若者の旅行トレンド「寝そべり旅」とリバーストラベルが広がる理由
混雑した観光地や分刻みのツアーから距離を置き、あえて「何もしない」ことを楽しむ若者の旅行スタイルが、中国を中心に静かに広がっています。予定を最小限に抑え、快適さと本物の体験を重視する「リバーストラベル」「寝そべり旅」が、2025年の旅行トレンドの一つになりつつあります。
予定を詰め込まない「リバーストラベル」とは
従来の旅行では、人気観光地を効率よく回るために綿密なスケジュールを組むことが一般的でした。しかし今、若い世代の間で広がっているのは、その逆の発想です。
このスタイルは「リバーストラベル」あるいは「寝そべり旅」と呼ばれています。事前の計画は交通手段と宿泊先程度にとどめ、あとは現地の気分やコンディションに合わせてゆったり過ごす。観光スポット巡りより、自分のペースでくつろぐ時間を重視するのが特徴です。
「何かを詰め込む」旅行から、「あえて余白を残す」旅行へ。若者たちは旅の目的を、消費やチェックリストから、心身のリセットと等身大の体験へと移しつつあります。
南京の若手社会人・Ma Yilinさんの3日間
南京出身の若手社会人、Ma Yilinさんは、最近、福州へ3日間の旅行に出かけました。事前に決めていたのは航空券とホテルの予約だけ。細かな観光プランは一切立てなかったといいます。
今回の旅の目的は「とにかく休むこと」。人であふれるトレンドスポットや行列のできる店をあえて避け、静かなホテルを拠点に、地元の味や落ち着いた雰囲気をゆっくり味わいました。
Maさんの体験は、休暇の本来の意味を取り戻したいと考える多くの若者の気持ちと重なっています。「せっかくの休みなのに、旅行から帰ってむしろ疲れている」という状況から抜け出し、自分のための時間と空間を取り戻そうとする動きです。
学生と都市部プロフェッショナルの「人生サンプラー」的な旅
同じような傾向は、大学生や都市部のプロフェッショナルにも広がっています。彼らの多くは、直前に思い立って旅に出る「弾丸だけれど、ゆるい」スタイルを選ぶようになっています。
彼らは旅を「人生のサンプラー」と捉えています。いろいろな土地の空気を少しずつ試しながら、その瞬間をただ楽しむことが目的で、「何かを成し遂げる」必要はありません。
こうした即興的な旅は、観光地を「制覇」するのではなく、その土地の生活リズムや文化に触れながら、静かに自分自身と向き合う時間を生み出しています。
データが示す「人気観光地離れ」
この旅行トレンドを裏付けるように、中国観光研究院と旅行プラットフォーム・Mafengwoが共同で発表した最近のデータでは、いわゆる「非人気」目的地への旅行が大きく増加していると報告されています。
報告によると、文化遺産や自然に恵まれた下位都市や県級エリアが、若い旅行者を中心に人気を集めています。これらの地域は、
- コストパフォーマンスが高い
- 人混みが比較的少ない
- 地域独自の文化や暮らしに触れやすい
といった理由から、「静かにリフレッシュできる場所」として選ばれているようです。知名度の高い観光都市の喧騒から離れ、ゆったり過ごせる環境が、今の若い世代のニーズと合致しているといえます。
ブロガーが語る、予定外だからこその名場面
旅行ブロガーやコンテンツクリエイターたちも、この流れから多くのインスピレーションを得ています。
あるブロガーは、貴州で迎えた早朝の体験をこう振り返ります。雲海の向こうからゆっくりと太陽が昇る中、その場で出会った仲間たちとの静かな一体感と、言葉少なな共感の時間が忘れられないといいます。
別のクリエイターは、東北地方への即興の旅を紹介しました。予想外の降雪が、何気ない移動時間を一変させ、真っ白な景色の中で自然と向き合う、深く個人的なひとときになったといいます。
どちらのエピソードも、綿密な計画よりも、その場での偶然や出会いが旅のハイライトになるという「寝そべり旅」の特徴をよく表しています。
なぜ今、「何もしない旅」が求められるのか
このトレンドの背景には、仕事や学業に追われる若い世代の「休み方」をめぐる価値観の変化があります。SNS映えするスポットを効率よく巡ることよりも、心と体を休めることや、自分らしいペースで過ごすことが重視されつつあります。
「寝そべり」の発想と重なるように、無理をしない、頑張り過ぎないというライフスタイルが、旅行のスタイルにも反映されているとも言えます。過密スケジュールをやめ、あえて「空白の時間」をつくることで、旅そのものがより個人的で意味のある体験になっているのです。
これから旅をする人へのヒント
では、次の休みに自分も少し「リバーストラベル」を取り入れてみたいと思ったら、どんな工夫ができるでしょうか。
- 行き先はあえて知名度の高くない都市や小さな町、農村も候補に入れてみる
- 事前に決めるのは、交通手段と宿泊先など最低限にとどめる
- 1日に「必ずやること」は1〜2個だけに絞り、残りの時間は自由に使う
- SNSのための写真より、自分の記憶に残る瞬間を大切にする
こうした小さな工夫だけでも、旅の印象は大きく変わります。予定を詰め込まず、気持ちの赴くままに歩いてみることで、ガイドブックには載っていない風景や、人との対話に出会えるかもしれません。
「休むための旅」が当たり前になる未来
若い旅行者たちが選び始めた「寝そべり旅」は、旅行とは本来何のための時間なのかという問いを、社会全体に投げかけています。
観光地をどれだけ回ったかではなく、どれだけよく休めたか、どれだけ自分や周りの人と向き合えたか——。そんな新しい物差しが、これからの休暇のスタンダードになっていくのかもしれません。
混雑した観光地や過剰な情報から一歩距離を置き、「何もしない」ことを選ぶ旅。その静かな選択が、2025年の旅行トレンドを通じて、私たちの生き方そのものにも穏やかな変化をもたらしつつあります。
Reference(s):
Ease and Comfort Define a New Era of Vacation Trends Among Young Travelers
cctv.com








