかけに、使い捨てプラスチックとの付き合い方をあらためて考えるタイミングが来ているのかもしれません。
Reference(s):
Scientists in Australia create natural plastics for everyday packaging
cgtn.com








