武漢の歴史建築で体験する没入型ミステリー 観客が動かす1938年の夜 video poster
1938年、日本による武漢占領下の一夜を、観客自身が歩き回りながら追体験する没入型ミステリーが、武漢の歴史的建物が並ぶエリアBaoyuanliで上演されています。観客は物語の中を自由に移動し、登場人物と会話し、ときには物語の分岐点に介入して結末そのものを変えることができます。
1938年の武漢へタイムスリップする演劇体験
この没入型演劇は、武漢の歴史的建築をそのまま舞台として活用し、1938年のある夜へと観客を連れていきます。観客は客席に座って見守るのではなく、実際に建物の中や路地を歩き回りながら、当時の雰囲気や緊張感に触れていきます。
舞台となるのは、日本による武漢占領期の街並みです。さまざまな背景を持つ登場人物たちが、それぞれの思いを抱えながらその夜を生きており、観客は彼らの後をついていくことで、少しずつ全体のストーリーを理解していきます。
観客が物語を動かす没入型ミステリー
この作品の最大の特徴は、観客が物語に深く関わることができる没入型の仕組みです。観客は気になる登場人物を追いかけて別の部屋に移動したり、会話に加わって質問したりと、単なる見物人ではなく物語の一部として扱われます。
物語の中には、いくつかの重要な分岐点が用意されています。そこで観客がどの人物を助け、どの情報を伝えるかによって、同じ夜であっても展開が変わり、結末も変化します。観客は、追体験するだけでなく、自らの選択が登場人物たちの運命を左右する重みも感じることになります。
歴史とエンターテインメントをつなぐ試み
Baoyuanliの没入型ミステリーは、歴史をテーマにしながらも、単に過去を再現するだけではありません。参加者が自分の足で歩き、目で見て、登場人物と対話することで、教科書や映像では味わえない立体的な時間の感覚を生み出しています。
エンターテインメントとしての面白さと、歴史を考えるきっかけという二つの要素が重なっている点が、この作品の特徴です。1938年という緊迫した時代を背景にしつつも、観客はそれぞれのキャラクターの人間らしい葛藤や選択に触れ、当時の人々の日常や感情に思いを巡らせることができます。
デジタルネイティブ世代が惹かれる理由
2025年の今、世界各地で没入型演劇や体験型ミュージアムが注目を集めています。スマートフォンや動画配信に慣れた世代ほど、「ただ見るだけ」ではなく、自分の行動や選択が物語に影響する体験を求める傾向があります。
Baoyuanliの試みは、そうしたニーズに応える形になっています。観客は、どのキャラクターを追いかけるか、どの場面に居合わせるかをその場で選び取ります。全員が同じストーリーを共有するのではなく、各自が異なる断片を見聞きするため、観劇後に「自分はこんな場面を見た」「こちらのルートでは結末が違った」と語り合う楽しさも生まれます。
日本の読者にとっての意味
日本にいる読者にとっても、この武漢の没入型ミステリーは、いくつかの点で考えさせられる事例です。一つは、歴史的に重いテーマをエンターテインメントとどう結びつけるかという問いです。もう一つは、観客参加型の物語づくりが、日中を含む東アジアの文化交流にどのような可能性を開くかという視点です。
単に「戦争を描いた作品」として距離を置くのではなく、1938年の武漢で人々が何を感じ、どう選択したのかを、多層的な視点でとらえるきっかけにもなり得ます。物語の結末を変えられるという設定は、観客に対して「自分ならどうするか」という静かな問いを投げかけています。
物語を通じて歴史と向き合う新しい形
Baoyuanliの没入型ミステリーは、歴史を暗記する対象から、自分自身の感情や想像力を通して向き合う対象へと変えていく試みだと言えます。武漢の歴史的建物の中で繰り広げられる1938年の夜の物語は、観客にとって、過去と現在をつなぐ体験となっています。
国や世代を超えて、歴史をどう語り継ぎ、どう共有していくのか。武漢のBaoyuanliで行われているこの没入型ミステリーは、その一つの答えを示しているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








