スンダルバンスでマングローブ再生加速 異常気象と侵食に「自然の防波堤」
異常気象が続くなか、インドとバングラデシュにまたがる世界最大級のマングローブ林「スンダルバンス」で、浸食と森林減少に歯止めをかける再生(植林)活動が強まっています。海岸線を守り、生物多様性と地域の暮らしを支える“自然の盾”が、いま改めて注目されています。
ユネスコ世界遺産スンダルバンスで何が起きているのか
スンダルバンスは、インドとバングラデシュにまたがり、面積は1万平方キロメートルを超えるとされます。ロイヤルベンガルトラが約350頭、イリエワニが約220頭生息するとされるなど、希少な野生生物の重要な生息地です。
一方で、近年の極端な気象現象により土壌浸食が加速し、マングローブが損傷するケースが増えていると伝えられています。森林が弱るほど、高潮や暴風の影響を受けやすくなる――そんな悪循環が懸念されています。
1990〜2020年の森林減少が残した傷
保守的な推計では、1990年から2020年にかけて、インド側だけで約138平方キロメートルの森林が失われたとされます。劣化は土壌浸食の深刻化や生息地の喪失につながり、ロイヤルベンガルトラを含む野生生物への圧力も高まっているといいます。
それでも「増えた」面積が示す希望
復元に向けて、政府機関とNGO(非政府組織)が植林(アフォレストレーション)を強化しています。インド政府の最新の数字として、スンダルバンスを含む西ベンガル州のマングローブ被覆は、2013年から2023年の10年間で約22.16平方キロメートル増加したと報じられました。
増加幅は決して万能薬ではありませんが、損失の大きさが語られる地域で「回復が数字として見え始めている」点は、現場のモチベーションにもつながりそうです。
マングローブが“防波堤”になる理由
マングローブは塩分に強い海岸性植物で、海と陸の境界に根を張ります。その働きは多面的です。
- 浸食や嵐から海岸線を守る(根が土壌を固定し、波のエネルギーを弱める)
- 炭素を多く吸収・貯蔵(陸上の森林より最大で5倍の炭素を吸収する可能性があるとされる)
- 海水の浄化や、稚魚のゆりかごとして漁業資源を支える
- 生物多様性の基盤として、多様な生物の生息地になる
環境保護の専門家カラナカール・レディ氏は、マングローブが高潮を吸収し、海岸線を安定させ、生物多様性を支えるとともに、脆弱な条件下で暮らす地域社会を守ると、その不可欠性を強調しています。
「植えることが、暮らしの安心につながる」現場の実感
長年にわたり苗木を植え続け、「マングローブ・マン」として知られるウマシャンカール・マンダル氏は、再生が経済面でも目に見える効果を生んでいるといいます。報道によれば、苗木を植えたことで漁獲が増え、ハチミツ採取も拡大し、島しょ部で暮らす人々の家計の安定に寄与してきたと述べました。
気候対策という大きな言葉よりも先に、日々の収入や食の手応えとして「森の回復」を感じる人がいる。その事実は、復元の継続性にとって重要な要素になりそうです。
2026年2月、1万本の植林ドライブも
2026年2月の今週、スンダルバンスで大規模なマングローブ植林ドライブが始まったと伝えられました。取り組みは「Hara Hai To Bhara Hai(緑があれば豊かになる)」の「#GreenIndiaChallenge」イニシアチブの一環で、元連邦議員のJ・サントシュ・クマール氏が主導し、約1万本の苗木が植えられたといいます。
クマール氏によると、このムーブメントはテランガーナ州で約10年前に始まり、全国へ広がってきました。スンダルバンスでの活動は昨年(2025年)から本格化し、今後数年から数十年のスパンで植林を続ける考えを示したと報じられています。
回復のカギは「植える」だけではない
マングローブの復元は、苗木の本数が成果のすべてではありません。定着率(枯れずに根付く割合)や、植えた場所の地形・潮の流れ、周囲の生態系とのつながりなど、長期的に森として機能するかが問われます。極端な気象現象が増えるほど、復元の設計と維持管理の重要性も増していきます。
それでも、浸食と破壊が進むというニュースの横で、回復を積み上げる動きが同時に走っている。スンダルバンスは今、気候リスクの最前線でありながら、自然を基盤にした適応策(自然の力を生かす対策)の可能性も映し出しています。
Reference(s):
Mangroves restoration offers hope as extreme weather hits Sundarbans
cgtn.com








