南極でメタン湧出が急増 見過ごされてきた温室効果ガスリスクとは
南極で確認されるメタン湧出が急増し、将来の気候変動を左右しかねない「見過ごされてきた温室効果ガスの源」が注目されています。
南極の海底で広がる「メタン湧出」とは
国際ニュースとしても関心が高まる南極の環境変化の中で、いま焦点になっているのが「メタン湧出」です。メタン湧出とは、海底下にあるメタンなどの物質が海底からしみ出し、水中に溶け込んだり気泡となって水面まで立ち上ったりする現象を指します。
ニュージーランドの研究機関「Earth Sciences New Zealand」の海洋研究者サラ・シーブロック氏によると、こうした湧出域は2012年に偶然ひとつ目が発見されて以来、南極周辺で次々に見つかっているといいます。類似の現象は北極でも確認されており、極域全体での変化が意識されています。
ロス海で40カ所超の新たな湧出地点
最近公表された研究では、南極ロス海の浅い海域で新たに40カ所以上のメタン湧出地点が確認されたと報告されています。これは、南極周辺でのメタン放出のあり方が根本的に変わりつつある可能性を示すものです。
シーブロック氏のチームは、氷の下で遠隔操作探査機(ROV)やダイバーを使い、水深およそ5メートルから240メートルの範囲で海底を調査しました。すでに湧出が知られていたロス島西側のケープ・エバンズでは、以前記録されていた地点に加えて、数十カ所もの新たな湧出が見つかったといいます。
CO2の約80倍の強さ メタンが持つ気候インパクト
メタンは、温室効果ガスとして二酸化炭素(CO2)よりも短期間で強い影響を持つことで知られています。Earth Sciences New Zealandの説明によると、メタンは約20年という時間軸で見ると、同じ量のCO2に比べておよそ80倍の熱を閉じ込めるとされています。
研究チームは、南極のメタン湧出が世界の他地域の湧出システムと同じような振る舞いを示す場合、大気へのメタンの急速な移行が起こる可能性があると指摘しています。現在の将来気候シナリオには織り込まれていない「追加のメタン源」が現れることになれば、地球温暖化の見通しに影響を与えるおそれがあります。
興奮と不安が交錯する現場
今回の論文は、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校やオーストラリアのタスマニア大学との共同研究として、科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
シーブロック氏は、新しい湧出地点を発見するたびに、まずは科学者として大きな興奮を覚える一方で、その興奮はすぐに「これは何を意味するのか」という不安と懸念に置き換わると語っています。南極の浅い沿岸環境は「今年から来年へと、目に見える速さで変化している」とも述べ、数年先の姿を想像せざるをえない状況だといいます。
急速に変わる南極沿岸とこれからの課題
研究グループは今シーズンも南極に戻り、さらなる湧出地点の調査を行う計画です。一方で、海氷の融解が進み、ケープ・エバンズを含む一部の海域には近づけなくなっているとも報告されています。
南極で起きているメタン湧出の急増は、まだ多くが解明されていない現象です。ただ、温室効果ガスとしてのメタンの強さと、将来シナリオに十分反映されてこなかった「潜在的な排出源」であることを考えると、今後の国際的な気候変動議論の中で、より重要なテーマになっていくとみられます。
南極という遠い場所で進む変化が、地球全体の気候システムにどう影響するのか。今回の研究は、その問いに向き合う必要性を静かに突きつけています。
Reference(s):
Rapid increase of Antarctic methane seeps raises climate concerns
cgtn.com








