中国春旅2025:「高鉄+」が清明節のフラワーツーリズムを加速
2025年春、清明節連休を前に中国各地で春の旅行需要が一気に高まりました。なかでも、高速鉄道を軸にした移動と花見を組み合わせた「高鉄+」スタイルが存在感を増し、中国の観光と消費の姿を映し出しました。
清明節連休前に高まった春の旅行需要
中国のオンライン旅行プラットフォーム各社のデータによると、2025年の清明節(4月上旬)を前に、旅行意欲が大きく伸びました。とくに人気が高かったのは、マイカーでの自家用車旅行と、航空券やホテルを自分で手配するフリー&イージー(個人手配型)の旅です。
同時に、2〜3時間で移動できる高速鉄道の「移動圏」が急速に広がり、清明節前後の予約は大きく伸びました。これにより、週末や短い連休でも、気軽に遠方まで足を延ばせる環境が整いつつあることがうかがえます。
好天が後押しした春の行楽ムード
4月1日に行われた中国気象局の記者会見では、国家気候センターの黄卓・副主任が、今後1週間は全国の多くの地域で旅行に適した天候が続くとの見通しを示しました。雲南、広西、広東、福建、江西、湖北、湖南などでは、体感的な快適度が最も高いレベルとなり、屋外レジャーやキャンプに最適とされています。
一方で、日中は紫外線が強くなるため、帽子や日焼け止めなどの対策を取りつつ、現地の気象情報をこまめにチェックし、無理のないスケジュールを組むよう注意が呼びかけられました。
多様化する旅行スタイル:自家用車か高速鉄道か
観光市場のトレンドを見ると、旅行者のニーズは明確に多様化しています。オンラインプラットフォームの報告では、清明節の休暇中、
- 自家用車でのドライブ旅行
- 個人で手配する自由度の高い旅(フリーインデペンデントトラベル)
が上位を占めました。
自家用車旅行に向けた安全ガイドライン
3月31日には公安部(日本の警察庁に相当)が交通安全ガイドラインを公表し、自家用車旅行の増加を念頭に次の点を呼びかけました。
- 出発前に天候と道路状況を確認し、混雑時間帯を避けたルートを計画する
- 高速道路では車間距離を十分にとり、渋滞時でも路肩や非常用レーンを走行しない
- 事故や車両トラブルが発生した場合は、速やかに安全な場所に退避する
- 無許可の白タクや過積載のバス、資格のない営業車両を利用しない
- 全ての座席でシートベルトを着用し、危険運転を見かけたら通報する
こうした呼びかけは、中国国内で増え続ける自家用車旅行を安全に推進するための基盤づくりとも言えます。
「高鉄+」がつくる2〜3時間の新しい旅
春の旅行で存在感を増したもう一つの主役が高速鉄道です。高速鉄道を利用したツアー商品は好調で、特に2〜3時間圏の路線で予約が伸びました。
旅行サイト・途牛旅行網(Tuniu.com)のデータによると、3月21日以降、以下のような主要都市圏を結ぶ路線で予約が急増しました。
- 北京〜天津
- 北京〜石家荘
- 鄭州〜開封
- 北京〜大同
- 済南〜北京
- 西安〜漢中
- 北京〜青島
- 成都〜自貢
- 南京〜北京
- 鄭州〜北京
こうした路線では、「高鉄+民宿」「高鉄+レンタカー」「高鉄+自家用車」「高鉄+現地集合ツアー」といった組み合わせが広がり、移動と現地体験を柔軟に組み合わせるスタイルが定着しつつあります。
高速鉄道で移動し、現地ではレンタカーやカーシェア、自家用車で周辺の農村や景勝地を巡る──。その結果、都市から地方へと観光客の流れがスムーズにつながり、滞在の選択肢も増えています。
春の主役は「花」:32本の農村フラワールート
2025年春の観光テーマの中でも、最も目を引いたのが花見観光です。文化観光部は「花期の邂逅」シリーズとして、各地の開花スポットを結ぶ32本の農村ルートを打ち出しました。
具体的には、次のような特色ルートが紹介されました。
- 北京・順義の「花をたどる旅」
- 四川・広元の「蜀道に沿う春」
- 河北・邯鄲の「燕趙の花のリズム」
- 安徽・滁州の「亭城に酔う春」
これらのルートは、菜の花や桃の花、桜、ツツジなど、地域ごとに異なる花の見頃をつなぎ合わせることで、春の間じゅう多様なルートを楽しめる構成になっています。
広がる「花見+」の複合商品
需要の高まりを受けて、オンライン旅行プラットフォーム各社は花をテーマにしたツアー商品を相次ぎ投入しました。3月以降、「花見+温泉」「花見+グルメ」「花見+キャンプ」など、複合型の「花見+」商品は前年比で大幅な予約増となりました。
美団旅行(Meituan Travel)の担当者は、春の花見経済は文化・観光に他業種が加わる「シーン革命」だと指摘しています。専門家も、こうした「花経済」は文化と観光の深い融合を示すものであり、
- 宿泊業
- 飲食業
- 交通・レンタカー
- 無形文化財(伝統芸能や工芸など)の公演・展示
といった分野との協力を促し、「花が観光を動かし、観光が生産を後押しする」好循環を生み出していると見ています。
清明節期間の出入境も活発に
国内旅行の活況と並行して、清明節の連休期間には海外旅行を選ぶ人も増えました。国家移民管理局は、2025年の清明節連休中、全国の出入境者数が1日平均210万人に達し、前年同期比21.4%増になると予測しました。
主要な国際空港では、1日あたりの出入境者数として次のような数字が見込まれました。
- 北京首都国際空港:3万9,000人
- 上海浦東国際空港:8万1,000人
- 広州白雲国際空港:4万8,000人
- 杭州蕭山国際空港:1万2,000人
- 成都天府国際空港:1万6,000人
香港・マカオに隣接する陸路の出入境ポイントでも、人の流れは急増すると見込まれました。
- 珠海・拱北口岸:36万7,000人
- 港珠澳大橋:12万3,000人
- 青茂口岸:11万4,000人
- 横琴口岸:9万5,000人
- 深セン・羅湖口岸:24万9,000人
- 福田口岸:22万8,000人
- 深圳湾口岸:16万人
- 蓮塘口岸:11万2,000人
- 広深港高速鉄道・西九龍駅:10万5,000人
これらの数字からは、中国本土と香港・マカオを結ぶ人の往来が、コロナ禍後も着実に回復し、清明節のような短期連休でも活発であることが読み取れます。
観光当局が呼びかけた「安全・安心の旅」
急速に回復する旅行需要に対し、文化観光部は清明節シーズンを前に、安全で秩序ある旅行を呼びかけました。そのポイントは、他の連休や日本からの旅行にも応用できる内容です。
- 旅行日程を事前にしっかり計画し、資格を持つ正規の旅行会社を選ぶ
- 安全対策が整っていない未開発エリアには安易に立ち入らない
- 観光地や公共文化施設、遺跡などでは防火規定を守り、緊急時にはスタッフの指示に従う
- 自家用車旅行では出発前の車両点検を徹底し、スピードの出し過ぎや過労運転、飲酒運転をしない
- 観光船やクルーズでは必ず救命胴衣を着用し、必要な安全装備がない船には乗らない
- 極端に安い「激安ツアー」に安易に飛びつかず、内容と価格を冷静に見極める
これらは中国国内向けの注意喚起ですが、海外旅行者にとっても普遍的な安全のチェックリストと言えます。
中国の春旅が映すこれからの観光像
2025年の清明節前後の動きからは、いくつかの大きな流れが見えてきます。第一に、高速鉄道網の整備とオンライン予約プラットフォームの普及によって、「2〜3時間圏」が新たな日帰り・1泊2日旅行の単位として定着しつつあることです。
第二に、花見をはじめとする季節の自然体験が、農村観光や無形文化財の発信と組み合わさり、地方の経済と結びついた新しい「花経済」を形づくり始めていることです。
第三に、国内旅行と海外旅行の双方で人の流れが戻りつつあり、中国本土と香港・マカオを結ぶクロスボーダーの移動も活発化している点です。
日本の読者にとって、こうした中国の春の旅行動向は、東アジアの観光市場やインフラ、地域経済を考えるうえで重要な国際ニュースでもあります。今後、清明節や春節など中国の連休シーズンにあわせて旅行を検討する際には、「高鉄+」や「花見+」といったキーワードが、旅のヒントになるかもしれません。
Reference(s):
April’s Floral Splendor: ‘High‑Speed Rail+’ Enriches Spring Travel Experiences
cctv.com








