エコツーリズムが変えるXizang・ニェンチェンタングラ山脈の秘境 video poster
中国のシーザン(Xizang)に広がるニェンチェンタングラ山脈の秘境で、エコツーリズムが地域を静かに変えつつあります。かつてはたどり着くのが難しかった谷や湖が、自然保護と住民の暮らしを両立させる新しい観光地として注目されています。
2025年現在、世界各地でサステナブルな旅への関心が高まるなか、この動きは国際ニュースとしても見ておきたい変化です。
かつて遠かった谷と湖が、いまは「守りながら訪れる場所」に
シーザンのニェンチェンタングラ山脈一帯には、以前は隔絶されていた谷や湖が点在していました。しかし現在は、インフラの整備が進んだことで、そうした地域へのアクセスが大きく改善しています。
サクプー・スノーマウンテンやスリーカラー・レイク(Three-Color Lake)といった絶景スポットにも訪れやすくなり、雄大な雪山や色彩豊かな湖を目当てに、多くの旅行者が足を運ぶようになっています。
特徴的なのは、観光開発と同時に、自然保護と地域コミュニティの繁栄を両立させることが重視されている点です。単に観光客を増やすのではなく、環境への負荷を抑えながら、地元の人々の収入にもつながるエコツーリズムとして整備が進められています。
広大な草原、星空、伝統舞踊を体感するエコツアー
ニェンチェンタングラ山脈周辺で提供されている体験は、派手なアトラクションではなく、自然そのものと文化に寄り添う内容が中心です。
- 広大な草原を馬で駆ける乗馬体験
- 夜にはラグジュアリーなテントに滞在し、人工の光が少ない環境で満天の星空を眺めるひととき
- 夜明けには、中国の国家級無形文化遺産に登録されている伝統舞踊「Dabu Ashey」の公演を鑑賞
とくに「Dabu Ashey」は、音楽と踊りを通じて地域の歴史や精神性を伝える舞踊で、冷たい朝の空気とともに体験することで、旅の記憶に強く刻まれるとされています。こうした無形文化遺産を観光の場で紹介することは、地域のアイデンティティを共有し、次世代へ受け継いでいく手がかりにもなります。
エコツーリズムがもたらす二つの効果
シーザンのケースは、エコツーリズムが目指す「二つの効果」を分かりやすく示しています。
1. 自然環境を守る仕組みづくり
アクセスが良くなれば、観光客の増加によって環境が損なわれるリスクも高まります。そこで重要になるのが、滞在エリアを限定したり、ゴミの持ち帰りや動植物保護のルールを徹底したりする仕組みです。
自然そのものを観光資源とするエコツーリズムでは、環境を守ることがそのまま地域の将来の収入源を守ることにつながります。保全と経済が対立するのではなく、互いを支え合う関係として設計されている点がポイントです。
2. 地域コミュニティに利益を還元する
もう一つの軸は、観光による収入が地域の人々にきちんと還元されることです。乗馬ガイド、テントの運営、伝統舞踊の出演者など、観光に関わる仕事を地元の人々が担うことで、雇用や収入が生まれます。
外部の企業だけが利益を得るのではなく、地域の人々が主役となって観光をつくっていくことが、持続可能なエコツーリズムの前提だといえます。
旅する私たちにできる、小さなアクション
こうした取り組みを生かすかどうかは、訪れる側の姿勢にも左右されます。エコツーリズムの現地を訪れるとき、私たちが意識できることは少なくありません。
- 決められたルートやエリアのルールを守る
- ゴミを出さない、持ち帰る
- 地元のガイドや宿泊施設など、地域に根ざしたサービスを選ぶ
- 写真撮影の際には、自然や人びとの尊厳を損なわないよう配慮する
一人ひとりの行動は小さく見えますが、訪問者が増えるほど、その積み重ねは大きな差になります。
シーザンから考える、これからの観光のかたち
シーザン・ニェンチェンタングラ山脈のエコツーリズムは、遠く離れた山岳地帯の話であると同時に、これからの観光の姿を考えるヒントでもあります。
雄大な自然と、そこに根付く文化。その両方を大切にしながら「訪れる人の喜び」と「暮らす人の豊かさ」をどう両立させるかは、日本を含む多くの国と地域に共通する課題です。
旅先を選ぶとき、そして旅先で過ごすときに、「この場所の自然とコミュニティは、これからも守られていくだろうか」と一度立ち止まって考えてみる。シーザンの山々と湖で進む変化は、そんな問いを私たちに静かに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








