中国・山西省の夜間観光 千年の木造塔が照らす夏の古建築 video poster
中国北部の山西省で、古い建築物を夜まで公開する「ナイトツアー」がこの夏(2025年)に広がりました。中国でも有数の古建築の集積地である山西省が、夜間観光を通じて文化遺産をより身近な体験として見せようとしている動きです。
山西省はなぜ「古建築の宝庫」と呼ばれるのか
山西省は、古代からの建築が多く残る地域として知られ、400を超える歴史的建造物があるとされています。この数は中国国内でも突出して多く、「古建築の宝庫」と呼ばれるゆえんです。
石造や木造の寺院、塔、伝統的な街並みなど、多様な建築が今も各地に点在しています。これまでは日中に巡るのが一般的でしたが、2025年の夏はそこに「夜の楽しみ方」が加わりました。
2025年夏、広がる「夜の遺産ツアー」
この夏、山西省内の多くの文化遺産・観光地が、閉館時間を遅らせて夜間も開放しました。日が沈んだあと、ライトアップされた古建築をゆっくり眺められるようにし、訪れる人に新しい夜間観光の体験を提供したのです。
日中の強い日差しや暑さを避けながら、歴史的な建物を落ち着いて楽しめることは、観光客にとっても大きな魅力です。同時に、夜の街歩きや写真撮影との相性もよく、SNSで共有したくなるような風景が生まれます。
朔州市のYingxian Wooden Pagoda、夜10時まで特別開放
なかでも注目を集めたのが、山西省朔州市にある「Yingxian Wooden Pagoda」です。英語名のとおり木造の塔で、千年以上の歴史を持つ建築の驚異として知られています。
このYingxian Wooden Pagodaは、今夏は夜10時まで開放され、昼間とは異なる表情を見せました。ライトに浮かび上がる木造の塔のシルエットは、長い時間を経てきた建物ならではの存在感を放ちます。
夜空の下で楽しむ民俗芸能
Yingxian Wooden Pagodaの夜間開放では、民俗芸能のパフォーマンスも行われました。訪れた人は、塔を背景にした伝統舞踊や音楽などを間近で楽しむことができ、建築を見るだけでなく、その土地に根付いてきた文化を「体験」として味わえる場になっています。
夜風に吹かれながら、千年の木造建築と伝統芸能が同じ空間に重なる光景は、観光客にとって忘れがたい記憶となりそうです。
山西省の夜間観光がもたらす3つのポイント
山西省の夜間観光には、次のようなポイントがあります。
- 1. 暑さを避けて、ゆっくり観光できる
夏の日中の暑さを避け、比較的涼しい時間帯に古建築を巡ることができます。体力的な負担が減ることで、高齢の人や子ども連れも参加しやすくなります。 - 2. 夜のライトアップで、建物の新しい表情が見える
ライトアップされた建物は、日中とは違う陰影や質感が強調されます。塔や寺院の輪郭が夜空に浮かび上がる様子は、写真や動画との相性も抜群です。 - 3. 伝統文化を「鑑賞」から「参加」へ
民俗芸能の上演などを組み合わせることで、観光は単なる見学にとどまらず、音や動き、空気感も含めた総合的な体験になります。文化をより身近に感じられるきっかけになります。
文化財保護と観光をどう両立させるか
夜間開放は、観光の選択肢を増やし、文化遺産への関心を高めるきっかけになります。一方で、貴重な古建築を長時間公開することは、建物への負荷や混雑といった課題とも隣り合わせです。
照明の当て方や観覧ルート、入場者数の調整など、文化財を守りながら夜間観光を続けていくための工夫が今後も重要になっていきます。夜の時間帯も含めて人々に愛されることで、長期的な保存への理解や協力が広がる可能性もあります。
日本の読者にとっての示唆
山西省の取り組みは、日本やアジアのほかの地域で進む夜間観光の流れとも響き合うものです。歴史的建造物を「見る場所」から、「時間を過ごす場所」へと変えていく発想は、観光の質を高めるヒントにもなります。
旅行先を選ぶとき、「夜にどう過ごせるか」という視点を持つ人も増えています。山西省のように、古い建物と伝統芸能を組み合わせた夜のプログラムは、今後の観光づくりを考えるうえで参考になる動きだと言えるでしょう。
2025年の夏、古建築の宝庫・山西省で行われたナイトツアーは、歴史ある建物を現代の観光の中でどう生かしていくかという問いに、一つの具体的な答えを示したと言えます。千年の木造塔が夜空に浮かび上がる光景は、文化遺産と暮らしをつなぐ新しいかたちとして、今後も注目を集めそうです。
Reference(s):
Night tours at ancient sites light up Shanxi's summer season
cgtn.com








